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24. 13大の魔女


ヒスイとの実践魔法の授業が始まってから1週間が過ぎた。

もう、1週間だ。


「どうしよう…」


自室に戻るなりベッドに倒れ込むと、エマは盛大なため息を吐いた。


あれ以降、複数の魔法の組み合わせや属性ごとの魔力探知の方法、魔法の種類、魔法に応用の効く様々な理論など、魔法に関する基礎という基礎を徹底的に教えてもらっている。

同時に魔力探知にも慣れてきて、色々な魔法を自分で感じられるのは新鮮だし、知らなかった知識を得るのは楽しい、けれど。


私は、今日まで一度も魔法を発動させることが出来ていない。


毎日何度も挑戦して、その度ヒスイも色々なアプローチで教えてくれているけれど、そよ風一つも起こすことが出来ていないのだ。


「なんなら、吹いた方が早いなぁ…」

ふう、と口を尖らせて長い前髪を吹き上げると一瞬髪が舞い上がって落ちた。

何にも特別なことなんてない。出来ない。私には。


期限まであと2ヶ月をきっているのに、前に進めない自分に苛立ちが募っていた。


キョウはなんと言うだろう。

私を信じてくれた、彼は。


キョウは私が魔法の実践を開始するその数日前から、この家に帰って来ていない。ヒスイやレイが心配している様子はないから、きっとイレギュラーな状況ではないのだと思う。

行き先にも、心当たりがあった。

もしかしたら、私が来るまではもっと頻繁に家を空けていたのかもしれない。




ここに身を寄せてすぐのことだ。


「けして外には出ないようにしてください。しばらく…いえ、私がいいと言うまで。」


キョウは申し訳なさそうにしながらも、いつもより険しい表情でそう告げた。


いわく、キョウがかけている眩ましの術という魔法は、その名の通りこの場所を邪な目的を持つ者の目から隠すものだそうだ。

しかし、これだけでは不十分なのだと彼は言った。


「例えば、何も知らない他者の目、あるいは動物などの目を介してこの場所やあなたの姿を見られてしまえば、その視線からは隠すことができないのです。

……もっとも、そんなことが出来る人間はこの世に一人しかいないのですが。」


「一人だけしか使えない魔法なんてあるんですか?」


「"13大の魔女"の魔法です。」


キョウは、彼にしては珍しくどこか迷いながら話してくれた。


「…有史以降、魔法の歴史は"13大の魔女"とともに語られています。彼らは代替わりこそすれ、いずれも強い力を持ち、人々に様々な魔法を広め、そしてより高度に発展させてきた魔法使い達です。時代によってその人数は異なりますが、最も多い時代で13人。全員が揃ったのは、長い歴史の中でもその一代だけです。そして、その時代をもって13大の魔女は"完成された"、と言われています。」


「完成された…?」


妙な表現だ。13大の魔女とは、代替わりと言っていたことから役職かなにかのことではないのだろうか。

そもそも魔女と魔法使いは何か違うのだろうか。

そんな混乱を読み取ったようにキョウは小さく頷いて再び口を開いた。


「13大の魔女とは、力のある魔法使いが長らく研究し、磨いてきた13種の魔法を継承するそれぞれの魔法使いを指します。13であることにも性別に依らず魔女と呼ばれることにも意味があるのですが、今は詳しい事情は割愛しますね。そして、その13種の魔法が完成されたことにより、"13大の魔女"という存在は定義することが出来るようになったのです。以降は魔法とともに魔女の称号も継承されています。」


「なぜ、魔法はその代以降は発展しなかったんですか?」


「受け継ぐことができないからです。」


キョウは私の問いかけに少し困ったような顔をして答えた。


「魔法を受け継ぐことが出来るのは、…言い換えれば、13大の魔女になれるのは、膨大な魔力と優れた魔法の技術を持っているだけでは不十分です。それらは大前提として、魔法の性質と持っている魔力との親和性、つまり相性がぴったりと合うことが必須条件なのです。しかし、この条件を満たすだけでも一代に13人揃うことがないほど厳しい条件です。」


これまであの男以外、魔法使いが身近にいなかった自分としては、魔法使いに優劣をつけるにしても比較対象がいないのであまりぴんと来ない。

けれどここまで言うのとなると、もはや存在しないのと同等の確率と考えてよいのだろう。


「魔法が更に複雑化すると、魔力量にも技術力にも求められるものが多くなってしまう。そして、魔法の適合者はさらに少なくなっていく。

実際、それ以前にも魔法の発展の過程で複雑化や効率化は行われていましたが、13人の魔女全員が継承を考えるに当たり、その限界値を何代にもわたって見定めるべきという結論に至ったようです。魔法が継承されなければ、いずれその魔法はこの世界から忘れ去られてしまいます。

そうして、13人の魔女はそれぞれの魔法を"完成させた"のです。」


「…だから、完成としたその代だけは13人が揃っていた?」


「そういうことになります。」


13大の魔女、類い稀な強い力と唯一無二の魔法を使う魔法使い。

それはもしかしなくとも、敵になってしまえば絶望的な存在なのではないか。

話の冒頭に戻り、答えを知りたくない問いを、恐る恐る口にした。


「敵の中に、その"13大の魔女"がいるんですか?」


「ええ、おそらくは。」


キョウは続けて言った。


「…13大の第5席、『望遠の魔女』がいると考えています。」


私はキョウの顔から微笑が消えるのを、この時初めて見た。




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