49 ドワーフは両方の世界で自由種属
『勇者5』のフクシマ編と同じくドワーフのノムコがパーティーに加わった。
出会った次の日にはオイワキ上級ダンジョンに潜り始めた。
ノムコがオイワキダンジョンの素材を加工するため、フクシマエリアを収めるコオリヤマ伯爵の客人になってる。
この部分だけ、リアルと勇者5のストーリーで一緒。
けれどここは、ヒト族至上主義のフクシマエリア。勇者5の設定のように、鍛冶修行の末にフクシマにたどり着いた訳じゃねえ。
リアルは胸くそ悪い理由だ。自分が生まれた村で頭角を表した。なのに鍛冶の師匠に妬まれ、ぶん殴った。
居場所をなくした。
鍛冶職人が欲しいフクシマ領の話を聞き、フクシマの酒に釣られた10人ほどの同族と一緒にノムコも移住した。
ノムコはフクシマでは伯爵家の客人という名目だけど、住居も保護区域という名の隔離地区。
行動制限の方は、酒飲んで暴れた日からないに等しいそうだ。
ドワーフ族か? やつらには異種族差別の意識は少ない。
ヤマト世界のドワーフもアストリア世界と同じく、酒、鍛冶素材、工房を提供してくれれば何処にでも住む。
アストリアにもドワーフ国家ってないもんな。
◆◆◆
ダンジョンは初日に15階まで一気に潜った。
足が遅いノムコは何度か私が抱えた。
オイワキ上級ダンジョン。全50階。魔物のレベル帯は35~80。
魔物は2匹セットが基本。
沼地や草原のフィールド型。爬虫類型の魔物ばかり。牙、革、爪が武器・防具の素材になるから、加工できるノムコらが珍重されるんだと。
「おおお!シロウさん、強くなってねえ?」
「はい。サラ殿、アリア殿のお陰です」
「ほほ~。確かにアリアさんはアタイより強いもんな。もちろんサラさんもだよ」
「ノムコ殿には、サラ殿の強さまで分かりますか」
「分かるよ、雰囲気がある。収納指輪に高レベルの素材も持ってそうだもんな」
「ファイアオーガの素材があるぜ」
「ふふ。上位ミノタウロスの角もたくさんあります」
「なに、地上に帰ったら見せてくれ!」
ハンマーをストーンアリゲータに振り下ろしたあと、ノムコが目を輝かせている。
・・けどな、なんというか配信が盛り上がり切らんのだよ。
厳密にいえば反響もあるし、スパチャも増えている。けれど黒髪3人になったのに、アリアとシロウの時のような視聴者の熱気がない。
サイドストーリーもない。この黒髪ノムコではなく、勇者7のウクライナ系ノムコに需要がないようだ。
配信で注目されるのってホントは難しいって聞いたもんな。
アストリアの視聴者も、ノムコも悪くない。
だけど私は、なんだかノムコに申し訳ない気持ちが沸いてるんだよな。
スパチャもシロウに比べたら少ないってだけ。以前の貧乏な私からしたら、過剰なくらいノムコに投げ込まれてる。
いや、そこの感謝は忘れねえって。
何度も言うけど、7歳で孤児になった私は人の善意に助けられて大人になったんだぞ。
ここのダンジョンをクリアすればシロウは目標のレベル75は達成できる。
だから、ノムコも最低65にしてやる。本人にはミスリル鍛冶に必要なレベル50を頼まれてるけど、15アップはサービスだ。
28階。スッポタートルが2匹現れた。
「うりゃああ!」
げしっ、とノムコがスッポタートルの頭にハンマーを振り下ろした。
この階層の魔物はレベル56。ヤマト世界の人間から見ると高いけど、私、アリア、シロウの3人は、すでにここではレベルが上がらない。
なので3人は魔物の牽制係。ノムコに積極的にトドメを刺させている。
無限収納で素材も丸ごと持って帰れる。ノムコに獲物は4等分に分けると言うと、かなり遠慮された。
ヤマト世界の常識なら、素材は100パーセント私達のモン。
レベルが上げにくいヤマト世界。レベル50を超えて、それ以上のパワーレベリングは請け負える人間がいない。
何より下層への転移装置を開けられるのがデカいそうだ。
ガンガン進んで、15日後にはダンジョンボスがいる50階に到達した。
ボスは甲羅が直径4メートルのフライングタートル、レベル80。
HP、攻撃力が960。防御力は1120。
そしてボスの左右にロックリザード、ラコスアリゲータ。共にレベル75。
すでにアリアがレベル69、シロウは74、ノムコも64まで上がっている。
アリアにはシロウ、ノムコのレベリングが必要と言ってある。そしたらサポート中心に動いてくれた。
なんと私は、レベル66のまんま。勇者アリア、正統な勇者候補2人がいると、出番ゼロ。
自分より高いレベルのやつに回復魔法、支援魔法をかけても経験値は入る。けど、3人が絶妙な連携してて、怪我も少ない。
アリアのヒールだけで事足りてしまったぞ。
私が支援職らしく3人に「フレンドオーラ」を1回かけた。以上。
そして視聴者の希望通りに、1対1の戦い。
15分後。
「斬鉄」
シロウはダンジョンボスの首を両断。
「ビリバリ!」
アリアは麻痺させたラコステアリゲータの目からナイフを突き入れた。
「重力倍化」
ノムコは愛用のハンマーを重くして、ロックリザードに叩き込んだ。
コメント欄
『やっぱりシロウ様、素敵』
『流れる髪がいいわ!』
『斬鉄、正面から生で見たい』
死ぬぞ?
アリア、ノムコにも称賛だらけ。アリアはレベルが72、ノムコは69、シロウは77まで上がった。
3人でグータッチしてるとこ、ドロンが映してウケた。
そして画面の隅には私も映ってた。自分が倒していないくせに、3匹の魔物を無限収納に回収中。
いや、泥棒って書き込むなや。




