プロローグ 後半
あれから、何時間たっただろう?
こんなに、自分の事を話すのは、久しぶりだった。
普通なら、ウザいと思うような、身の上話を、広行は、真剣に聞いてくれてる。
「なんか、カラオケって雰囲気じゃ、なくなっちまったな。ごめんな」
そういって、俺は、タバコに火をつける。
「俺は嬉しいっす。なんか少しだけ、先輩の事、わかった気がするっす!」
と、本当に嬉しそうな顔を、しやがるから、困ったもんだ。
「もういいだろ?なんか、空気違うしさ」
と言って、俺が、話を打ち切ろうとすると、
「まだ、最後まで聞いてないっす!!」
と、真剣な顔で、言ってきた。
「こんな話、聞いても面白くねぇだろ。」
「面白いとか、面白くないとかの、問題じゃないっす!」
俺には、こいつの事が、理解できなかった。
なんで、俺なんかの事に、こんなに真剣に、食いつくのか・・・・・・きっと、根っからの、お節介やきなんだな、とか思ったら、少し面白くなって、笑ってしまった。
「なんすか?急に笑い出して、俺なんかついてます?」
広行は窓ガラスで、自分の顔をチェックした。
その姿が、妙に滑稽で、なんか自然に笑ってる自分が、不思議だった。
「もー。なんなんすか!」
子供みたいに怒る姿が、さらに笑いを誘う。
「ごめんごめん。なんか、似てるなって思ってさ」
「誰にっすか?」
「いや、こっちの話」
「ほらまた、そうやって・・・・・・最後まで聞かないと、返さないっすよ!」
こりゃ、本当に返してくれなそうだ。
ため息をつくと、広行の熱意に根負けして、俺は、続きを話す事にした。