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『無色の虹』  作者: 砂糖
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その7

俺達はできる限りの手を尽くした、しかし、現実はそんなにうまくいくはずもなく結局参加校はたったの2校。ビルのオープンも迫ってきていた。俺達は公園でただ途方にくれていた。

「これが私達の限界ですね・・・。」

肩を落とすように美紀ちゃんがぼそりと、他の女の子達もみな肩をおとしていた。

「2校だけでも参加してくれるんだ十分だろう。後は企業スペースを増やすしかないな。」

「先輩まで・・・。まだ時間はあるじゃないですか!ギリギリまでがんばりましょうよ。」

「馬鹿をゆうんじゃねー。これは仕事なんだ。ギリギリまでがんばって、それでオープンまで間に合わなかったら、それこそすべてが駄目になるんだぞ。お前にその責任が取れるのか?」

「それは・・・。でも!!」

「でもじゃない。悔しいけど、これが大人の事情って奴なんだよ。2校は参加できるんだ、彼女達の夢の可能性、それさえも消してしまう権利は俺達にはないんだ。まだ、スタートもしてないんだ。ふさぎこんでてもしょうがないだろ。がんばろうぜ。っな。参加できない学校の子には気の毒だけど皆のおかげで希望の種がまかれるんだ。本当にありがとう。そして力不足でごめんなさい。」

先輩が頭を下げると、美紀ちゃんが立ち上がって、

「そうだよ!沖野さんの言う通り、まだ始まってもいないじゃない。そんな気持ちでお店出してもお客さんは喜ばないよ!っさ、元気だそうよ。」

「でも、美紀は参加できないんでしょ。美紀がんばってたのに私達だけなんて・・・。」

女の子達の中の一人が今にも泣き出しそうな顔でそう言った。

「何、言ってるのよ。みんなが頑張ってくれたら、私の学校を始め他の学校も参加してくれるかもしれないじゃない。まだわかんないんだから、とりあえず、私達の分までいい仕事してね。」

美紀ちゃんがそういって、その子をなだめた。皆一様に納得したようだけど、泣いてる子、謝っている子、気落ちしてる子などを見てると俺の気持ちも沈んでいった。

「お疲れさーん。おや、皆元気ないじゃん。泣いちゃってる子もいるし。」

笹本チーフだった。

「チーフどうしてここへ?」

「お前達いつもここに集まってただろ。それよりさ、どうしちゃったの?」

「どうしちゃったのじゃないですよ!結局、たったの2校しか参加許可もらえなかったからそれで・・・。」

チーフは場違いなほど笑顔で、

「なーんだ、そんなことか。」

「そんなことってなんですか!!」

先輩がチーフの胸倉をつかんだ。

「おい、なんだ。お前らしくないな。あ、いやこれが本来のお前だったな。」

「だからなんだって言うんだ。お前って奴は・・・。彼女達の気持ちがわからないのか!あいつの時だって、お前は。お前はー!」

「おい、沖野はなせよ。あいつの事は今は関係ない。それに彼女達は皆参加できるんだよ。」

先輩は驚いて、手を離した。

「チーフ。それってどういう意味ですか?」

「前田、そのまんまの意味だよ。」

「でも、学校側の許可が・・・。」

「それはもういいんだ。フリーマーケット式にするから。」

「えと、あの・・・。」

「あー。悪い悪い。よくわかんなかったな。前田お前の企画が予想以上にうえにうけてな、それで当初1フロアだったのが2フロアになることになったんだ。それで、レンタルという形をやめて、各自からの寄付金を受け付けてそれで2フロアの維持費にすることになったんだ。」

「寄付金て、そんな誰が。」

「それなら心配要らないわ。」

「お母さん!」

美紀ちゃんが驚いたのも無理はない。そこに現れたのは藤さんなのだから。

「あら、驚かせてごめんね。寄付金の心配は要らないのよヒロ君。父兄の皆、そして、各学校や企業の皆で出すことになったのよ。」

「え、それじゃー。」

「そうよ。美紀あんた達、皆自由に出展していいのよ。」

「おかーさんありがとう!」

美紀ちゃんが大喜びで藤さんに抱きつくと、

「お礼なら笹本君に言いなさい。私はたいして何もしてないもの。」

「藤さんそれはいいよ。」

「駄目よ。あなただって頑張ったんだから。」

「えと、それって、どうゆう?」

俺はまだ理解しきれてなくて、藤さんに聞いた。

「実はねフリーマーケット方式を提案したの笹本君なの。この状況を知った笹本君がお偉いさんや地域の方、そして学校関係者・企業、皆を含めた説明会を開いたのよ。そこで一生懸命説得したわけ。」

「藤さーん。」

「あら、照れなくてもいいじゃない。かっこよかったわよ♪」

「笹本さんありがと〜。」

「チーフやるじゃん。」

俺含め皆、笹本チーフに集まりお礼をしてる中、先輩はただぽつんと立ち止まっていた。

「先輩もほら、」

俺は先輩の背中を叩いた。

「チーフ。さっきはすまない。そして、ありがとう。」

「まだ、昔みたいに笹本って呼んでくれないんだな・・・。」

チーフは悲しそうな顔をした。

「さっきの件は俺が空気読めなかっただけだ、お礼もいい。お前達の頑張りを無駄にしたくなかっただけだし、それにいい企画だったしな。」

チーフはそういってその場を立ち去った。

「さーて。皆。ここからが本番よ。素敵なお店作りしなきゃいけないんだから!あ、そうだ。皆でカラオケ行きましょう!とりあえず今日は騒いで息抜きしなきゃね。」

興奮が冷めない皆は藤さんの提案でカラオケに向かった。先輩は嫌がったがみんながオッキーKYといって、無理やりつれていった。その後、美紀ちゃん含め女の子達は適当な時間までカラオケを楽しむとおのおの帰っていった。藤さんは完全にテンションが上がってしまったらしく、俺と先輩を夜遅くまで居酒屋につき合わすと、娘に怒られるからと言って颯爽と帰っていった。

「せんぱぁ〜い。藤さんって酔うとあんなんになっちゃうんですね〜。」

「あ〜。意外だな。さすがに俺も酔っ払った。」

「せんぱぁ〜い。酒づおいっすねぇ〜。俺なんかもうボロンベロンですよぉ〜。」

「お前は特に飲まされたもんなぁ〜。」

「せんぱぁい、ひどいですよぉ〜。助けてくれると思ったのに〜。」

「アハハ。すまんすまん。俺もヤバイと思ったから、広行に犠牲になってもらったよ。」

「もぉ〜。ずるいっすよ〜。あっ。」

俺は先輩に気になってることを聞いた。

「あいつって誰なんですかぁ〜。」

「へ?」

「とぼけないで下さいよぉ〜。チーフとしゃべってたじゃないですかぁ〜。」

「あ〜。ま、色々とな。しかし、珍しいやつだなぁ〜。俺の事そんなに気になるか?」

「そりゃそうですぉ〜。だって、すきですもん。せんぱいわぁ俺のことどうおもってんですかぁ〜?」

「俺だって、いい仕事仲間だと思ってるぜ。」

「そうじゃなくてぇえ〜。」

「ん?まぁ、好きかって聞かれたら好きだろうな。お前明るいしな。」

「もぉ〜。わかんなひですねぇ〜。そうゆうんじゃなくてぇ。」

「お前だいじょ・・・」

俺は先輩の唇を奪った。

第1章オレンジはここでラストです。2章からついに恋愛パートのスタート。突然のキス、誠一と広行の関係はどう変わるのか?果たして、プロジェクトは無事うまくいくのか!?

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