7 光が見えてきた
女神のミスでアストリア世界からヤマト世界に飛ばされた私ことサラ。
それでも冒険者ギルドのギルドカードから、可愛いハルナに送金してやれると思ったら、アストリアのカードはヤマト世界では使用不可能。
デカい力もらって浮かれて、そんな当たり前のこと気付いてなかった。
当面の金もねえ。Gランクで新規登録して、ヤマト世界のギルドカードを手に入れた。
コカトリスを無限収納から出した。換金せねば、当面の活動資金もない。
「え………サラ様、このコカトリスはどこからお出しに?」
「え……あ……」
アストリアでは魔道収納指輪を高位冒険者が持っていた。5メートル四方~50メートル四方サイズで、お値段は800万ゴールドから。
高価でも使う人はそこそこいたから、こっちにもあるかと勘違いしてた。
あとで色々とアリアに確認せねば。
注目を浴びたあと、480万ゴールドは手に入った。
他の冒険者が売ってたオーク、ボアの買い取り金額がアストリアの相場に近かった。だけどコカトリスの値段は、やけに高かった。
この国では、上級ダンジョンの素材はレアものだそうだ。なぜかは、後から検証しよっか。
だけど落ち込むぜ。
とりあえず、アリアと食事の約束だ。ギルドの飲食スペースに座った。
またもヤマト世界のギルドカードを確認しても、残金は480万ゴールド。シスターマリアに送金されていない。
「はあ~」
「どうしたのサラ。やっぱり私なんかが一緒で迷惑でしょう」
「いやいや、すまんアリア。ため息ついたのは、別の心配ごとだ。一緒にごはん食ってくれ。この通り」
そういや、神器スマホを持っているんだった。送金に関して、何かいい方法はねえのかよ。
「ええっ」
スマホの画面を見て声が出た。
「配信」って形で神器スマホがアストリア世界と繋がってる。
で、スマホを取り出して、目の玉、飛び出そうだ。
◇◇「聖女サラチャンネル」◇◇
◇登録者数32万◇
「なんと、登録当日に32万!」
同時接続8万
「同時接続。リアルタイムで映したまんまだった。馬鹿みたく伸びてる。数が上がる~」
そういえば、勇者パーティーの活動配信は、アストリアの世界中で期待されてるんだった。
スマホの画面から光が出て、空中に21インチの立体映像。画面の右側にはコメント欄。
「サラ、それ何。なんで小さな私がいるんですか?」
私にも分からん。とりあえず映像を見てる。
はっきり言って………
アリアがバズっておるではないか。
粗末な服着て、もじもじしてるアリア。「ドロン」のカメラが激写しまくり。
コメント欄がガンガン流れる。
相手が文字を打ち込んでも、音声入力しても、コメント欄に即時反映のようだ。
アリアとパスを繋ぐかと、神器スマホから問い合わせがきた。
もちろん『イエス』
『聖女が違う世界に遣わされたって女神ステアの神託は本当なのかよ』
『www』
『聖女は、普通のアストリア顔だぞ』
『残念』
『画面に映ってる神聖美の権化のような黒髪美人は誰』
『黒髪でもけた違い。まるで大聖堂に描いてある「月の遣い」だよ』
『こんな美人、アストリアにはいない。聖女が派遣されたヤマトってやっぱり異世界なんだ』
『黒髪の人、名前を教えて』
『なんかしゃべって』
コメント欄が滝のように流れる。
「あ、あのサラ、これは何の魔道具ですか。なぜ、頭の中に言葉が入ってくるのですか?」
なるほど、私が許可してパスを繋いだ人間にはコメント欄の文字が頭に入るのか。
フィルター機能もある。アリア向けた意見だけ、アリアに届くように、ポチッと。
設定終了、よし。
「あのサラ、見たことがない文字が流れているのに、内容が分かります」
「その機械、一応は神器だぞ。頭に直接入ってきてるみたいだな。言葉も同時翻訳してるな」
「じ、神器? 私、どうすればいいんでしょう」
そうこうしているうちに、「スパチャ」が投げ込まれ始めた。
アリアの粗末な格好を見て、何か感じた人がいるようだ。
『少ないけど、これで何か食べて』
『冒険者かな。宿屋に泊まるたしにして』
『聖女、ネコババすんなよ』
「え、え、え。あ、あのヤマトにない魔道具でよく分からないですが、応援してくれる方、ありがとうございます」
『名前は』
「ア、アリアです」
『アリアちゃん、冒険頑張って』
「ありがとうごさいます。とってもうれしいです」
とりあえず「カット」。配信止めた。
すると◇支払い10日後。8万ゴールド。振込先 冒険者ギルドレトロ支部 冒険者サラ・ギルドカード◇
「お、おおお!」
振り込み先がアストリア世界の冒険者ギルドカード!
光が見えてきた。




