魔法少女の恋
ぶっとんだ突っ込みどころ満載の読み物です。
宇宙の遥か彼方、人類に発見されていない小さな惑星がある。
ここは惑星スイーツと呼ばれ、星人達はみな全宇宙の治安維持を主とした活動を行っている。そして、今ここに若くして、惑星スイーツ特別兵士養成所を卒業した少女が地球に配属されようとしている。
「甘い村出身、プリン10歳。地球の平和を守るため、命を懸けて戦ってきます!」
小さな体に大きな瞳、その瞳には意思の強さが表れていた。涙を流して見送る家族を残してプリンはいざ、地球へ。
プリンが地球に降り立ったのは、ある雨の日の夜だった。十月も下旬になり少し肌寒い。傘もささずにフラフラとあてもなく歩いていた。
すると、空き地の隅から猫の鳴き声が微かに雨音に混じって聞こえてきた。鳴き声の方を見ると、段ボールの中からずぶ濡れの子猫が顔を出していた。近づこうとすると、プリンよりも早く誰かがその子猫の前にしゃがみ込んだ。
(あ…)
プリンはみとれてしまっていた。
子猫に近づいた青年は、しばらくじっと子猫を見つめて動かなかったが、つぶやくように
「うちにくるといい」
ずぶ濡れの子猫を抱き上げた。ふと、立ち上がった青年と目があった。
「あ…」
青年は笑ってプリンに近づいてきた。
「ここにも、捨て猫発見」
呆然としているプリンを傘にいれ、
「そのままじゃ風邪ひいちゃうよ。よければ、家においで。」
プリンはこくんと頷いた。
「お茶をいれようか」
青年の家はとても大きな西洋風の城で、召し使いがプリンの風呂やら着替えを面倒見てくれた。
その後、小さめの部屋で青年と二人きりになった。
「普段は、召し使いが全部やってくれるものでね」
そう言って、手際の悪い手つきでお茶をいれてくれた。
プリンは無言でお茶に口をつけた。
「僕はね、魔王なんだ。」
しばらくして唐突に青年は切り出した。
プリンは青年をまっすぐに見つめた。
青年は続ける、
「そして、君は地球を守る魔法少女プリンだ」
驚く事にプリンの事を知っていた。
「あ、ごめんね。自己紹介がまだだったね。僕は魔王、アナー・シリだ。君の事はよく知っているよ。配下の者に調べさせたからね」
「…………」
「どうやら君も僕の正体に気付いていたみたいだね」
「…薄々にだけど」
プリンは静かに口を開いた。
二人の間に沈黙の時間が流れた。
その時間はとてつもなく長いような、短い時間だった。
「僕はね、一目見た時から君に恋をしていた…」
(あ…)
プリンは驚き、頬を染めて下をむいた。
「けれど、許されざる恋。本当はここで君を殺すつもりだった。」
アナー・シリは懐から脇差しを取り出しキラリと抜いた。
「けれど、それは次の機会にするよ」
アナー・シリは力無く笑った。
一粒の雫が頬を伝っていた。
プリンは必死で我慢していたが、アナー・シリの笑顔を見て泣き崩れた。
この様子がプリンのアナー・シリへの気持ちを物語っていた。
「次に会うのは戦場で。容赦はしないよ…」
顔を伏せて鳴咽をもらすプリンを一人残して、アナー・シリは部屋をあとにした。
「各国の軍が本格的に、魔王軍の掃討作戦に入りました。」
そう言ったのは、プリン所有の人工知能を持つ小型ロボ。名前をカラメルという。
「とうとう始まったか…」
魔王軍と各国の連合軍は長い間冷戦状態にあったが、ついに戦端が開かれた。 プリン16歳、あの涙の別れから六年が経過していた。
「カラメル、この戦どうなる?」
「二ヶ月程で、連合軍が降伏するでしょう」
「核は?」
「まず、使わないでしょう。使ったとしても、戦局は変わりません。魔王軍には、核無効化シールドがありますから」
「そうか…」
(思ったより、人類も粘りそうだな)
プリンは遠い目で一点を見つめ、思案している。
「プリン様はどうなさるのです?」
人口知能のくせにプリンの次の行動が気になる。
「正直だるいな。様子をみるよ。まぁ、最終的には出張らんといかんのだが」
とは言ったものの、やはりアナーシリとの事がいまだに、心の奥底にこびりついている。
できれば、戦闘は避けたい。
ぷりんは、日に日に激しさを増す魔王軍と各国の連合軍の戦いを見ながら、ただただ時間を無駄に過ごした。




