表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/19

5 救出作戦-1-

 調査団は未明から慌ただしかった。


 荒くれぞろいの、どこか楽観的な連中の顔つきが今日は妙に険しい。


 なにか良くないことがあったな、とアナグマは直感した。


「緊急事態だ」


 カイロウはいつも言葉少なに話すが、今日に限ってはそれで充分だった。


 短すぎるこの言葉、そして普段と打って変わって平静な物言いが、文字どおり”緊急事態”であることを隊員につきつけていた。


「ゴモジュ隊が消息を絶った」


 彼は経緯を語った。


「昨夜、地上の調査に出たゴモジュ隊十二名が帰還していない。予定では三時間前には戻ってきているハズだ」


「巨獣に襲われたのでしょうか?」


「分からん。だがその可能性は高い」


 深刻ではあるが悲愴感はない。


 それは隊員たちも同様だった。


 調査団に身を置くからには、死は常に覚悟しておかなければならない。


 生還は偶然と奇跡と幸運の賜物である。


 誰が言い出したワケでもないこの金言は、多くの隊員が自分に言い聞かせている。


「調査団からの要請だ。地上に赴き、ゴモジュ隊の捜索をおこなう」


 場はざわついた。


 収獲物が評価につながる探索とはちがい、救助活動にはポイントの概念はない。


 しかも失踪の原因によっては、自分たちも同じく危険な目に遭う可能性もあり、通常の探索以上にリスクを伴う。


「複数の隊に要請が入っている。すでに地上に向かっている隊もあるようだ」


 出遅れるな、とは彼は言わない。


 今回は功を競うものではないからだ。


「巨獣の可能性を考慮し、七号装備とする。一時間後に出発だ」


 果実や木の実を持ち帰る必要がないため、隊員の持ち物はすべて武具に回すことができる。


 それでもなお巨獣に対しては万全とはいえないのである。


「たいへんなことになったね」


 ソブレロの呟きに、


「日常が戻ってきたンだよ。調査隊の失踪なんてよくあるコトじゃねえかよ」


 ギトーはつまらなさそうに言った。


「そうは言うけどさ、ゴモジュ隊長はうちに負けないくらいの凄腕なんだよ? それがひとりも戻ってこないなんて――」


「それでもいつかこうなるのが調査隊ってもンだ。それよりオメーはあの新入りをちゃんと見てろヨ? また無茶やるかもしんねーゾ」


「ああ、うん、そうだね……」


 言われて彼はアナグマを見た。


 表情からは特に緊張している様子はない。


 ずいぶんと肝が据わっているな、とソブレロは思った。


 怪鳥に果敢に挑んだ姿を思い出す。




”巨獣に遭ったらまず逃げろ。無理でも逃げろ。それでも無理なら戦え”




 ラメーゴの代から伝わる言葉だ。


 実際に彼らはそうしてきた。


 だから今日まで生きてこられた。


 正しい方法だったのだ。


 誰もがこの言葉を守り、実行してきた。


「…………」


 しかしそうだとすると、アナグマは間違っていたということになる。


(そうだろうか……?)


 結果的に怪鳥をやりすごすことができたが、それは同行していた兵団のおかげだ。


 もしあの男がいなかったら、アナグマは間違いなく短剣一本で立ち向かっていただろう。


 その結果は知る由もない。


 見事に撃退できたか、それとも返り討ちに遭ったか――。


 いずれにしても、あの新米の無鉄砲で向こう見ずな勇敢さは、この隊が長いこと忘れていた何かなのかもしれない。


 ソブレロはふとそんなことを思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ