機械獣現る⑤
前田の親は前田傑の腕を見せてもなんの反応も無かった。いや、そう言うと嘘に聞こえるがダメなやつだと嗤い酒を飲み干す。ジン達も予想通りの反応だとヤレヤレと思った。
「機械獣…」
「あのなぁ!お前、逃げろよっ!」
神谷は泣いていた。男泣きでは無い。悲しくて泣いているのだ。奈須は注意するが聞いてくれてるのか解らない。
「危ないんだぞっ!」
「くそっ!」
「何がクソだよ、何も出来ないクセにっ!」
「おじさんは何体倒したんだよっ!」
「五体だよっ!」
反論出来ない数字に神谷は言葉を詰まらす。何も出来ないクセに。確かにその通りだった。青二才。それ以下かもしれない。反論出来ない自分にも腹が立っていた。奈須も助けたいけど無理があると慰め?に入る。
犠牲者は人口の半分にまで。お陰でスムーズに地下鉄に乗ることが出来た。このまま避難地区へ。群馬壁囲地区へ向かう。渋谷駅には沢山の避難者がいたが繰り返すがそんなに混乱せず避難させる事が出来たのは犠牲者が多く出た事が良かったのだろう。
食糧難にはならない。なぜなら研究者が作ってくれるからだ。肉や魚に似た料理まで様々。オリジナル料理まで。派遣研究者が作ってくれる。地下鉄で食料を運んでいるのだ。
「兵士になってやる」
「おいおい正気か」
柊に止められたが
「一匹残らずズルズルと本当に抹殺してやる」
「こりゃ止めても無駄か。俺もなるよ」
「私も」
止まらなかった。橘も兵士志願。柊は神谷の圧に負けた。
兵士になるには1年後、兵士試験というのを受ける。それで合格になったら無事兵士になれるということ。
そんなこんなで一年後群馬壁囲地区で兵士試験が行われた。志願者は50人。そこから30人選ぶ。
「今日からよろしくな!俺は桐敷走だ!」
班長らしい。自ら班長になったのだろうか?ここの部屋の班長。みんなは頼りにしている。
「俺は一匹残らず機械獣を葬る事だ!神谷稜真」
「橘絵馬」
「柊秀一」
「最後の2人は短いなセットでいいか?」
「セットで言うなら俺もだな。桐敷のダチ帯刀相樂。故郷が同じさ」
帯刀は桐敷と肩を組む。神谷も橘と柊は幼なじみだと言う説明をした。
「俺も機械獣をぶっぱなす目標がある。まぁ大体兵士志願は同じだろう目標がな。名も無き兵団志望は別だろうけど。俺は中嶋勇介」
この部屋の自己紹介は終わり。みんなは好きなように過ごした。
2段ベットがある取り合いにはならなかったが少し争いが見えた。中嶋はそれを阻止し帯刀に褒められる。
「俺らは被害少なかったが渋谷の方は大変だったらしいな」
「お前らの故郷は?」
「…新潟だよ」
「新潟か」
確かにあそこは被害が少ない。機械獣の目撃はあまり無かっただろう。桐敷はどんなやつらなんだと興味津々で聞いてくる。しかし脳裏には母親を殺した機械獣が出てくるため吐きそうになった。
「これ以上聞くのやめよう」
「それもそうか」
桐敷は悪かったと肩にポンと手を置いた。それで人一倍兵士になりたいと思ったのかと帯刀は思った。