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地下暮らしの最強魔導姫、無詠唱魔術で護衛を任されました  作者: おもち
第一章

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19/22

第19話 やはり整理整頓は大事



私が生徒会の仕事を手伝うようになって、一週間が過ぎた。その間、私は宣言通り、一人で生徒会室の整理を行っていた。


そして今日、見事に部屋の整理を終わらせたのだった。


「ようやく、終わった……」


初めの頃は私が一人で部屋を整理することに難を示していたノアたちだったが、仕事が忙しいことと部屋の散らかり具合から私に整理をお願いすることにしたのだ。


段々と片付いていく部屋を見て、毎回のように驚いていたのが懐かしい。ただ私としても一人で広い部屋を片付けるのは大変で、そこは便利な無詠唱魔術で少しだけズルをした。


だって、せっかく使えるのなら使わないともったいないじゃん。


とにかく散らばった書類を集めるとき、しゃがみながら一枚一枚拾っていくが、反対側でバレないように無詠唱魔術で書類を集めて束にしていった。束にした書類を運ぶのにも、自分でひとつ持ちながら魔術でいくつも持ちながら効率よく作業を進めていった。


そのおかげで、私は書類を集めて、分野ごとに年代ごとに整理し、新しくファイリングして、誰が見ても分かるように昔のファイルも整理することも含めて一週間で終わらせることができた。


正直、無詠唱魔術と効率よく動くことを常に意識していた私の思考速度により、今回は短期間で片付けを終わらせることができたと思っている。ただの人手だけで終わらせようとすると、今回の倍以上の時間がかかることは間違いないだろう。


全てを終わらせた私は一番初めに整理を終わらせていた応接室として使われている生徒会室に皆を呼びに行く。私のファイリングのおかげで仕事効率が途中から上がったノアたちは以前よりも時間に余裕ができているようで、どこか張り詰めていた気配が消えた。


「皆さん、こちらの部屋も無事に片付けが終わりました」


扉を開けて、そう声をかけると、仕事の手を止めて一斉に私の方を向いた。それに対して私は柔らかく笑みを浮かべる。


「仕事でお疲れだと思います。食堂で貰ってきたお菓子と紅茶を準備しています。こちらの部屋にどうぞ。少し休憩しましょう」


長い髪を高い位置でポニーテールにしている私は手を片付けた部屋の方へ伸ばし、皆を誘導する。それに従って、ノアたちは仕事を一度中断すると私に続いて隣の部屋へと移動した。


そして、綺麗さっぱりと片付いた部屋を見て、彼らは思わずと言ったように声を発した。


「これは……すごいな」

「少しずつ綺麗になっていく部屋は見ていましたが、ここまでとは……」

「ねえリューレ、この部屋、僕たちが来る前よりも綺麗じゃない?」

「本当ですね、リューイ。本棚も片付けられているようですし」

「これにはわたくしも驚きですわ……。リーゼリアさんの優秀さがよく分かりますわね」


順番にアシェル、リアン、リューイ、リューレ、サリアがそう感想を告げる。続いて、ノアやアリシア、ユリウスも部屋を見ると驚いたように息を詰めた。


「……いやこれは、うん、凄いね。前の部屋の状態を知っているから、余計にこの整然とした綺麗さにびっくりしてるよ」

「ノアさまの言う通りです。あんなに書類が散らばっていたのに」

「手伝いじゃなくて、正式に役員として迎え入れたいくらいだな」


ユリウスの言葉には苦笑しつつも、私はテーブルに用意したお菓子を示しながら席へ誘導した。


「お好きな席へお座り下さい。お菓子はクッキーやパウンドケーキ、チョコレートなど、食堂の皆さんがおすすめしていたものを持ってきました」


全員が席に座るのを確認すると、私は持っていた紅茶セットを使い、完璧な所作で紅茶をそれぞれのティーカップに注いでいく。以前にフラムに紅茶を出したときに、思っていたよりも簡単にできたことを思い出し、せっかくだからとティーセットを借りてきたのだ。


「いい香りです」

「……これは、《ローレル・シルバーティップ》の紅茶ですわね」

「生徒会で取り寄せている茶葉のひとつですね。私、この紅茶好きなんですよ」


さすが高位貴族の令嬢であるアリシアとサリアは紅茶のわずかな香りだけで紅茶の柄名を当てた。私は二人の言葉を聞き、手を動しながら話す。


「生徒会の皆さんが好んで飲んでいる茶葉はサリア先輩が言った《ローレル・シルバーティップ》と生徒会専用に調合された、オリジナルのブレンド《アークセイバー》の二つだと思います。そのうち、《アークセイバー》は集中力の増進をはかる効果がありますが、今は休憩の時間なので、こちらにしました」


仕事中であれば《アークセイバー》でも良かったが、せっかくの休憩なのだ。それに私が《ローレル・シルバーティップ》の方が味が好みだというのも影響している。


「どうぞ、熱いので火傷には注意して下さい」


人数分を準備すると、私はそれぞれの前にカップを運び、自分の分も用意すると、そう声をかけた。


ノアたちはカップに口付けると、茶葉特有の甘みと苦味、香りが口に広がり、リーゼリアの腕前に感嘆する。


「美味しいよ、リーゼリア嬢。こんなにも美味しく紅茶を淹れられるなんて、いつの間に練習したの?」

「いえ、特にはしていませんよ。本に書かれている通りに淹れただけですので」


事実その通りで、フラムに言ったように告げると、ノアだけでなく、残りの役員も驚いたように目を丸くした。そんなにも驚くことなのかと首を傾げながら、私はお菓子も勧める。


「それよりも、お菓子も食べてみてください。少しだけ味見してみたんですが、とても美味しかったですよ」


特にパウンドケーキが美味しく、ふんわり食感に加えて、甘さも控えめでいくらでも食べられそうなほどだった。


私の発言に言葉を詰まらせながらも、とりあえずは流すことにしたらしく、ノアたちは勧められたお菓子たちを食べていく。女子組はパウンドケーキがお気に召したようで、男子組は手軽に食べられるクッキーが気に入ったようだ。


午後も授業があり、その上での生徒会の仕事であるため、小腹が空いていた生徒会役員にとっては素晴らしい休憩時間だった。


「───そういえば、このお手伝いっていつまでとか期限ありますか? そういうの、決めてないと思いまして」


皆の食べる手が止まり始め、私はカップを口から離すと、そう問いかけた。それに対し、生徒会役員は「あっ……」と声をこぼす。


「確かに、決めていなかったな」

「でも無難に考えて、今年一年は手伝ってもらった方がいいのではないですか? 仕事効率が上がったとしても、人手が足りないのは変わらないですし」


ユリウスの言葉に続き、リアンが期限を提案する。その提案に周りも「確かに」と頷くのが見られる。


「と言うことだ。リーゼリア嬢、今年一年は手伝ってもらう方針で構わないか? 来年は……一度考えてもらうとして」


来年も手伝うことになるのかと話を聞いていた私は僅かに苦笑するも、今年一年ならばと受け入れることにして頷いた。


「わかりました。その提案を受け入れます」


私がそう言うと、皆は嬉しそうに顔を明るくした。けれど、提案されなくとも、私も同じような内容を提案するつもりではいた。


ちょっと、気になることがあるのだ。


護衛しやすいのは確かに生徒会に関わっているときだと、この一週間で私も理解したのだ。未だに護衛として、どう行動するべきか分かってはいないが、護衛らしくないド素人な動きのほうが誰にも怪しまれずにいいのだろう。


私を学院に送ったフラムや国王陛下たちもそう考えてのことのはずだ。


「では、とりあえずは兄さまたちが卒業するまで生徒会役員ではありませんが、よろしくお願いします」


そう宣言すると、私は拍手で歓迎される。そのとき、アリシアから声がかかった。


「なら、リーゼリアの歓迎会を近いうちに開きませんか? リーゼリアのおかげで仕事にも余裕ができてきたころですし。今回の感謝とこれからの期待を込めて」


ん、それはどういうこと? 思わず私は首を傾げる。


しかし、そんな私に気づいていないのか、その提案に誰もが頷いた。


「いいと思う。リーゼリア嬢にはこれからも頼みにしているしな」

「俺も賛成だよ。仕事は早いし、こんなにも美味しい紅茶も飲ませてもらったし。歓迎会で仲も深まると思うしね」


ユリウスとノアを筆頭に他の役員もアリシアに賛成の声を上げる。


「僕たちもさんせーい! ね、リューレ」

「はい、リューイ。歓迎会、いいと思います」

「わたくしもアリシアさんの意見に賛成ですわ。リーゼリアさんと仲良くなれる機会が欲しいと思っていましたので」

「私もいいと思いますよ。アシェルはどう思いますか?」

「もちろん、賛成に決まっている。リーゼリアが歓迎されるのは嬉しいことだし、何よりも兄としてリーゼリアに楽しんでほしいからな」


全員の賛成を聞いたアリシアは当事者の私を置いて、早速と言わんばかりに会場をどこにするか考える。


「場所は生徒会室でもいいと思いますけど、どこかのお店を予約するのもありかと思います。どうしますか?」

「リーゼリア嬢が周りに知られたくない様子だったし、いっそのこと王宮でやるか? 王宮なら、ある程度自由が効く」

「確かに、ユリウスさまなら部屋の確保は容易いですね。王宮であるのならば、私たちがいても貴族としての責務があるということで誤魔化しがききますし」


私が口を挟む間もなく、どんどんと話は進んでいく。楽しそうに話しているアリシアを見て、私では話に介入するのは無理だと悟り、早々に諦めることにした。


「ではユリウスさまに場所の準備はしてもらうとして、日時を決めましょう。仕事の進み具合からいくと、再来週の休みあたりが丁度よさそうです。それ以上遅くなると、定期試験の日程も近づくと思うので、どうでしょう?」

「わたくしはいいと思いますわ。仕事の件もそうですが、お気に入りのケーキのお店がありますの。予約を考えて、再来週ならば問題ないと思いますわ」

「他の皆さんはいかがですか?」


未来の国母としての素質を発揮させるアリシアは淡々と物事を決めていく。


「僕とリューレも問題ないよ。サリア先輩がケーキを用意してくれるのなら、僕たちはリーゼリア嬢に何かプレゼントでも用意する?」

「いいと思います、リューイ。クラスメイトにも聞いてみましょう」


リューイとリューレは私にプレゼントをするものを既に考え始めており、アシェルとリアンも問題ないと言うように頷いていた。それを確認したアリシアはパチンと手を合わせ、話をまとめた。


「では再来週───詳しい日時はユリウスさまと確認しながら再度報告しますが、リーゼリアの歓迎会は王宮で行うということで、各自持参したいものは自由に持ってくる。ドレスコードは特にないので、主役であるリーゼリアが楽しめるように気楽なものがいいと思います。なにか質問がある方はいますか?」


アリシアは周りを見渡し、特に何もないことがわかると、楽しみだというように話を締めくくった。


「質問があれば、その都度質問してください。リーゼリア、再来週を楽しみに待っててくださいね」


その言葉に私は目をぱちくりとさせるも、嬉しそうに笑みを浮かべた。


「はい。楽しみにしています」


心が暖かくなるのを感じた私は僅かに目を伏せ、早く当日にならないかとこっそり待ち遠しく感じていた。




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