第13話 暗中模索
次話投稿が遅くなっちゃいました。
リアも忙しく、フル活動しています。
頑張ります、読んでいただいた方有難うございます。
今日は、俺の誕生会をすると朝から、はなさん、かおりが張りきっている
俺の誕生会をするって、照れくさいのと、2人が何か一生懸命している
事が気になって、少し覗いてみたりとか、うろうろしていたら、かおりに
ワイン買って来てって、頼まれた。夕方の6時には帰って来てねと
ワインは買わなくっても、地下のセラーにあるんだが
まぁ6時まで帰って来るなと言う事か
「了解!」と軽く言って屋敷を出た。
車を走らせた、屋敷からは暫くは両側に林が続く道を通ると
別荘地帯が続く、シーズンにならなければ此処も人は少ない
普段は、管理人さんが、別荘を見に来る程度だろうか
そこを、抜けると、民家が続く道に出る。賑やかな通りを走ると海岸道りに出た
そこで車を止めて、潮の香りを胸一杯に吸い込んで水平線を見渡した
海は薙ぎで穏やかだ、海岸の先の防波堤には釣り人が数人糸を垂れている。
平和だ、砂浜に腰を下ろして再び水平線に目をやる
太陽はどこまでも、眩しく温かい、砂の上にねっ転がった
帽子を顔の上に乗せ、砂の温もりを背中に感じながらいつしか
潮の香りと波の音と共に心地よい眠りに入りこんだ。
* * * * *
幼児がテーブルでスプーンで食事を取っている
上手くスプーンを使えない様でポロポロ落としている
横でお母さんが、笑顔で上手ねー。と話しかけている
殆ど落としているのだが、褒めて伸ばそうと言うところなのだろう
その前にはお父さんが、笑顔でしっかり食べろよ。と言っている
優しそうな両親なのだが、2人の顔には靄がかかっていて、はっきり顔が見えない
そして、幼児の身体には、透明の巨大なヘビが巻きついていた
「うわあー!!!!」
俺は跳ね起きた、夢だったか、妙にリアルな夢だった。
あの幼児は俺だ。1~2歳ぐらいだろうか。
そして俺は両親の顔はあまり覚えていない、あの写真でしか解らないのだった
俺の心の中にくすぶっていたものが夢に現れたのだろうか
夢なのに、冷や汗をかいていた。
辺りには人気はなく、波の音だけが響いている
傍にあった石ころを拾って、海に投げた。
石は曲線を描き寄せては返す波間にポチャンと落ちたのをただ眺めていた。
ふと水平線を見ると、黒々とした雲が瞬く間にむくむくと大きくなってきている
これは嵐が来そうだと、呟いて俺は車に乗った、走り出すと間もなく
大粒の雨がフロントガラスを容赦なく叩いてくる
途中、ガツンと車に何かが当たった、豪雨の中、外に出てみてみると
少女が倒れていた
「おお??。。おぃ!大丈夫か?しっかりしろ」
俺は慌てた、豪雨で視界が悪かったとはいえ
少女を引いてしまったのか?
気を失っているらしかった、少女を抱いて車に乗せ、
「病院!病院!病院はどこだっけ?それとも警察が先か?」
いや、やっぱ病院が先だろ、救急車を呼ぶより
走った方が早い、人命が優先だ。俺の鼓動は早鐘の様にドクン、ドクンと鳴っていた
びしょ濡れになっている事も解らないくらい必死で祈りながら車を猛スピードで走らせた。
「頼む。死なないでくれ!」
どこをどう走ったか解らない位に気が動転していたが病院に着いた
シーンと静まりかえった病院だった、診察時間は終わっているのだろう
そんなことは気にならなかった。
ただ、この少女を助けてほしかった
青白い顔をした男性の医師が出てきた
「先生、先生!!お願いです!!お願いです!!助けて下さい」
祈り、縋るように懇願した
俺は医師に言われる通り、少女を診察台に乗せ
待合室で頭を抱え、祈る様に、治療が終わるのを待っていた。
そうだ、ご家族の方に連絡をしないと心配されているに違いない
そう思ったが、いま調べる手立てがない、診察が終わるのを待つしかない
待っている時間が途方もなく長く感じられた
暫くして医師が出てきた。
俺は駆け寄って
「先生!どうなんでしょうか?」
入って下さいと、促され俺は診察室に入った
ベッドに寝かされている、少女の顔に布がかぶせられている
ドクン!大きく心臓が波打った。
「!!!!!!」
声も出なかった、死んだのか?
俺は震える手で、布に手を掛けそっと捲った
「!!!!????!!!!」
何と少女の顔は酷く損傷しており、見る影もなく崩れていた
状況が全く把握出来ずに佇んでいた。
うそだ!!うそだ!!うそだ、
俺は、跪きひれ伏しただ、ただ、悔恨と懺悔の中、滂沱と涙を流していた。
やがてふらふらと、立ち上がろうとベッドに手を掛けた時、死んだはずの少女が
突然、俺の手を少女が信じられない力で掴んだ。
「うわ!。。」
尋常ではない状況に恐怖と警鐘が俺の中で鳴り響いていた
やっと俺はこれは妖魔の仕業なのだと判断できた
妖魔は人の心の隙間に入ってくる。弱いところに上手く入りこんで
操る、その策略に落ちてしまった人も多い。
「くそ!」
俺は反射的に電撃を放った。
少女はユラリと空中に浮き、医師は赤い目をぎらつかせながら
何やら薬剤の入った注射器を持って迫ってくる、あの注射器は
何やらヤバイ気がする、
「まて!何故俺を攻撃する」
崩れた顔からは赤い目しか見えない、その少女は
「お前を殺す!」と言った
少女からは、なまめかしい白い手が何本も伸びてきて俺を捕まえようと
タコの様にウネウネと動く少女の触手を、左に翻すと
医師は黒い触手を持った大きなナメクジの様な身体に変化した
ナメクジから緑の液体が俺をめがけて幾つも噴射される
一つが袖に当たった、ジュンという音とともに袖が溶けた、熱い、酸だ!
すかさず、少女の腕が左右と上から俺めがけて飛んでくる
俺は後ろに飛びながらブーツから短刀を抜き、呪文を唱えた刃先1メートルのサーベルになったと
同時に、少女の触手の様な手を2本叩き切った
「ぐわあああああ」
少女の悲鳴が起る。同時にナメクジの酸が無数に飛んできた
横に飛んで回避しようとしたが、避けきれない
咄嗟に式神を表したが、酸で無数に穴が開き溶けてしまった
式神を放った、その一瞬に俺は踏み込み、剣で巨大なナメクジめがけて一刀を入れる
ナメクジの腹にブニョと刺さった、それを力任せに上に切り上げ、ズボッと空に放たれた。
「ぎゃおおおおおおおおおお」
頭から腹に掛けてザックリと半分に割れた、その勢いで
俺の足にも酸が飛沫して焼けただれてしまいガクンと膝が折れてしまった、
診察室は机やベッドが無残に切り壊され、少女の姿は辺りには見えない
注意深く、周囲の殺気を覗う
左後ろに、わずかに空気の揺らめきを感じとった。と同時に風魔術で
煙草の灰を巻き上げ、少女の姿が現れた
すかさず、電撃を放った、少女は
電撃を受け倒れ込みながらも、その長い触手が数本、俺の前に倒れてきた
その際、チクリとわずかな痛みが手に走った。
俺は少女の触手が注射器を持っているのに気ずかなかったのだった
しまった!迂闊だったと思った
速く此処を出ないと、家に帰らないとと
車に飛び乗って、走り出した
あの薬が、どんな症状をもたらすのかは解らないが
速く処置をしないと大変な事になると感じていた
すでに手足が痺れはじめていた
速く家に!このままでは、事故に遭いかねない
俺は脂汗を額に滲ませながら、必死でハンドルを握る
何故、妖魔は俺を襲う?
オブライエンやサラディーンもいるのに何故だ?
誰が指示しているんだ?
混乱する頭を霧が霞むように視界も薄れてきている
帰るんだ!!。。。その一念が強靭な精神力を生む
やがて、猛の車は何かにぶつかり停車した
もうその時は殆ど意識はなかった。
~ ~ ~ ~
気が付いたのは、夜だった。
ベッドで寝かされ解毒を施されたのち点滴を受けていた
横には心配そうな、かおりとはなさん、大和さん、武さん、徹さんもいた
「あぁそうか、今日は俺の誕生会だったので皆集まってくれていたのだったのか
俺がぶち壊したんだね。」苦笑いをしながら言うと
「何があったのか解らないが、猛は屋敷の門に車で突っ込んでいた
おまけに顔は青く、目は白目をむいて、口からは泡を吹いていた
処置が遅れたら死んでいただろう。手には何か噛まれた様で赤黒くはれ上がっていた
レントゲンで調べると触手の様なものが入っていた、手術で取り除いて今詳しく
調べている。あの触手は、恐らく体内で成長してやがては、猛の身体を乗っ取る
妖魔の新種ではないかと思う。
普通の人間なら抽入された時点で直ぐに脳を乗っ取られ変異してしまうだろう
そして永遠に彷徨うことになると。。。。
どうやら、本格的に俺を殺そうとする勢力がいるのだと
はっきり解った。
そうと解れば、打つ手ははっきりする
よし!万全な体制と方法を練り上げよう
猛は、ニッと口の端を吊り上げ笑った。
かおりは猛を見て、ゾクリとした
「本当に大丈夫なの?外見は猛で、中身は妖魔ってこと無いよねー。」
「いや、解らないよ。俺だってフフフフフフ。」
「んーもう、」頬をバチンと叩かれた
「おいおい、俺は病人だよ?」
「しらない!」
他愛無い痴話げんかの後、俺はかおりの胸倉を引っ張ってキスをした。
「んふ?何だか今までの猛じゃないみたい。」
かおりがボソっと呟いた。




