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4 地下鳴動-6-

 その後、ふたりはあてもなく町を歩いて回った。


 これまで調査団に入ることだけを目的に生きてきたようなアナグマにとって、ここは別世界のようだった。


 地下にいながら、そこで採れた作物と地上からの収獲物とで生活が成り立っている。


 工芸品や家具の類もそうだ。


 普段、自分たちが命懸けでこなしている仕事が、こうして姿かたちを変えて生きているのか――。


 アナグマは不思議な気分になった。


 もしかしたら彼らが昔から使っている道具のどれかに、父ラメーゴの収獲が用いられているかもしれない。


 そう考えると、父とのつながりを調査団にだけ求めていた視野の狭さに思いいたる。


「へえ、これはまた凝ったデザインのブレスレットだな。値段は……いいや、見なかったことにしよう」


 所在なげなアナグマとは対照的に、ネロはこういうところに来ると活き活きとしていた。


 生きるのに必須ではない装飾品や娯楽をことさらに求めているようだった。


 アナグマがそれについて尋ねると、


「パンと水だけじゃ飽きるだろう? それに栄養だって偏る。こういうのも必要なんだよ」


 と彼はあっけらかんとして答えた。


「キミはずっと親父さんの後ろ姿を追い続けてきた。それが悪いとは言わないけど、寄り道だって必要じゃないか?」


「そんなふうに考えたことなかった」


「それ、さっきも言ってたな」


 アナグマはふと視線を横に向けた。


 宝飾店があった。


 地中に住む彼らにとって、鉱物は身近な存在だ。


 文字どおり土色に覆われたこの世界では、赤や青、緑に紫とさまざまに輝くそれらはたんなるアクセサリーではない。


 七色のいろどりが、精神の安定と秩序をもたらすからだ。


 そして時に、すさんだ心の癒しを求めて奪い合いの種にもなる。


「寄り道か……」


 つぶやき、アナグマはショーケースの中のひとつを見つめた。


 照明を受けて力強く輝く紫色の光。


 アメジストだ。


 ただ眩しいだけではない。


 見る角度によっては洞窟の奥の暗がりを思わせる、深く黒い紫色をたたえている。


 ――自分は何色なのだろうか?


 彼はふと思った。


 調査団に入ることだけを考えて生きてきた彼には、宝石のような無数の色などない。


 仮にそれが黒であろうと、赤であろうと。


 ただ一色だった。


(それ以外考えられなかったオレには、いまさら寄り道なんて――)


 できるハズがない、と。


 アナグマはそう思っていた。


「………………」


 難しい顔をしている彼を、ネロは一瞥した。


「調査団しかない、って顔だね」


 しばらくしてアナグマは頷いた。


「どうしても地上の果てまで行きたいのかい?」


「夢だったからな。父さんと一緒に――」


「でも親父さんはもう……いないじゃないか。それでも?」


「父さんの分までだ」


 アナグマの声には強い意志が宿っていた。


「そうか――」


 あきらめたような口調でそれだけ言うと、ネロは辺りを見わたした。


 人通りは多い。


 この一帯は繁華街を演出するために、他の地域より照明が強く、道行く人の顔までハッキリ見てとれる。


「ヘンなこと訊いていいかい?」


 ずいぶん長いこと黙っていた彼は、何かを決意したような顔でアナグマを見た。


「もしボクも入隊したいと言ったら、カイロウさんは認めてくれると思う?」

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