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地下暮らしの最強魔導姫、無詠唱魔術で護衛を任されました  作者: おもち
第一章

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12/22

第12話 レクリエーション



「私はアリシア・エストレインと申します。人と話すことが好きなので、多くの方に話しかけていただけると嬉しいです。これからよろしくお願いいたします」


王子の婚約者らしく、美しい一礼を披露して見せたアリシアは赤い瞳を細め、優しく微笑んだ。所作も丁寧で、自然と惹き付けられる。


エストレイン侯爵令嬢は美人よりの顔立ちをしているよね。でも、醸し出している雰囲気が柔らかくて、ホワホワする感じ。


思わずそんな感想が浮かんでしまうほど、アリシアはクラスの注目を浴びていた。ユリウスも第一王子らしく圧倒的なカリスマで注目されていたが、アリシアは他者を抑圧する訳でもない、人を優しく包み込むような感じがある。


未来の国母として、これ以上ないほどの素質を備えているように見える。


ユリウスと同じように拍手されると、アリシアは自分の席に座った。


そして次々とクラスメイトが自己紹介をしていき、ついに私の番になった。正直、こういった自己紹介の場は私は苦手だ。


私は大勢の前で話すことが苦手なのだ。だかそんな私からしたら、これは苦痛以外の何物でもない。


けれど、ある程度の印象は必要であり、フェイン侯爵家の顔に泥を塗ってしまわないように私はため息を押し殺し、自己紹介をするために立ち上がった。


優しい印象を残すためになるべくゆったりと、けれど聞きやすいように意識にしながら言葉を紡ぎ出す。


「はじめまして。私はリーゼリア・フェインと申します。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は3年前にフェイン侯爵家に引き取られました。フェイン侯爵家に泥を塗ることがないよう、学院では魔術を含めて、多くの知識を得たいと考えています。貴族社会に不慣れなことも多いため、ぜひともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします」


そう口を閉じると、リーゼリアは優雅で美しい一礼を披露して見せた。無駄のない足運びとお辞儀の角度。そして吸い込まれるような煌めく青い瞳。


リーゼリアの一挙一動にクラスメイトの全員が目を離せなかった。全ての言動がとても3年前に貴族社会に参入してきた養女とは思えないほどであった。


リーゼリアの姿を見て呆然としていたクラス内だが、一番初めに拍手をしたユリウスに続き、次々とリーゼリアに拍手が送られる。


それを確認して、私は席に着いた。


はぁ、やっぱりこんなにも多くの人の前で話すのは緊張する。誰かと話すことには慣れたとはいえ、大人数相手だとまだ無理か。


ため息をつきたい気持ちになりながらも、すぐに次の人の自己紹介へと移る。そして私の隣にいるのはノアだ。


彼はユリウスたち同様、慣れたように席を立ち、自己紹介をする。


「初めまして、俺はノア・ヴァルトリア。学院内では気軽に話しかけてくれると嬉しいよ。これから卒業まで、よろしくね」


話しかけやすいと相手に印象づけるような挨拶だが、高位貴族特有の他者を支配するような場の空気感に私は感心する。


学院では身分平等が掲げられているから、気軽に話しかけてなんて言ってるけど、それは学院内での話。学院外では身分差は当然のようにあるし、下手に踏み込んでくるなと言外に告げている。


線引きが上手いと思った。相手を牽制しつつ、けれど学院の掲げる『身分平等』は遵守する。


その差に私は思わず拍手してしまう。さすが王子の幼なじみということもあり、王子に劣らないほど場を支配する力を持っているようだ。


そしてノアの自己紹介が終わり、私の横列最後の人まで挨拶が終わると、教壇にいるヴァイオレットが口を開いた。


「みんな自己紹介お疲れ様。私もみんなの話を聞いて、大体の人となりとかは分かったかな。さて、ここからは今日の残りの時間は何をするか、明日からの授業とかについて話をしていくわね」


明日からの授業では早速、魔術について勉強していくようだ。授業で必要となる教科書を各自売店で購入するように言われた。


また、授業は座学だけでなく、実験や実践授業もあるため、予備の制服も用意しておいた方がいいとの事だ。


この場合、制服の件はフラムさんに言えばいいのか、父さまに言えばいいのか。まあ最悪の場合、複製魔術で制服を複製してしまえばいいか。お金かからないし、その方がいいと言えばいいよね。


そんなことを考えながらも、説明は続いている。


基本的には今私たちがいる教室で授業を進めていくようだが、日によっては場所が変わることもあるようで、事前に配られる授業資料について目を通しておくことを忘れないように告げられる。


「明日からのことはこんなものね。あとはみんなが学院に慣れながら知っていって」


なんとも放任的なことを言うが、何でもかんでも教えられると自主性がなくなってしまうため、この程度の知識で十分なのだろう。ここにいる生徒は意欲のある生徒ばかりであるのだから。


ちらりと周りを見てみると、クラスメイト全員が真剣にヴァイオレットの話を聞いている。話半分で聞いている私は周りの態度に感心してしまう。


「それと今日の残りの時間のことだけれど、親睦を深めるということで軽くゲームでもしましょうか。隣の人と2人1組でペアになって」


突然の展開に私は驚いてしまう。しかし驚いたのは私だけではないようで、クラス内からどよめきを感じる。


しかし、そう指示があったのならば仕方がない。私は隣を向き、軽く会釈をする。するとノアは右手を私に出してきた。


「よろしくね、フェイン侯爵令嬢」

「よろしくお願いします」


どうやら握手のための右手のようで、私は意図を理解すると同じく右手を差し出す。交わした手は温かく、それでいて少し手のひらが硬い気がした。


魔術だけでなく、剣術も嗜んでいるようだ。それもこの手のひらから察するに相当な剣術使いだということが分かる。


ちなみにだが、私も軽くは剣を扱うことができる。魔術師のため剣を振るうことはあまりないが、私に剣を持たせると周囲一帯が吹き飛ぶということで《七星の塔》から剣を扱うことを禁じられている。


確かにどんなものかと思って剣を降ってみたら、思いのほか威力が出たんだよね。相手が魔物だったから良かったけど。


周囲も隣とペアを組み終わったところで、ヴァイオレットは楽しそうに口を開いた。


「これからやるゲームは机上ミニ結界サバイバルゲームよ!」


なにそれ?


聞いたことのないゲーム名に首を傾げる。周りを見ると、どうやらクラスメイトも初めて聞いたようだ。


「このゲームは2人のうちどちらかが自分の机の周辺に簡易結界を張るの。そして、その張られた結界を他チームは教室やクラスメイトに被害を出さないようにしながら魔術で結界を破壊するのよ」


それを聞いて、私は思う。


あ、これ、とっても面倒なやつだ。


ここにいるクラスメイトの実力ならば、被害を出さずにゲームを進めることは可能だろう。そもそも、事前に魔術を学んできた生徒がいるとしても教室を破壊できるほどの強力な魔術を扱える生徒は私を除いて数人しかいない。


そしてその数人とは隣にいるノアと前にいるユリウスとアリシアくらいだ。残りのクラスメイトでは現状、結界を破壊する程度の魔術しか扱えない。


自分の実力を過剰評価して、魔力を暴走させてまでやれば、強力な魔術を扱えるけど、そんなバカな真似をする人間はここにはいないだろう。


そうなると必然的にこのゲームの勝敗は自ずと見えてくる。けれど、これは恐らく乱戦のようなものになるはずだ。


ちらりと視線をヴァイオレットへ向けると、彼女は詳しいルールを説明する。


「このゲームはチーム戦。だけど、トーナメントとかではなくて、このクラス一斉に結界を破壊するために攻撃してもらうわ。自分たちだけではは倒せないと思ったチームがいたら即席で仲間を作ってもいいし、誰とも協力せずにペアとだけで勝ちを目指してもいい」


それを聞いて、私はやはりと思った。


こうなってくると、真っ先に狙われるのは私たちと王子さまたちの2チームになる。けど、公子さまや王子さまたちの性格を見るに、お互いがライバルでこのゲームで協力するような気配はないだろうし。


お互い以外では負けないという意志を感じる。私としてはゲーム開始に合わせて全チームの結界を破壊してもいいのだが、それだとダメなことは流石にわかる。


そんなことをしたら、兄さまにやりすぎって言われるかもしれないし。


詠唱ありならば多少は大丈夫と言われたが、流石にこれは大丈夫の範囲を超えている気がした。そうなると、私は大人しく結界を張る役割を担った方がいいかもしれない。


公子さまは王子さまとやり合いたいだろうし、それを分かっているエストレイン侯爵令嬢は

結界を張る方に回るだろうしね。


私がそう決めている間にもヴァイオレットは話し続ける。


「ペアの一人は結界を維持するけど、もう一人は迎撃するから役割は各自で決めてね。もちろん、結界が破壊されそうになっていたら、2人です結界を補強するのも大丈夫よ。一応制限時間を設けるけど、最後の1チームになるまでゲームは続けるわ。今から3分間、時間をあげるから役割を決めてちょうだいね」


役割分担が要となってくるため、ヴァイオレットの言葉の後、それぞれペアは真剣に話し合いを始めた。私もノアと向き合い、話し始める。


「どうしよっか。俺はどちらでも大丈夫だけど、フェイン侯爵令嬢は希望とかある?」

「私もどちらでも大丈夫です。ただ、強いていえば結界を張るほうがいいです」

「そう? なら俺は迎撃するよ。結界を張るのは得意なの?」

「特にそういうことはないです。なんとなく、公子さまは王子殿下とやり合いたいと勝手に考えてしまっただけですし」


僅かに目を伏せながら告げる私に、ノアは目を丸くした。


「よく、わかったね。この短時間で」

「なんとなく、です。お二人の仲がいいことは知っていたので」

「それだけで? 君は周りをよく見ているんだね」


別にそういうわけではないが、わざわざ否定する気もない。こういうのは勝手に誤解させておけばいいのだ。


「フェイン侯爵令嬢には結界を張ってもらうけど、集中砲火をくらう可能性があるから、結界が破壊されそうになったら教えて。俺も結界を補強するのに回るから」

「分かりました。そのときはよろしくお願いいたします」

「うん」


恐らくというか絶対に、私の結界が破られることはないだろうが。


ゲームとはいえ、私は負けるつもりはない。もちろん手は抜くが、それで負ける気などないし、目立たない程度に全力で勝ちに行く。


私の張る結界を壊せるものなら、壊してみるといい。


私は内心、不敵な笑みを浮かべた。



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