2 女神が間違いを認めません
こんばんはサラです。
じゃない!
落ち着いていられるか。
女神が日本人と間違えて、私を召喚の間に連行しやがった。
私は銀髪で青い目。ありふれたエルフ顔で、黒髪美形じゃない。モブ顔だ。
「日本人と人違いしただろ」
「…間違っておらぬ」
「私はアストリア人。神様なら、神眼で分かるよね」
「神族に間違いはないのだー!」
右手伸ばして、マントばさーって。使いどころも間違ってる。
「いやいやいや」
「そ……」
「間違いだって」
「そ、そ、そ」
「そ、そ、そ、?」
「そなたには、聖女の力と無限収納スキル、鑑定スキル、神器スマホを与えよう」
げ、うやむやにする気だ。喋りが倍速だ。
そんでエネルギーの玉を私の胸に押し付けてきた!
しゅわわっ。あちい!
「人の話を聞け。胸から煙が上がってるぞ」
「ぐ、現地人の小さな魂の器では何も入らぬ。魔改造だな」
い、いや、指先に集まった光が細いナイフみたくなった。やべえ。
「魂の器を広げるしかない。秘技、女神レーザー!」
じゅっ。「ぎええ!無茶すんな!」
・・・・
「はっ」気絶してた。
「うわ、今度は魂の器とスキル回路を広げすぎた。AAAランクの聖女でも器がガバガバ」
遊んでる。絶対に遊んでやがる。
「聖女の魔法と生活魔法では攻撃が地味だな…。せっかくの配信の駒。新しく作った装備スキルでもサービスするか。胸に突っ込んじゃえ」
ずぶぶぶ。
「あとは配信に必要な言語のラーニング機能だな」
なんか、レアスキル詰め込んでる。
「あのさ……」
「起きたかな」
「ちょいと、お話をしませんか?」
「ん?意外と動じないやつだの」
「そりゃ、パニくってるって」
「そうか。何というか神経が太いな、お主」
「ところで、なんで1000年前から、この世界に勇者がいるの?」
「ほほほ。よくぞ聞いてくれた」
結論から言うと、こいつ適当すぎ。
日本の「剣と魔法のロールプレイングゲーム」大好き。
最近は、アストリアで大ヒットしてる『勇者と5つのオーブ』に大はまり。
何周も周回プレイしてるそうだ。
自分が管理する幾つかの世界に、色んなもん召喚してる。
アストリアは、勇者パーティー。
今のマイブームは、別の世界でアストリアの人気RPGを再現することとか。
リアル世界で遊び過ぎ。
アストリア最初の勇者は、平成2年の日本から連れてきた。
その時空と、この世界の1000年前が、たまたま繋がった。その程度の理由。
ロールプレイングはRPGだな。アストリアでは、18年前から大人気。
「リアルRPGは面白いんだよ。アストリア世界は生き残った日本人により、機械技術が発展したりと、続きもあるしの」
「ああ、そっちが副産物なのね」
日本人が貢献して開発されたスマホ、テレビ。
「今回からアストリア世界の人間に、勇者パーティーの活躍を見せてやろうと思うてな」
「私も、それに映るのかよ」
「もちろんじゃ」
「ええっと私、冒険者だけど、スキルはFランクだぜ」
戦闘はゴブリン一匹がギリ。
顔も、ごく平凡なエルフ顔。
「映える要素ねえよ!」
「おっほっほ。お主に渡した聖女はAAA、トリプルAランクの職業だ。アストリア人の最高職、Aランクの龍騎士さえ越えておる」
「おおっ?」
プラスしてサービスのスキルまでくれた。
聖女は魔法職だけど、普通の職業とは一線を画す。
まず魔法を無詠唱で使える。
基礎ステータスは現時点で10倍。ステータスの上昇はレベルアップごとにHP、パワー、スピードまで聖騎士並みに上がる。魔力は大魔道師以上。
使える魔法は、聖魔法と生活魔法だ。レベル上がればホーリーレーザーとジャッジメントの攻撃魔法も覚える。
「まじ?」
「まじ」
「私は何をすりゃいいんでしょ~か」
「戦いを自動的に配信する道具を持たせた。何か映せ」
従いますとも。
「お主らなら、鍛えていけば2年間ほどで悪魔デモーン軍を撃破できる。その後は解放だ」
「解放されるときスキルは?」
「お主のものじゃ。無限収納もなんもかんも、そのままだ」
トリプルAの職業が私のもの?
「やる、いや、やります。お願いです、やらせてください!」
「ふふ。どっしよっかな~」
「お願いです。神様、仏様」
「女神じゃ。まあ、呼んだ手前、放り出すことはせんよ。今回は配信がある。左手首に羽の形の腕輪があるだろ」
私は、勇者パーティーに合流して、戦いを配信することが使命のようだ。
取って付けた感が満載だけどな。