機械獣現る④
日常が崩れ始めた。犠牲者は5万人になり病院にも容赦なく機械獣が支配してくる。
ジン達、兵士達が犠牲を出しながらも頑張っているがキリがない。掃討するには時間がかかりそうだ。
「母さんの研究室があるぞっ!」
「ちょっと、そこには行かない方が…」
橘は止めに入る。しかし神谷は本当に心配していた。
「お前ら逃げとけっ!」
「奈須おじさん…」
「あっちょ」
柊も止めに入ったが遅かった。奈須もだ。まさかと奈須はあそこに行くのかと思ったがこっちで手一杯だ。3人で研究室に向かう羽目に。皆喰われてる中、神谷達は進んでいる。目を逸らすワケじゃないが本当に死体が転がっている。真っ二つになっている者、頭だけの者等…
「あった!うわっ!」
神谷が母親、涼子の研究室に到着。生け捕りにされてた機械獣も暴れていた。
もう燃えている。涼子も助からないだろう。
「おい嘘だろ」
「燃えてる…」
神谷の母親は死んだのだ。あっけなく。機械獣に踏み潰され燃やされた。ここの研究室の生存者はゼロ。
「現実を見たかお前ら」
「前田かよ」
「お前、前田さんだろまぁいいや。誰だお前はは置いといてその様子だと肉親が死んだみたいだな」
神谷は泣いていた。前田は靴を調節し休みの体勢になる。
「これが現実、立ってたらみんな死ぬ。俺が狩る。これが現実」
「は、あは」
もう遅い現実に目が真っ暗になる。前田は準備運動をしていた。前田の弓矢は研究室を支配している機械獣に当たる。唸った。象型の機械獣だ。硬いツノを破壊すれば弱くなり更に心臓を掴めば終了。
「これ狩る前に3人が邪魔だな。救うか」
柊は肩車、橘は左肩、神谷は右肩。神谷は絶望に浸っていた。後の2人もだ。奈須班と合流し3人を保護。奈須に怒られるも聞いてなかった。
「狩るか」
前田は3人を保護した後研究室へ戻る。1人で狩る気だ。
「飛べ」
この特殊な靴は命令1本でなんでも出来るワケじゃないが非常に便利だ。バランスを保ちながらも弓矢を使用する。象型は炎と雷だっけかと前田は面倒くさそうに弓矢を補充し敵に当てる。百発百中。これが初めての狩りだった。いつも成果を生み出してない自分じゃない。やってやったぞと誰も見てない戦場で嬉々する。
「よりによって誰も見てないとこで本領発揮しちゃったぜ。ちょろいんじゃねこれ」
前田は象牙を1本倒し弱らせる事に成功した。あと1本と心臓だ。心臓を先に殺るかと彼は雷の矢で一突き。ビギナーズラックみたいな感じで命中した。結構デカイ象型の機械獣なのに。心臓は消滅したもののまだ動いている。後1本の象牙。
「ちょろいもんだな。討伐ってしかし誰も見てないまた殴なれるぞ俺」
帰還後の想像をしつつ記念すべき1体目を倒した。
「まぁ終わりだなっ…!?」
前田は横に来る何かを横目で見た。猿だ。小さい象より小さい。しかし威力は絶大。腕が飛んだ気がした。いや、飛んだのだ。血が出てくる。猿型の機械獣。鳴きもせず真っ直ぐな瞳で攻撃きてきた。
「これじゃあ弓矢出来ねーじゃん…」
力が弱くなる。前田は大量出血。楽な姿勢をとった。彼はもう無理だろう。
「帰還出来ねぇ。楽しかったぜ」
信号弾を出した。黄色のヤツだ。帰還不可のヤツ。
ジン達はすぐさま気づいた。駆けつけた時にはもう遅い。前田は死んでいた。
「前田傑か。最後の最期までダメなやつだ」
櫨は真っ二つに割れた前田を見ながら言った。腕がある。せめて親にみせなければとジンは思った。