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名前の読み方が同じだから聖女として間違い召喚されました。勇者活動より弟妹の食費稼ぎを優先します  作者: #とみっしぇる


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36 あるじ様、指先が冷たい女は情に厚いんだよ

サラは、トコロザワダンジョンの最下層で第2のオーブを割った。


250キロ離れたオオミヤコロシアムで戦うアリアに新たな力を渡すため、賭けに出た。


◇◇アリア◇◇10分前◇


私は今、オオミヤコロシアムでサラマンダーと戦っている。


サラには転移の罠にはまったミリーを追ってもらった。レベル70ケルベロスが相手でも、サラなら倒せる。


問題はこっちだ。


サラがどこに飛ばされたか分からない。けれどケルベロスを倒して最速で帰ってきてくれると信じてる。


それにドロン子機、神器スマホを通じて、アストリアのみんながアドバイスをくれる。


それを生かして、ヒット&アウェイを続けてた。


電気魔法ビリバリから、サラマンダーへの攻撃は4回やった。


ダメージは小さい。ハーフエルフ特有の攻撃力のなさが響いてる。


救助対象のエルフふたりも、私の力でどうにかなると思っていない。


慣れていても、あの目を向けられると悲しい。


悲しいけど、ハーフエルフでも頑張ってきたからサラと出会えた。


異世界アストリアで応援してくれる人と繋がりを持たせてくれた。


私に勇気をくれる。


しばらく戦った。決定打がない上に、インキュバスのラリホーが私を笑った。


「助っ人のハーフエルフさん、健闘してますね。戦い方のコンセプトは、そうだな、時間稼ぎですか」


「何とでも言って、きっとサラが帰ってくる」


「おや、残念ですね」


嫌な予感がした。


「私は臆病なのです。侯爵家長女とお仲間が飛ばされた先は、250キロ離れた上級ダンジョンの最下層ですよ」


サラの強さに期待していたマリーの顔が歪んだ。


だけど、私は屈しない。逆に腹が決まった。


サラから貰った力で一気に勝負をかける。


「サラ、私に勇気を!」


エルフふたりとマリーに、ラリホー達3人を牽制してもらっている。


サラマンダーにビリバリの魔法を唱えて、背中に乗ってミスリルナイフ攻撃まで一緒。これが5回目。


ほんの5センチ円形だけど、やっと炎に守られた剛毛が剥がれた。


ナイフを収納して、弱点の氷属性で攻める。


「アイスバレット×20」


「キュエエエエ!」


効いてる。


けど・・


痛みのせいで、サラマンダーは予定より早く感電状態から抜け出した。


振られたサラマンダーの尻尾が迫ってくる。


バシッ。私もビリバリを唱えたけれど相討ち。炎を纏った、ムチのような尻尾が頭に強く当たった。


私は宙を舞っている。


受け身を取らなきゃ。けど、目の前がぐわんぐわんと回る。


アストリアのみんなが応援してくれる。だけど身体が動かない。



その時だ。『おやおや、ギリギリだったねえ』。頭の中に呑気な声が響いてきた。


『アリアってのはお前さんだね』


ふわっとした、雪のクッションに空中で受け止められた。


「あなたは誰? そしてこの声はどこから・・」


『使徒の願いを聞いてやって来たさ。これを受け取りな』


最初にサラからオーブの力を貰ったときのように、私の胸に透明で青色の奔流が入ってきた。


『あたしの名前だったね? もう分かっただろ。呼んでごらん。手助けしたげる」


サラだ。きっとサラが新たな力をくれたんだ。


「召喚、オユキサン・・」


『あいよ』


私の目の前に氷の粒がキラキラと舞って、その中から人影が現れた。


ブルーの髪をしたサラに似た女性が立っている。白いキモノという装束を身に着けている。


背丈は3メートルもある。


『頬が焦げてるよ』

オユキサンは、指先を私の左頬に付けた。


冷たくて気持ちがいい。


『あるじ様、覚えときな。指先が冷たい女は情に厚いんだよ』


感電から復活したサラマンダーがこちらを向いた。火を吐くため、思い切り空気を吸い込んだ。


『やらせないよ』


なんと、オユキサンはサラマンダーの頭をつかんで持ち上げた。


『火トカゲごときが。あたしのあるじ様に、やってくれたね』


瞬間、鬼の形相になったオユキサンは口から冷気を吐いた。


『私を裏切ったアイツみたいに、凍っておしまい!』


ぞくっとした。私情が絡んでる?


びゅうううと冷気がコロシアムを包み込む。サラマンダーは氷の彫刻と化していた。


観客は凍ってないけど、コロシアムの観客席から外に出る通路が氷で塞がれたように見える。


私達がサラマンダーの餌食になるのを期待していた観客の声が止まった。


味方のエルフふたりも口が開いている。

「精霊か?」

「・・オユキサンなんて聞いたことない。それに普通に会話できる精霊なんて・・」


この魔法は、召喚魔法というようだ。私は何を貰ったんだろうか。


自然の力を借りる精霊魔法と似て非なるもの。詠唱も必要としない。何かを凍らせるとき、幾らかの魔力を持っていかれた程度。


オユキサンがふふふと笑った。


『ここには、あるじ様も入れて7人いるけど、凍らかすのは3人。それで間違いなかったかね?』


言われて気付いた。魔族のラリホーと仲間2人の膝から下が凍っていた。


命令もお願いもしていない。ただ、3人が敵でエルフ2人とマリーが仲間だと思ってただけ。


『弱ったサラマンダーだったのに、あたしが出しゃばって凍らせちまったさ。あるじ様は、あの3人をお倒しよ』


私はナイフを持ち直した。

「やあああああ!」

「お前こそが切り札だったのかあああ!」


ラリホー達に攻撃した。これで真の敵を倒した。


『さ、あるじ様、もうひと頑張りだよ』


アストリア視聴者

『すげえ、オユキサン』

『勇者5ではネタキャラで、日本人作者の情念を注いだとか聞いたぞ』

『ゲーム中では3ターン連続の範囲魔法が武器だったんだけどな』

『リアルに実装すると自走する氷の精霊みたいだ』

『有能すぎ』


『とりあえずアリアちゃんが無事で良かった』

『アリアちゃん、大勝利おめでとー』


「あ、ありがとうごさいます」



大逆転だ。私も聞いたことがない、未知の力をもらった。


サラのお陰だ。


私の使徒様、ありがとう。

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