プロローグ 前半
同性愛を含みますので、気分を害される方、差別的な方はご遠慮ください。
プロローグ 前半
俺は広行に誘われ。居酒屋で飲んでる。
広行は、バイト先である、レジャービルの先輩だ。
いつも元気いっぱいで、何かと、俺に絡んでくる。
「せんぱぁあああい。飲んでまふかぁ?」
どうやら、軽く出来上がってきたらしい。
広行は、先輩の癖に、年下という理由で、俺のこと先輩と呼んでくる。
どうやら体育会らしいが、堅苦しいところは無く、いつも笑っている。
「せんぱぁあああい。こないだのあれ見まひぃた? 俺、あいつらずきなんでづお!!」
さっきから主語が、あれやそれやこれなので、何の話かまったくわからない。
とりあえず「うんうん」と、相槌うっているだけで、満足げである。
何がそんなに楽しいのだろうか?
「あ、せんぱ〜〜い。最近、あれにハマってるんですよぉ。せんぱいも持ってますかぁ?」
あれって何だ? と、思いつつ、めんどくさいので「うんうん」と、相槌うってしまった。
さすがに、まずいと思ったが、
「やっらぁあ。お揃いですねぇ」
どうやら、喜んでもらえたらしいので、OKだろう。
ふと、時計を見ると、終電の時間になったので、
「広行、帰るぞ」
と、床で寝っ転がってる広行を起こした。
どうやら、まだ飲み足りないらしく、渋々とした感じだ。
俺がお会計を済ませると、渋ってる広行を引っ張り、店を出た。
「あっれぇええ。せんぱぁああい。まだ、お金払ってないでふおぉ」
ったく大丈夫か? っと、思いながら、
「あー。俺が、払っといたから心配すんな。それより終電やばい急ぐぞ」
早足で、歩き出した。
後ろから捕まれ広行が、
「いくらですかぁ?」
と、聞いてきた。
ったく、急いでるときに。
「あぁ〜。奢りだからきにすんな。それよ・・・・・・」
ところが、広行がさえぎり、
「だめですよぉ〜。俺が誘ったんでふから、払いますよ」
「いいんだよ、俺が年上なんだから」
「でも、俺のがバイトでは先輩ですからぁ〜」
こんなときに限って・・・・・・。
俺はため息をついて、
「じゃー。今度、奢ってくれ! とりあえず今は急ぐぞ」
と、走り出した。
後ろからゆっくり、広行が着いて来る。
「まってくださ〜い。俺、もう走れないですよぉ〜」
はぁ、なんだってんだ、今日は。
いつもにもまして、めんどくささ倍増に呆れながら、広行にペースに合わせて、駅に向かうことにした。
「マジかよ・・・・・・」
目の前の終電を見届けると、まるで、コメディードラマを見てるかの様だと、割と冷静な心情でいた。
「せんぱぁ〜い。すみませぇん」
泣きそうな顔で謝られると、怒るに怒れず、
「とりあえず、タクシー捕まえるぞ」
と、広行をひっぱった。
タクシー乗り場の、長蛇の列に、うんざりしたが、しぶしぶ最後尾に並ぼうとする。
「これ、2時間以上かかるぞ」
と、言って、ため息をついた。
しばらくたって、
「先輩、明日シフト休みでしたよね。なんか用事あります?」
夜風にあたって、割とすっきりした広行が、聞いてきたので、
「別に何も」
ため息混じりに答えた。
「じゃーじゃー先輩!! カラオケ行きませんか?」
と、俺の腕をひっぱり、強引に列を飛び出した。
「ちょ、まて! せっかくあそこまで、ああああああ!!」
俺が戻ろうとしてるのに、聞く耳持たず、といった感じで、強引に俺を引っ張り出す。
「ふざけるな、もう帰る! 俺はもうクタクタだ!! 第一俺はカラオケが大嫌いだ」
広行の手を振りほどき、戻ろうとすると、広行が泣きそうな顔で、こっちを見る。
「・・・・・・」
「あ”ー!! わかったよ。行く、行くから!! 大人が、こんなところで泣くな」
と、広行の背中をポンポンと叩いた。
「本当ですか? やったああああ!!」
さっきの顔は、なんだ・・・・・・と、思わんばかりの元気で、俺の腕を引っ張り、カラオケ店へ向かった。
部屋に入ると即効、広行が戦隊物の、テーマソングを熱唱し始めた。一瞬、心の奥がズキッとした。
「お前は子供か!」
軽くつっこみを入れて、とりあえずコーラとジントニックを頼んだ。
「先輩ジュースですか?」
間奏中に広行が、ちゃちゃ入れてきたので「お前の」と、一言添えた。
「俺も酒飲む!!」
と、酒を頼もうとしたので、俺は必死に止めた。
また酔われたら大変だ。
広行はいじけたが、歌が始まるとケロッとしてまた熱唱しだした。
「先輩は、歌わないんですか?」
広行が5曲ほど熱唱すると、曲を入れない俺が不思議なのか、聞いてきた。
「ああ。カラオケ苦手だから」
そう言って、空になったグラスを見て、飲み物を頼んだ。
広行は黙って、曲を入れると、マイクを渡してきた。
・・・・・・?
画面を見ると、それは俺がよく聞く歌手の曲だった。
俺が黙って、カラオケの停止ボタンを押すと、広行が怒った顔して、
「何で歌わないんすか!」
と、つっかかってきた。
「だから、俺はカラオケが苦手だって・・・・・・」
そういうと、次は泣きそうな顔して、
「俺ばっか歌っても、楽しくないじゃないっすか」
広行は、切ない顔をした。
「まだ、酔ってんのか? そもそも、お前が来たいってゆうから、俺はついてきた・・・・・・」
続きを言おうとした所で、広行が言葉をさえぎり、
「先輩、いつも笑わないっす。職場でも、一人でいること多いし、俺が何言っても、相槌ばっか
で、居酒屋でだって・・・・・・何がそんなにつまらないんすか? たまには、元気出してもらおうと
思って・・・・・・」
どうやら、広行は気づいてたらしい。
俺が、あえて誰にも関わらない様にしてる事。
いつからか、本気で笑えなくなっている事。
そして、広行の言動に、適当に、相槌うってることに。
気づいてたから、妙に俺に絡んできたり、いつも、笑顔でいたりしてたのだ。
今日は意を決して、俺を誘ってくれたのに。
俺が、楽しそうじゃないから、だから、あんなだったのかと。
初めて、こんなに悲しそうな、広行の顔を見た。
俺は黙って、さっき広行が入れてくれた曲を歌った。
久しぶりのカラオケは、ぎこちなかったが、広行は、ものすごくうれしそうな顔をして、
「先輩!! むっさ、うまいじゃないっすか!」
と、はしゃいだ。
お世辞でも、うれしかった。
それから色々と歌った。
こんなに楽しく歌ったのは、アイツと以来だなと、ふと頭の中に浮かんで、ズキッとした。
そんな時、広行が一緒に歌いましょうと、一曲入れた。
それは、俺が大好きな歌手の、大好きな歌だった。
いやそれは、あいつが、一番好きなだった歌だ。
歌ってるうちに、俺は涙を流していた。
広行に気づかれないように、顔を前に向けた。
涙を拭きながら、声がかれないように、抑えながら歌っても、涙があふれなく出てきた。
ふと、広行が停止ボタンを押した。
「先輩・・・・・・大丈夫ですか?」
心配して、顔を覗いてくる。
「ああ。どうやら、飲みすぎたようだ」
と、言い訳をした。
「大丈夫だ。ごめんな」
涙を拭いて、ケロッとすると、広行は、気を利かせたのか、歌いたかったのか、わからないが、某アイドルの、へんてこな歌を、声真似をして歌った。
俺は、その様子を見て、爆笑した。
「笑えるじゃないっすか。」
広行がニヤニヤして、言ってきた。
俺は真っ赤な顔をして、
「馬鹿やろ! 年上をからかうもんじゃない」
そういって、追加のドリンクを頼んだ。
恥ずかしくて、顔を壁に隠したかっただけだが。
後ろで広行が、
「よし! 今日はとことん歌いますよ」
と、はしゃいでる。
ほんと、恥ずかしいやつめ。
ひとしきり歌って、休憩してるときに、ふと広行が、
「先輩、こんなにノリがいいのに、何で普段ツンケンしてるんですか? あ! 今流行の、ツンデレですか? 男がやっても、モテませんよ〜」
と、冗談交じりに、聞いてきた。
「別に俺は・・・・・・どうしてだろうな?」
ごまかした。
「いつもそうですね。先輩、先輩って、自分の事あんまり喋らないっす。俺のこと、そんなに信用できませんか?」
と、真剣な顔をした。
信用とかの問題じゃないと思ったが、やっぱり今日は、酔いが回ってるのか、昔の話を始めてた。