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場違いな立地

 この世界に点在する迷宮(ダンジョン)の中でも、未だ攻略者のいない上級ダンジョン『アルカナ』。

 多くの富と、多くの名誉と、多くの死と謎を内包し、名声とスリルと金を求める人々が挑戦する其処に、この日トップランカーであるA級パーティー『約束の剣』は、ギルドの最高記録を更新する95階層に辿り着いた。

 階層毎に様相が変わり、階層そのものが過酷な環境であることもあるダンジョンは、階を進めるごとに装備を変える必要のある過酷な地であるが、時として地上では拝めぬ風光明媚な幻想なる土地を形作る階層も点在する。それは神のみぞ知る地。


「ここはまた・・・ボーナスステージかなんかか?」


 赤髪の大男、炎の大剣使いガインが、目の前に広がる景色を眺めて口笛を吹く。


「美しい・・・まるで桃源郷のようね」


 銀髪ウェーブの美女、回復術師のローズは感嘆の溜息を吐いて遠くまで続く山々を見渡す。


「油断するな。生息している魔物はそんな緩いものではないようだぞ」


 黒髪の優男、風の弓使いルークは、緩む空気を引き締めるように警戒を促す。


「でも、ガインたちの言う通り、今までのステージと比べちまうとねぇ。気が抜けるったらありゃしないよ」


 藍色の前髪を掻き上げ、双剣の暗殺者(アサシン)ナディアがどこか気の抜けた声で肩を竦める。


「まぁ、過ごし易いステージなら大歓迎だ。かと言って、ルークの言うようにAランクオーバーの魔物ばかりだからね。気を引き締めて行こうか」


 金髪の美丈夫、魔導剣士ウィリアムが不敵に笑って剣を構えると、空からの襲来を告げる魔物の鳴き声が響き渡った。

 そうして始まった95層攻略6日目、死闘を繰り広げる一行の目の前に、それは現れた。

 初めにそれを見つけたのは、斥候役を勤めるナディアだった。


「ありゃ・・・なんだい?」


 見晴らしの良さそうな高台に位置するそれは、一種異様な存在感を放ちながらも、景色としては何故か馴染んでいた。

 目を擦り。目頭を揉んで、ステータスで幻覚に陥っていないことを確認して、再度それを観測すると、即座に踵を返してメンバーの元へ報告に走った。


「嘘言ってんなよ」

「見間違いではないのか?」

「状態異常・・・ではないようね」

「それが本当なら、とても興味深いね」


 三者三様の反応ながら、皆一様に信じていない返答に、ナディアはムッとしながらも、自分自身で自信が持てない確認物体に返せる言葉がなかった。


「アタイだって、信じらんないからこうして速攻で戻ってきたんだろ。でもありゃ、どう見ても・・・。兎に角、調べる必要はあるよ。どうもあそこは、この階のセーフティーエリアっぽいんだよ」

「マジか?!やったな。本気でこの階は当たりだな」


 その知らせに喜ぶガインに、頷く一同。

 中層階まではよくあるセーフティーエリアは、魔物除けの結界が張ってある、攻略者たちの安息地だ。そこを拠点に階層攻略をするのがセオリー。

 中層階を超えての出現はここまで無かっただけに、安全に過ごせる拠点を設置するためにも、未だ信じられない情報の真偽を確かめるためにも、ウィリアムたちは(くだん)の場所へと移動を開始した。


「ここが・・・」

「マジか・・・」

「不思議な作りね。王都でも見たことがないわ」

「ちょっと待て。人の気配まであるぞ」

「ホントに人なのかねぇ。このステージの初到達者は、アタイらの筈だ。先行ランカーが居るなんて聞いちゃいないよ」


 ダンジョン深層、前人未踏の魔物の巣窟である筈の其処に佇むのは、長閑な雰囲気の人工建築。

 その扉には、謎の文字で看板プレートらしきものがある。


「どうする?」


 慎重派のルークの問いに、ウィリアムは肩を竦めて気楽に返した。


「行ってみるしかないだろうね。何かの店のようだし」

「罠にしては、人間臭いねぇ」

「先行はナディアと俺が行こう。あの中で大剣は不向きだ。ガイン、後ろを頼んだ」

「分かった」

「了解」

「任せろ」

「アイヨ」


 其々小回りの効くナイフや小刀に持ち替え、気配を探りながら建物へと近付いて行った。

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