悪魔襲来
天使と悪魔。
人間の葛藤の中に生き、日々、悪魔は自分の側へ誘い込もうと、天使は選択を正すため、争っている。
これはそんなとある一日の戦い──────────
天空に浮かぶ天使達の城。そのとある一室に、豪華なイスに座った、装飾の煌びやかな服を着た天使がいる。その前には、健司という名の一人の男が女と同じ部屋にいるのが映し出された水晶がある。隣には、綺麗な装飾の施された箱が一つ。後ろには、白い大段幕。そこには、黒く大きな文字で“理性”の二文字がある。
「今日は平和ですね。」
と、天使はつぶやく。いつもなら悪魔からの攻撃が一日に幾度となくあるが、今日はもうじき昼になるというのに今のところ一回も攻撃を受けていない。今のところは──────────
「ミカエル様、悪魔がこちらに向かって攻めてきました。敵の数がいつもに比べて多いようです。」
幹部である天使が部屋に入ってきて言った。敵の数が普段より多いようだが、悪魔が襲撃してくることはよくあること。ミカエルは落ち着いて対処する。しかし、一つ疑問があった。
「おかしいですね。水晶を見ても健司さんは妹さんと同じ部屋で勉強をしているだけ。どのような誘惑があったのでしょうか?」
「それが…………、今まで気が付かなかったのですが、健司殿は重度のシスコンだったようです。」
悪魔の戦力は、誘い込もうとする者、ここでいう健司、に降りかかる誘惑の大きさに比例する。いつもより多いという敵の数は健司のシスコンっぷりを十二分に表してくれている。
「シスコンですか……。」
「はい。」
「シスコンですか……。」
「そうです。」
「シスコンですか……。」
「しつこいです。」
ミカエルはため息をつく。
「健司さんはいったいいくつの性癖を持っているのですかね。」
「底が知れません。」
これまでミカエル達は健司の性癖が明らかになると驚かされてはそのたびに悪魔と戦ってきた。
「まぁ、とにかく“理性の玉”を守らないといけないことには変わりありません。」
「そうですね。」
“理性の玉”
箱の中にあるそれは、天使の主、この場合でいうと健司の理性を具現化している紅く透き通った玉のこと。この玉が壊れてしまうと、次の玉ができる数時間後まで主の理性が無くなってしまう。
今この玉を壊されては、健司の理性は崩れ落ち、兄妹という関係から男女という関係になるため一線を越えようとしてしまうだろう。
「ですがまだ、健司さんの理性は堅いようですね。悪魔を迎え撃つには問題無いでしょう。」
天使の戦力は主の理性の堅さに比例する。まだ城にはいつもほどではないが、悪魔を迎え撃つには十分な数の天使が居るだろう。
「悪魔を迎え撃つ準備をしましょう。天使たちに指示を出して下さい。」
「かしこまりました。」
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