5 救出作戦-1-
調査団は未明から慌ただしかった。
荒くれぞろいの、どこか楽観的な連中の顔つきが今日は妙に険しい。
なにか良くないことがあったな、とアナグマは直感した。
「緊急事態だ」
カイロウはいつも言葉少なに話すが、今日に限ってはそれで充分だった。
短すぎるこの言葉、そして普段と打って変わって平静な物言いが、文字どおり”緊急事態”であることを隊員につきつけていた。
「ゴモジュ隊が消息を絶った」
彼は経緯を語った。
「昨夜、地上の調査に出たゴモジュ隊十二名が帰還していない。予定では三時間前には戻ってきているハズだ」
「巨獣に襲われたのでしょうか?」
「分からん。だがその可能性は高い」
深刻ではあるが悲愴感はない。
それは隊員たちも同様だった。
調査団に身を置くからには、死は常に覚悟しておかなければならない。
生還は偶然と奇跡と幸運の賜物である。
誰が言い出したワケでもないこの金言は、多くの隊員が自分に言い聞かせている。
「調査団からの要請だ。地上に赴き、ゴモジュ隊の捜索をおこなう」
場はざわついた。
収獲物が評価につながる探索とはちがい、救助活動にはポイントの概念はない。
しかも失踪の原因によっては、自分たちも同じく危険な目に遭う可能性もあり、通常の探索以上にリスクを伴う。
「複数の隊に要請が入っている。すでに地上に向かっている隊もあるようだ」
出遅れるな、とは彼は言わない。
今回は功を競うものではないからだ。
「巨獣の可能性を考慮し、七号装備とする。一時間後に出発だ」
果実や木の実を持ち帰る必要がないため、隊員の持ち物はすべて武具に回すことができる。
それでもなお巨獣に対しては万全とはいえないのである。
「たいへんなことになったね」
ソブレロの呟きに、
「日常が戻ってきたンだよ。調査隊の失踪なんてよくあるコトじゃねえかよ」
ギトーはつまらなさそうに言った。
「そうは言うけどさ、ゴモジュ隊長はうちに負けないくらいの凄腕なんだよ? それがひとりも戻ってこないなんて――」
「それでもいつかこうなるのが調査隊ってもンだ。それよりオメーはあの新入りをちゃんと見てろヨ? また無茶やるかもしんねーゾ」
「ああ、うん、そうだね……」
言われて彼はアナグマを見た。
表情からは特に緊張している様子はない。
ずいぶんと肝が据わっているな、とソブレロは思った。
怪鳥に果敢に挑んだ姿を思い出す。
”巨獣に遭ったらまず逃げろ。無理でも逃げろ。それでも無理なら戦え”
ラメーゴの代から伝わる言葉だ。
実際に彼らはそうしてきた。
だから今日まで生きてこられた。
正しい方法だったのだ。
誰もがこの言葉を守り、実行してきた。
「…………」
しかしそうだとすると、アナグマは間違っていたということになる。
(そうだろうか……?)
結果的に怪鳥をやりすごすことができたが、それは同行していた兵団のおかげだ。
もしあの男がいなかったら、アナグマは間違いなく短剣一本で立ち向かっていただろう。
その結果は知る由もない。
見事に撃退できたか、それとも返り討ちに遭ったか――。
いずれにしても、あの新米の無鉄砲で向こう見ずな勇敢さは、この隊が長いこと忘れていた何かなのかもしれない。
ソブレロはふとそんなことを思った。




