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地下暮らしの最強魔導姫、無詠唱魔術で護衛を任されました  作者: おもち
第一章

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11/22

第11話 入学式



学院寮に入り、3日が経って、今日は王立魔術学院 《ルミナリア》の入学式だ。


この3日間、私は極力部屋から出るようなことはせず、読書をしたり、魔術の研究をしたりしていた。朝食、昼食、夕食は食堂から運ばれてきており、見事なまでに引きこもっていた。


「……このネクタイをして、上着を着ればっと」


白のシャツに紺色のロングスカート、学院の紋章が入った紺色のジャケットの制服はひと目で王立魔術学院 《ルミナリア》の学院生だと分かる仕様になっている。


姿見の前で制服を着た私はくるりと一周して、シワや汚れがないか確認する。そして、白銀の髪はハーフアップにして髪飾りでとめる。


「……よし、できた」


この髪飾りはフラムから贈られたものだ。細かな意匠で、青い宝石が散りばめられているそれは派手ではないが、リーゼリアの儚い美しさを引き立てていた。


学院指定のカバンを持ち、私は準備ができると入学式を執り行う学院の講堂へと向かった。


寮を出ると、同じ新入生の学院生が多くいた。在校生は既に講堂に集まっているため、ここにいるのは全員が同級生となる相手だ。


やはり貴族が多く、子息や令嬢ともに既に固有のコミュニティが築かれている。けれどその中で、圧倒的なコミュニティをつくる存在がいた。


あそこにいるのが、王子さまたちか。分かりやすく目立っている。見つけやすくてとてもいい。


眩くような王族特有の金髪にエメラルドのような緑眼の瞳を持つ第一王子ユリウス・シェラ・ルシエル、青みがかった黒髪に夜空を散りばめたかのような美しさの紫眼の瞳を持つ公爵子息ノア・ヴァルトリア、ミルクティー色の髪と情熱的な赤い瞳を持つ第一王子の婚約者である侯爵令嬢アリシア・エストレイン。


彼らが私が最優先で守るべき相手で、まだ一年生ながらも他者を従える素質と才覚を持った人物だ。


中々な集団だよね。そして高位貴族らしく、見たところとても多い魔力量を持っている。優秀な魔術師となる金の卵というのは、間違いではないみたいだ。


王子たちとは一定の間隔を開けつつ、私は気づかれないように気配を薄くし、彼らを観察していく。その中で、私はノアの纏う魔力量に僅かに首を傾げた。


魔力が、なにか変……?


魔力量的に見ると、あの3人の中でいちばん多いのは第一王子ユリウスであり、次にノア、アリシアといった感じだ。けれど、何だか違和感を感じる。


魔力量、誤魔化してる……?


誤魔化すというのも変な話だ。高位の魔術師ともなると、自身の持つ魔力を制限し、相手から見る自身の魔力を本来の魔力よりも少なく見せることが出来る。


実際、私も魔力を制限し、本来の魔力の10分の1以下程度しか周りには見せていない。まあ、ここで本来の魔力量を示したら大騒ぎになるだろうしね。


それよりあれは制限と言うより、封印に近いかもしれない。


恐らく、ノアの左腕につけているブレスレットがノア本来の魔力を一部封じているのだろう。なぜ、そんなことになっているのか、私には分からなかった。さすがの私もそんな所までは見抜けない。しかし現状、ノア自身に何か悪影響がある訳でもなさそうなため、私はノアから視線を外した。


まあ、なんでもいいかと私の面倒くさがりが顔を出したが、気にせずに足を踏み出した。


歩みを進め、講堂へ向かっていく。誰かに話しかけることもなく、話しかけられることもなく、ひとりで講堂に着いた私は講堂内をぐるりと見渡し、空いている席に座った。


そして続々と新入生が入ってくるのを端の方から眺めていく。薄暗い講堂内で眠くなる私は欠伸を我慢していると、第一王子たちがやってきた。


彼らは講堂内で空いている席を探すために上から順に視線をずらしていき、空いている席を見つけると仲良く3人でその席に座った。だが、良いのか悪いのか、彼らが座った席は私の座っている席をひとつ挟んで隣だった。


なんでこっちに来たの。他にも空いてる席あったでしょうに。


思わずため息が出そうになるが、視線も向けず、話しかけもしなければなんの問題もないだろう。それに一応は護衛なのだ。近い方が護衛しやすいと無理やり納得させる。彼らは三人仲良く話しているようで、こちらに意識を向けるような気配もないし。


私はそのまま早く始まらないかなと思いながら入学式が始まるのを待ち、やがて時間になり入学式は始まった。


眠気を誘う長ったらしい学院長の話、教師の話、来賓として来ている国王の入学祝いの話などとにかく話を聞いていた。そして在校生代表が新入生に祝いの言葉を述べると、ユリウスが新入生代表として登壇し、挨拶を行った。


よくもまあ、あんなにも長い文章を噛まずにスラスラと話せるものだよね。私なら絶対に無理な自信がある。


感心するが、正直眠気との戦いのため、私はユリウスの挨拶をあまり聞いていない。いや、ユリウスだけではない、国王陛下を除く他の人の挨拶や話もほぼほぼ聞いていない。


悪いと思っているが、どうせ言い回しを変えているだけで言っている内容なんて同じものだ。要約すると『入学おめでとう。これからの学院生活、頑張ってね』で、それに対する返答が『ありがとうございます。頑張ります』だ。


それを何十分も聞くのは眠くなるでしょ。


欠伸をしないように我慢しながら、ユリウスの話を聞き終わり、周りに合わせて拍手をする。そしてようやく入学式が終わると、私は小さく欠伸をする。


しかし、まだ終わりではなかったようで別の教師が登壇し、話を始めた。


まだあるのかと思った私は悪くない。


「新入生諸君、入学おめでとう。さっそくこの後は各教室で自己紹介やオリエンテーション、明日からについての話をすると思うが、その前にやってもらいたいことがある」


教師はそう言うと詠唱を行った。その瞬間、私たちの座る椅子の肘掛に小さな魔術陣が現れた。


「その魔術陣を発動させると、自分がどこの教室で学ぶかが分かる。簡単に言うとクラス分けの発表だ。各自魔術陣を発動させ、教室を確認してくれ。ちなみにこのクラス分けは我々教師が平等に行ったものだ」


その話のあと、私たちは現れた魔術陣に魔力を流し、魔術陣を発動させる。発動後、魔術陣は消えたが、代わりに魔術陣があった場所に文字が浮かび上がっていた。


まあ、魔術陣が元からあったのは知っていた。何に使うのかと思っていたが、まさかのクラス分けに使うとは思っていなかった。


先生が使った魔術はの不可視化の魔術を解除したものだろう。そしてこの魔術陣はどれも同じだけど、流された魔力により個人を判別して浮き上がる文字を変化させている。


この魔力を判別しているのも学院寮の魔力登録を元にしているのだろう。


浮かび上がった文字を眺めて、私は壇上に視線を戻した。


「各自確認したものから講堂を出て、教室に向かうこと。在校生はこの後通常授業だ。時間に遅れないように」


その言葉の後、講堂内にいた生徒はぞろぞろと出ていく。私はある程度人が掃けたあとに出ていこうと、椅子から立ち上がる素振りは見せない。


王子たちは早めに講堂を出ていったようだが、私は片目を伏せて足を組んで居た。


多分、国王陛下もここにいたということはクラス分けは多少弄られている。平等に、というのも間違いはないだろうけど、護衛がしやすいように王子さまたち3人と私は同じクラスになるように仕組まれているはずだ。


それを裏付けるように、国王陛下はこの広い講堂から私を見つけると目を細め、手を振る代わりに微笑んで講堂を去っていった。


上手いこと、クラス分けをいじったものですね。


私は国王陛下に少し呆れてしまったが、国王陛下からの命ということで、私は人が減った講堂から出ていき、護衛のために既に教室にいるであろうユリウスたちと同じ教室へと向かって行った。


教室に着き、私は後ろの扉の方から中に入る。どうやら席は指定されているようで、私は黒板に書かれている自分の名前を探した。


えー、まじか。


そこで私は思わず顔を顰めてしまった。


私の席は窓側の一番後ろという端の端だ。席替えでは誰もが狙う席だろう。


けれどここでも護衛としての役割が働いているのか、私の隣は公爵子息のノアであり、同じ列の1番前には王子のユリウス、その隣には婚約者のアリシアがいた。


この教室は長机が縦に3つ、横に4つで、長机に二人座るようになっている。


残念ながらノアとは列を挟んで隣とかではなく、間違いなく隣であるし、ユリウスやアリシアたちとも前にある長机を挟んですぐだ。


ここまで仕組まなくていいのに。気が休まらないよ。


溜息をつきながら、私は指定された席に向かう。既にノアは座っており、私が近づくとこちらに視線を向けてきた。


「やあ、君がフェイン侯爵令嬢かな? 俺はノア・ヴァルトリア。フェイン侯爵家が養女を迎えていたなんてここ最近まで知らなかったけど、仲良くしてくれると嬉しいな」


フェイン侯爵令嬢と呼ばれ、一瞬誰だか分からなくなったが、それは今の私の名前だと思い出した。そして私は面倒だと思いながらも貴族としての一礼で挨拶をした。


「リーゼリア・フェインと申します。よろしくお願いします」


完璧な挨拶をした私ににノアは目をぱちくりとさせる。


「養女だとしても、流石フェイン侯爵家だね。ここまで完璧な一礼はなかなか見ないよ。しかも3年前に養女になったばかりだと言うのに、すごい努力家なんだね」

「ありがとうございます、ヴァルトリア公子さま」

「堅いなぁ。ノアでいいよ。せっかく隣になったんだし、多分クラス替えもないだろうから卒業まで一緒に過ごすだろうしね」


そう言われても、軽々しく名前を呼ぶなんてできるわけがない。いくら建前上、今の私がフェイン侯爵令嬢だとしても、周りからどう見られるか。


クラスメイトとしてある程度の親しさは大事かもしれないけど、それ以上だと勘違いされたら面倒だし、いやだ。しかも絶対に女生徒に人気だろう。


後ろから刺されるなんてことはないだろうが、不安要素は少なくしておくべきだ。


だから私は小さく微笑み、首を横に振った。


「恐れ多いことです」

「んー、まあおいおい仲良くなっていければいいかな。これからよろしくね」


私は席につき、周りを観察する。しかし私は割かし遅く入ってきたため、教室はほとんど埋まっており、程なくしてこのクラスの担任がやってきた。


「入学おめでとう、みんな。私がこのクラスの担任のヴァイオレットよ。何人かは予想してるかもしれないけど、学院にはクラス替えというものはないから、卒業までよろしくね」


美人というより可愛いという言葉が似合う小柄な女性だった。華奢というわけではないが、小動物っぽく、庇護欲をそそられるが、見た目によらず保有されている魔力量は王宮魔術師に劣らない。


恐らく、この国でも《七星の塔》を除けば両手以内には入るほどの実力者だ。


「まずは簡単に自己紹介でもしてもらおうかな。既に知っている子たちもいると思うけど、こういうのは形から入るのも大切だからね」


ヴァイオレットは1番前、ユリウスから指定した。


「じゃあまずはこのクラス全員が知っていると思う殿下から自己紹介してもらおうかな。そこから隣にエストレイン嬢と続いてもらって、端までいったらそのまま後ろに続こう」


その場でいいよ、というヴァイオレットの言葉の後、ユリウスは席を立ち、全員の顔が見えるように後ろを向きながら挨拶をした。


「初めまして。俺はユリウス・シェラ・ルシエルだ。この国の第一王子ではあるが、学院では同じ一生徒であることには変わりないため、話しかけてくれると嬉しい。魔術については多少心得があるため、何かあれば頼って欲しい」


これからよろしく頼む、と短すぎず、長すぎない自己紹介を披露したユリウスはクラス内から拍手され、アリシアもそれに続いた。




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