3 聖女の資質
成り行きから勇者パーティーの聖女になる私。
女神の間違いが原因だ。選ばれた使徒ではない。
そんでも報酬が破格すぎ。職業聖女、無限収納、鑑定なんて、ひとつだけで大金持ちになれる。
こんなラッキーがあるとは思わんかった。
「ほらサラよ。左手首にブレスレットが付いてるだろ」
「高そうなのが、いつのまにか着いてるな」
「それも神器じゃ。とりあえず「アクション」と言え」
アクションと言う。または、私の心拍数が上がる。
すると、内臓小型カメラ付きの「ドロン」が起動。見た目は一つ目のコウモリ魔獣。
周囲を飛び始めて、アストリアに私の行動が配信スタートだとよ。
「終わったら?」
「カットと言え」
カメラを切り忘れたら、裸で水浴びしてっとこでも「ドロン」から配信される。
恐ろしい仕様だ。
「げ、お色気タイムありかよ」
私の醜態が世界中にさらされる危険はある。
けど破格のスキルがもらえるなら、乳首くらい見せてやる。
もうひとつ、「神器スマホ」も渡された。
「ドロン」からの映像も確認でき、配信したやつも映せる。通信機能もある。
「ギルドカードと連動させたから、預金の残高も分かるぞ」
「へえ~」
「残金47000ゴールドか、少ないな。ぷぷっ」
「余計なお世話だよ」
「怒るな。これから職業聖女を使って稼げる。召喚者だから無償奉仕せよとは言わん。配信の収益も入るだろうし、残高が馬鹿みたく増えるであろう」
まじか。けれど、金に関しては女神さんに頼むべきことがある。
「あの、ひとつお願いがある。いや、お願いします」
「申してみい」
「お金は、私を育ててくれたシスターマリア、慕ってくれるハルナにも入るようにしてくれ」
力を得た。金が稼げる目処がついた。
だったらまず、恩返しがしてえ。
あの2人なら、間違いなく金を有効に活用してくれる。
孤児院のチビどもに、腹いっぱいに食べさせてやれる。
教会の雨漏りも直せる。
清潔な服も着せてやれる。2年前のメリイみたく、風邪くらいで死ぬ子もいなくなる。
危険もある森で薬草採取やキノコ狩りをせず、子供らしく遊ばせてやれる。
大切なハルナを念願の魔道技術学校に行かせてやれる。
あと数ヶ月で孤児院出なきゃならないハルナに、向いてない冒険者をやらせる必要もなくなる。
他の子にも教育を受けさせられる。
入金して即座に金が渡るようにしてもらうのがいい。
力を持てば、きっと思ってもみなかった危険もある。私に万が一があっても、最低の恩返しはできるだろうよ。
シスターなら、街の人が困っていたら、うまくお金を使ってくれる。
「はっ。心の声が駄々漏れだね」
「ああ、私は身寄りがなくなっても、人に助けられたから生きてこれたんだ。恩だけは忘れねえ」
「口は悪いけど、聖女の資質ありか。善意だから引き受けよう」
「おっしゃ」
「サラのギルドカードに入った素材売買と配信収益の半分が、2人の商業ギルドカードに振り分けられる。シスターマリアとハルナに神託として連絡しとくよ」
「ありがとうございます。神様」
「女神じゃ」
終わりみてえだな。
「聖女サラよ」
「はいな」
「勇者らと合流して、楽しく生きよ」
にかっ。いい笑顔だ。基本は「善」だ。アホっぽいとこも多いが、感謝しよう。
転移魔法陣と思われるものが、足元に浮かんだ。
レトロの街では青い魔法陣に乗せられた。今度は赤い。
いや、むしろ赤黒い。
「じゃあ女神様、貴重な職業を感謝………」
女神が汗をだらだらと流してるぞ。
「あ、あ、あの、この魔法陣、まさか」
「聖女サラよ。いきなりだが、お主には試練を与える! 魔法陣を間違えた訳ではないぞ」
目が泳ぎすぎ。
「神族に間違いはないのだーー!」
再び右手を伸ばして、マントをばさーーー。
「嘘だろ」手は透けてる。
◆◆
視界が反転して、送られた先は…
直径50メートルの丸い部屋。眼前には3・5メートルのコカトリス。
「なんで強そうな魔物が目の前にいるんだよ!」
「コケー」
「女神のやつ、転送先を間違ったろ……」
レトロに帰るため、難局を乗りきるしかない。




