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 二日おき六時に更新します(予約済み)

 いじめなんていうものは、根本的に不恰好なものです。

 その日は雨が降っていました。湿ったトイレのひんやりとしたタイルの上に、わたしは両手を付いて頭を床にこすり付けた姿勢で這い蹲っていました。目の前には腕組みをした三人の女生徒がいて、楽しそうにわたしの情けない姿を拝み、満足げな表情を見せています。

 しばらくそうしていると、背中を蹴りつけられました。数ある暴力の中でも、丸まった状態で蹴りつけられる背中の傷むこと、わたしはこの半年ほどで知り抜いていました。しかし、殴る、蹴るの暴行はわたしを苦しめる手段として非常に効果的ですが、やる方が大きく疲れてしまうのが難点ですから、そこまで長く続けられる心配はありません。

 しばらく丸めた背中を蹴りつけられ、それでも土下座の態勢を維持していると、頭からちょろちょろとホースで水をまかれました。わたしは突然浴びせられた水の冷たさに、ひっ、と声を出して顔を上げますが、そこにすかさず上履きの裏側が到来します。「ちゃんと丸まってろ」唇を切りつけたらしく、口内に錆のような味が広がりました。

 今年の六月ごろにわたしに対するいじめが始まってから六ヶ月ほど。わたしが連れて行かれ、虐げを受ける場所としてすっかり定着したこの三階の女子トイレですが、十二月ともなるとすっかり寒くなってまいりました。数分ほど水を注がれて、すっかり冷え込んだわたしは思わずがたがたと震え始めました。三人は驚喜したようにかたかたと笑い、こちらを指差してなにやらささやいています。

 そんな行為がもう毎日のように続いていました。わたしはそんな苦しみの日々を耐え忍ぶ意欲を失っていて、受けいれ諦めるだけの余力も使い果たしていて、引きちぎれそうな苦痛をだけを全身に感じていました。

 本当の意味でわたしは追い詰められていたのでしょう。この苦しみに満ちた毎日から逃れられるのなら、何を失っても良い、何をしでかしても良い、そんな破れかぶれな気持ちになっていたのだと思います。

 「なめてみな」

 そう言われ、差し出されたのはトイレの便座を磨く際などに使われる、棒きれの付いた便所たわしでした。女生徒の足元にそっと差し出されたそれに、わたしは迷わず四つんばいで移動していきます。哄笑があがります。

 わたしはたわしを持った女生徒……首謀者のその少女の足下まで移動したわたしは、少しだけ吹っ切れた、暗い開放感に満ちた気持ちになって……たわしではなく女生徒のスリッパの方に手をかけました。 

 「なに? 靴でもなめんの? キモいんだけど……」

 わたしは少女のソックスに包まれた足を両手で掴んで、そのままのそりと起き上がり……自分でも驚くほど敏捷な動きで飛び掛りました。

 「てめぇ……っ!」

 無我夢中の時間が過ぎて……わたしは全身に打撲を負い口から血を流しましたが、少女の足にしがみ付いていました。少女はその場で横転し、スカートの中をむき出しにしながらわたしの頭を激しく蹴りつけました。ですがわたしは離しませんでした。わたしは目の前にある少女の親指をへし折り、引きちぎることだけに集中しました。強く捻ると、指は中の骨がきしむのを思わせる、ごきゃごきゃという音が響かせます。わたしはその場を起き上がり、暴れる女生徒の足を押さえ込んで、それからすべての体重を少女の親指に乗せました。

 何かがへし折れる、ごきゃりという音が響きました。

 いじめは止んで、わたしは今のわたしに変わりました。それは足の親指とは違って、時間の力だけではそう簡単には元に戻らないものなんだと、そう思っています。

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