30. 新事実
「駄目でしょ!勝手にどっか行っちゃ!心配したんだからね!」
姿が見えるやいなや駆け寄って、私の無事を確認してのヒスイの第一声である。
ほんの10分ほどのことだったので、ここまで心配させてしまうとは思わなかった。
「たまたますぐに合流できたからよかったようなものの…」
怒られながら、ヒスイの顔を盗み見ると、怒っているというより安堵と心配が入り交じった表情だ。
(心配…)
これまでの経験のせいか、私には人が本当に心配してくれているのかがわかってしまう。
というより、何でもかんでも本心を探ろうとするのが癖になっているのだ。
実際がどうなのかは結局、その人の人となりを知らなければわからないけれど。
だからこそ、ヒスイとレイは本気で心配してくれているのがわかる。2人には申し訳ないことをしてしまった。反省だ。
「ごめんなさい...」
一瞬 間があって、2人の優しい声がした。
「もういいよ。 エマに怪我がなくてよかった。」
「はぐれたことにすぐ気づけなかった俺たちにも非はある。」
そうなんだよね。とヒスイがしょんぼりと相づちを打つ。
そして、ぱん、と一つ手を叩くと一転して明るい声で言った。
「よし、帰ってお昼ごはんにしようか。」
「ジャガイモの荒らした部屋も片付けないとな。」
「はいっ」
「それよりずっと気になってたことがあるんだが」
と、部屋の片付けをしながらレイが口を開いた。
「なあに?」
「…どうしてエマは、あの見通しの悪い森の中ですぐに俺たちを見つけることができたんだ?」
ヒスイは少し考えて、私の方を向いた。
「言われてみると確かに。もしかして魔力探知を使ったの?」
「そうです。」
「だけど僕、まだ魔法を使った方法は教えてないよね?」
「えっと、 ヒスイが、 時々レイの帰りやキョウの帰りに家の扉が開くより前に気づくことがあったので、気になって観察していたんです。そしたら魔力がこう…」
と、自分を中心に人差し指をくるくると 外側に向かって 波紋が広がるように 動かしてみせた。
「で、真似してみたら出来たってことか。」と、レイ。
「はい。」
レイはそれで一先ず納得したらしかったが、今度はヒスイの方が解せないらしかった。
「たしかに何度か使ってた魔法だけど…。まさか使ったことない魔法を見ただけで実際に試して使えるなんて。目視で見えないタイプの魔法でこれなら、もしかしなくても物理的な干渉をする魔法なら見ただけで出来ちゃうかも…」
「俺たちが魔法を使っていない状態であの距離から感知できたというのも驚きだな。」
確かに、魔法を使う前の魔力探知に比べて、もっと微少な魔力も感じ取れていた気がする。
「エマはあれかな。魔力探知が得意なタイプの魔法使いなのかも。」
「 時々いるよな。」
二人がどこか遠い目をしている。
「それって何か 普通と違うんですか」
「ううん。羨ましいよ。僕の学生時代も、やっぱり魔力探知が得意な子の方が、魔法の習得も早かったなあ。卒業してからもすぐに遠隔移動の魔法免許取得してたしね。」
「遠隔移動…」
おそらくキョウがいつも使っているものだろう。
自分もいずれ使えるようになってみたい魔法の一つだった。
「合格率低いらしいな。」
「大体卒業後5年以内を目標にしてる子が多いかなぁ。それでも受からなかったら諦めるのがほとんど。難しい魔法だし、向き不向きも大きいから。」
「免許が必要な魔法があるんですね。」
すっかり世間話の流れになったのでなんとなく相づちを打ったのだが、私の言葉にレイとヒスイの動きがぴたりと止まった。
「そうだよ!!教えておかないと!!」
「まずいな…いや、早い段階で気がついてよかった。」
「見よう見まねで魔法が使えちゃうなら、知らずに無免許使用しちゃう可能性あるよ!」
珍しく二人とも取り乱した様子にむしろこちらが焦る。
「いえ、そんな何でも見よう見まねで出来るわけでは…」
と、言いかけた言葉を二人がすごい剣幕で遮った。
「エマ、午後からは座学にしよう。」
「半日で魔法法律の最低限は叩き込む。」
「は、はい…」
そうしてあわただしく片付けと昼食を終え、午後の眠気と戦いながら座学で1日を終えたのだった。




