表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/14

1 名前が偶然に『サラ』でした

1時間前の私に、自分の未来を聞くとする。


何パターンでも答えていい。


それでも、これは答えの中にないと思うぞ。


あ、私、口は悪いけど女な。


名前はサラ。非力って称号持ちの冒険者。


スキルは身体強化レベル1。


A~Fとあるスキルランクの立派なF。


分かってて聞くな。Fが一番下だよ。


金は欲しいけど、稼げる魔物の討伐に向いたスキルがないんだよな。


子供の頃から、やってきたのは薬草採取、蜂蜜集めの二本立て。


なんとか生活できてるよ。


孤児18歳。


7歳のとき災害で両親と弟亡くした。ひねくれちまったけど、孤児院を出る15歳までレトロの街の人に世話になった。


口は悪いけどな。本当に、すごい感謝しながら生きてる。


レトロの街はのどか。

北に海岸線の港町。


まずまずの発展ぶりで、イベントも50年に一回だけ、世界中が注目するデカイのある。


それが今日。


なんと、女神の神託が降りて「日本」から召喚者がやってくる。


◆◆

「サラ姉ちゃん、遅いよー」

「席取ってあるよ」


「わりいハルナ、チビどもも。お礼に、みんなの飲み物、買ってあるぞ」


「サラ、いつもありがとう。あなたの生活も楽ではないでしょうに」


「気にすんな、シスターマリア」


母親代わりになってくれたシスターマリア38歳。


運悪く孤児になっちまった血が繋がりのない12人の弟妹がいる。


みんなでイベント見に来た。


この世界、ぴったし50年置きに、世界の危機が訪れる。今回は南極の陸地から悪魔が現れた。


デモーンってやつがモンスター引き連れて、知的民族の国を攻めるらしい。


対抗するのは、なんと勇者パーティー。

女神の召喚により、選ばれし4人。


対悪魔軍。


それやれる特別な「職業」は、このアストリア世界の人間に持てない。


だから魂の器がでっけえ、日本人喚ぶ。


大概の日本人、アストリア世界を救ってくれる。まんま、こっちに住み着くのもセット。


日本人、世界の技術発展に貢献。ばんざ~いと。


そんな感じなんで、女神の「神託」降りると、世界中がそわそわ、またそわそわ。


時は夕方。


周りは人、人、人。お祭り気分だ。


1000年間、召喚場所が変わらないから、そこにステージを作ってある。


「いよいよだなシスター」

「みんなが特等席を取ってくれたのよ」


「召喚者が4人も来てくれるんだよね」

「今回の勇者も、神聖な黒髪黒目の美形ばっかりかな」


「今回は女神様の神器を通じて、放映、配信があるんだよね」


今回の召喚は過去と違う。

期待度マックス。


40年前に「魔道テレビ」、30年前に「魔道スマホ」が発売。


「魔道スマホ」の方に勇者の旅が映る。


過去の勇者の冒険って、目の前で見たやつ少ねえ。


見たやつから吟遊詩人が話聞いて、ドラマチックに語ってきた。


つまり、物語の勇者しか知らない。


なんと今回、女神の撮影用神器と魔道技術をコラボ。勇者の活躍が、録画と生配信で見られる。


まだ放送コンテンツが少ないから、誰もが期待してる。。


黒髪、細目の美少年。うっかり生着替えとかな。


一応は硬派で通ってる。期待してんのは内緒にしてくれ。


スマホってまだ、10万ゴールドするんだ。型落ちでも6万。けど売れまくり。


私厳しい。パン1個100ゴールド。エール一杯500ゴールド、焼きウサギ600ゴールド。


このへんで悩む女に10万ゴールド厳しすぎ。


スマホ普及率は50パーセント。ヒト、エルフ、魔族、獣人、ドワーフあたりの知的民族50億の半分だぞ。


普及率は加速中、勢い止まらない。


孤児院の魔道テレビは、寄付してもらった中古16型のみ。

もちろん、みんな感謝してるよ。


してるけど、大きいの買ってやりてえ。


だけど私貧乏。孤児院もたまに赤字。これ現実。



「始まるよ」


現れるのは勇者、聖女、賢者、拳聖の4人。聖女だけ女。残り3人は性別ランダムだ。


もちろん私も美男3人が希望。


歓声が上がった。


ステージに4つ魔法陣が登場。


そして魔法陣、ブルーに強く輝き出した。


けど、何かおかしくね?


ざわっ。


「変だぞ。召喚魔法陣が3つしか光ってねえ。1個、置きっぱだぞ」


「ほんとだ…」


魔法陣見てると、私の頭の中に女の声が響いた。


『あれれ~、紗羅がいない。さら、さら、さらちゃ~ん』


「んん?サラだけど、誰か呼んだか」


『見っけ。サラだよね!』


「だからなんだ!」


「どうしたのサラお姉ちゃん」

「一人で何言ってるの」


私の怒声。ガキども混乱。


すると、いきなし、私の足元が青くピカー。


なんで光ってる。


「まぶしっ!」


「サラ、あなたの足元に!」

「なんだこりゃ、魔法陣かよ」


「サラ姉ちゃん、つかまって!」


私を姉と慕ってくれるハルナ15歳。


手を伸ばしてくる必死な顔も可愛いな。おめえだけは、幸せにしてやりてえ。


「私、大丈夫だぜ」。これ、私の精一杯。


私の手、透けてるけどな。そんな顔すんなハルナ。


しゅるん。



視界、まっ白。


◇◇◇

転移トラップ?

いやいや、あれダンジョン限定だろ。


周りが白い。すごく広い部屋。礼拝堂の3倍はあるな。


……金髪、白い服、マントの美人さんだ。


「ふう、聖女の山村紗羅を喚び忘れたかと思った~」


俗っぽいな。


「私のミスかな。ゼウス様におしおき? うんにゃ。見つけて、捕獲したからセーフだよ。絶対そう」


「……何こいつ」


「3人は勇者、賢者、拳聖に改造して、スキル与えて送り済み」


改造って…


「ほんじゃ、残り一人もやってみるか~」


美人さんだな。けど、頭の上に光の輪っか乗っけてるのにアホっぽい。


不穏なこと口走ってる。うわ、こっち向いた。



「おっほん。日本から喚びし者よ~。アストリアの世界に悪魔がはびこっていま~す」


「ん?」


「我が名は女神ステア。そしてアストリアとは…」


「むむむ?」


「地球とは違う世界に……」


「知ってるよ。最近、悪魔デモーンってやつが悪さしてるんだよな」


「へ?」


「だからさー、レトロの街に日本人勇者が出現。50年置きに世界を救ってくれて、技術の発展に貢献したり」


「はれれ?」


「アストリア世界をどんどん良くしてくれる。これで正解?」


「なぜ知っておる、日本から喚びし者よ」


「いやいや私、見ての通り銀髪」


日本人が「北欧系」って言ってる典型的なアストリア顔。平凡な青い目をしたレトロの住民。


「え?」

「へ?」


「名前は?」

「サラ」


「さら、だよね。山村紗羅で、サラだよね。ね、ね」


「読み方は同じだけど、私は孤児院育ちのサラだな。貴族じゃねえから名字なぞない!」


「本当に?」

「マジ。死んだ家族も、生粋のアストリア人。間違ってますやん」


「……」




どうやら、「さら」違い。


山村紗羅って日本人と間違いやがった。女神さん、私なんか連れてきて、どうすんだよ。


私は、どうすりゃいい。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ