11 初のダンジョン配信。主役はアリア
私はせっかちだ。そして自覚していた以上に図太かった。
女神の間違いで聖女になった。女神の間違いで、本来のアストリア世界ではなく、ヤマト世界に転送された。
まだ2日目だけど、知り合ったアリアと初級ダンジョンに潜る。
聖女サラチャンネル、配信スタート。
神器ドロンが付いてきて、私の思考通りアリア中心に映していく。
サラチャンネルなのに、私は見切れている。
◆
イナケ初級ダンジョン。
ハーフエルフのアリア、長年の冒険者生活でレベル42。しかし基礎ステータスが低くHP336。普通、多数のスキル持ちならレベル42あればHPは600くらい行く。
男女両方の性を持ち、風魔法、精霊魔法、身体強化と色々と使えても、本来の半分の威力。
レベルアップのステータス上昇も、男か女かはっきりしてるエルフの半分なのだ。
けど、何十年も冒険者をしてる。研鑽してきた技がある。
華麗に舞ってるアリアすげえよ。
ゴブリンが現れた。
「任せて下さい」
素早くゴブリンに接近してナイフで仕留めた。
「ほほう、見惚れる動きだね」
コメント欄
『アリアちゃんの流れる黒髪が綺麗』
『着地が素敵』
『そのあと見える瞳、もっと見てたい』
称賛の嵐だ。
私は聖女でレベル45だけど能力は女神印。攻撃力のステータスでも戦闘職のレベル100並み。目も良くなってるから、アリアの動きがよく見える。
ちなみに戦闘シーンの血飛沫は、リアルタイムでは見える。
録画配信のときは、視聴者が無血編集も選べる。女神の神器パワーだ。
ゴブリンではアリアの相手にならない。何度も繰り返すと視聴者を飽きさせてしまう。
ダンジョンクリアを急ごう。
時間短縮のため、アリアを抱えて一気に10階まで走った。
アリアに密着された私にブーイング。
体重60キロのアリアでも、今の私なら手荷物程度。スピードも恐らく、50キロくらいでマラソンできる。
一辺5キロの階層ひとつを走るのも余裕。
「ヒール」
記念すべき聖女の魔法は、自分とアリアの疲労を取るのに使った。
私は魔力が高いから、ヒールでも「深さ5センチ、長さ30センチの裂傷回復」「疲労小回復」と普通より効果強め。
消費MPは15。
この世界のダンジョンも10階層ごとにフロアボス。そして地上への転移装着もある。
基本、下一桁が3、5、8の階層にセーフティゾーン。
10階ボスフロア。ホフゴブリンレベル15。スライム、ゴブリン、コボルドが各2匹の構成。
「雑魚は引き受ける。アリアはボス頼んだ」
「了解です」
やっと出番。ここまでは売ると金になる魔石を拾うばかりだった。
先頭を走っていたコボルドの頭をビンタしたが…
パン、と軽快な音ともにコボルドの頭が弾けた。
残る魔物は動きが止まった。体をつかんで投げた。
軽く投げたのに壁に激突して、みんなグシャグシャだ。
配信見てる視聴者さんから、『汚ねえ』のコメントいただきました。
アリアの方を見ると、スパンとホフゴブリンの首を切っていた。立派な技術だ。
元の非力さを補うため、回転と足さばきがすげえ。
『華麗だねえ』
『ゴブリンが斬られたの気付いてないよ』
マネできない。武器屋で色々と触ったけど、刃物が手に馴染まない。なんとなく素手か、ナックルに着ける打撃武器しか使えない気がする。
『聖女の戦い方はグロいから、映さんでくれ。あと、そこに立たれるとアリアちゃんが映らん』
うるせえ、ドロンはアリア映してるだろ・・
「ああ、カメラの前を横切るなってことだな・・」
一応は、私の聖女サラチャンネルなのに・・
「どうしたのサラ」
「いや、そろそろ休憩すっか」
昼メシは、干しオークと水、そしてパン。
『アリアちゃん、食べてる姿も可愛い』
『聖女もウマそうに食べるねぇ』
「おう、元が貧乏だからな」
『まあ、頑張って』
慰められた。
◆◆
次の日、初級ダンジョンをクリアした。
時間をかけたのは私の訓練のため。獲物の色々なものが飛び散らないように手加減を覚えるためだ。
ダンジョンボスは、もちろんアリアが担当。私は画面の隅で手下のゴブリンやコボルドを相手にしてた。
コメント欄
『やったあアリアちゃん』
『見応えあった』
『ブラボー!』
『単独制覇おめでとー』
私もいるから、単独ではない。とは言い出せない。
だってアリア目当ての視聴者、登録者が増えてる。
◇聖女サラチャンネル◇
登録者数39万人
スパチャ累計24万ゴールド
これなら、私の『アストリアのギルドカード』にお金が入る。ハルナやシスターマリアに入金される。
アリアのお陰で何とかなりそうだ。




