17 マクハリの戦い①
異世界のヤマトでパートナーになったアリアの大切な人、孤児院のシスターが侵攻してきた魔王軍に斬られてた。
私はパワー10倍増の魔装変身をして、斬った魔族に膝蹴りした。
孤児院前の広場で魔族は首が変な方を向いて、大きく舞った。
シスターはギリギリで生きてる。背中に手を当てて唱えた。
「ハイヒール」
ステータス10倍増のハイヒール。シスターは光に包まれて顔を上げた。効果も段違いのようだ。
しかし安心していられない。孤児院のチビども8人が魔族10人に剣を突きつけられている。
アリア、ベン、ハンナは武器を構えたが、子供達が人質だ。
「武器を捨てろ!てめえら・・」
言い終わらせない。
鑑定したら、こいつらレベル35か36。この街の人間やアリアよりステータスは上だけど、私の敵ではない。
私は奴らの警告を無視して動いた。そしてステータス任せの急接近。
子供の首筋に槍を向けてた奴の右手をひねり、武器を取り上げた。そのまんま誰もいない場所に高く放り投げた。
その作業を10回繰り返した。
誰も何をされたかわからないまんま、地上に叩きつけられた。
うめく魔族の足を折って、アリア、ベン、ハンナにトドメを刺させた。
意外だったのは3人が躊躇しなかったこと。
アストリア人とは違った。日本人召喚者の影響で文明が進み、倫理観も穏やかになったアストリアは殺人を忌諱する傾向。
ここは冒険者ギルドも最低限のルールしかないヤマト世界。殺しに来た者には死を持って償わせるのが鉄則だそうだ。
私は複雑な気分だ。
私は魔族1人を倒し、10人にダメージを負わせた。アリアは2人、ベン、ハンナは4人ずつトドメを刺した。
ベン、ハンナはレベルがレベル22まで上がった。ベンとハンナは経験値を私と半分こでも、レベル14でレベル35~36の敵を倒した。
まさかのパワーレベリング成立だ。
ちなみに配信動画は後日、R25指定となった。
◆
アストリア視聴者のお陰で孤児院の危機は去った。
「顔は分からねえが、警告してくれた視聴者さん、ありがとう」
ドロンに向けて言った。
『まさかとは思ったけど、子供達が無事で良かった』
『良かったよ。勇者5の話を仕入れてくるから、また役立ててくれ』
もう一度、感謝した。
『勇者5』のストーリー展開通りなら、この街の代官が魔族の尖兵隊長に刺される。
それを見た勇者候補が魔族に戦いを挑むそうだ。
今度こそ勇者5のストーリーに関わらない。そう思ったけど・・
「おねーちゃん、魔族、代官さま殺すって言ってた。おねがい、代官さま助けて」
最年少のミルルに頼まれた。
「私、街の方に行きます」
「俺も」
「私も」
アリア、ベン、ハンナが飛び出しそうである。
聞けば、この街の代官・リンカイ男爵に孤児院の人間は恩がある。
近隣で迫害されているヒト族以外の子供をリンカイ男爵だけは孤児院に受け入れることを容認。最低限の支援はしてくれるそうだ。
おいおい、そんな事情なら助けない訳にはいかない。
「分かった。まだ私のこのパワーは使える。早く街の方に行こう」
魔装して10分。変身時間は50分残ってるし、MPも変身1回分が残ってる。
魔族の武器、遺体は無限収納に入れた。ゲットした槍2本をベンとハンナに持たせた。
そして街に行くと、ここにも10人の魔族がいた。
「わっはっは。この街の冒険者も兵士も弱い。あとは代官のリンカイ男爵を殺せばお仕舞いだ!」
足元の石畳には、数人のヒト族男子が転がっている。
「我々だけではない、ジペング各地に後続部隊もやってくる。ヒト族は奴隷にしてやる」
「待ちなさい。そうはさせない!」
アリアが魔族隊長、その手下の前に立ちはだかった。
リアルタイム配信中だ。
『アリアちゃん、カッコいい!』
『両手のナイフと眼がいい』
『頑張れ!』
こっちは本気の命の取り合いだけど、視聴者からワクワク感が伝わってくる。
ただ街の人々の反応は悪い。こんな状況でもアリアにヘイトを向ける奴がいる。
建物に挟まれた通り。アリア、ベン、ハンナと高級装備の魔族10人では分が悪い。
だから私がいる。
1人目の魔族がベンに向かった。ベンには不馴れな槍を構えてさせている。
私は超スピードで魔族の後ろに回り、魔族の右腕、背骨を折って、ベンの方に押した。
外野からは魔族がベンに飛びかかったように見えるように飛ばした。
ザクッと残酷な音とともに、ベンの槍が魔族レベル36の胸に深々と刺さった。




