その3
俺たちは、若者をターゲットにした、レジャービルにすべく、ファッションをメインにフロア展開を考えてた。
しかし、都会の企業を、田舎に呼ぶには、相応の対応を求められるわけで、結構、四苦八苦していた。
残業、残業の毎日で、そろそろ疲れが出てきた、そんな夜。
「せんぱ〜い。そろそろ、休みましょうよ〜」
「もう少しだけ、この企画を完成させれば、きっとあそこも出展してくれるはず」
「そんなに根つめてやっても、いいアイディア、浮かびませんよ〜」
「でも、俺はもう、逃げたくないんだ」
会話の流れを止めた、その一言が、先輩らしくなく、何か、とても意味があるように、聞こえた。
「先輩、もうって・・・・・・どうゆう意味ですか?」
「昔の話だ。気にするな。それより続けるぞ」
「先輩。もしよかったら、聞かせてもらえませんか? こないだカラオケ行った時の、続き」
「お前には、関係ない話だろ」
「関係なくない!!」
とっさに俺は、叫んでしまった。
先輩は、驚いたように、目をパチクリさせていた。
「関係なくなんてない・・・・・・先輩と俺は、もうコンビじゃないですか。聞きたいんです。先輩が、何でそんなに、思いつめてるのか・・・・・・先輩、残してくれたじゃないですか。お前といると、元気になるって、あれ読んだとき、俺、スッゲー嬉しくて、うぬぼれかも知れないけど、俺、少しでも、先輩の力に、なれたのかなって・・・・・・それが、スッゲー嬉しくて」
ボロボロに泣いていた。
悔しかったのかもしれない、悲しかったのかもしれない。
俺は結局、先輩の事、何もしらない。
それなのに、打ち解けた気になって、一人で舞い上がってて、もう心の中は、ぐちゃぐちゃだった。
そのとき俺は、ただ泣く事しかできなかった。
「前にも言ったけど、昔俺は、お笑い芸人という夢をあきらめて、ボロボロだったんだ。」
先輩は静かに、懐かしむように、昔の話を始めた。