機械獣現る
2500年人類はAIに支配されていた。AIの威力は人類と圧倒的な差があった。誰が負けたかって?それは人類に決まっている。そんな人類も負けてたまるかと壁を作った。通称【神の壁】この壁がどう作られたのか500年も前の話だから現代の自分達は知らない。真似しろと言われたら無理がある。この囲った壁が機械獣の進撃を阻止している。500年も仮初の平和を築いてきているのだ。機械獣もどこから来たのか判明していない。その機械獣とやらを討伐・調査するのが【調査隊】だ。今回も最強と呼ばれる兵隊が戻ってくるのを神谷稜真は待っていた。憧れの対象だ。
「こら、仕事サボるな」
「いって、絵馬暴力反対だろう」
渋谷壁囲地区。2000年まで渋谷があったから渋谷。渋谷を囲うように壁が存在するから壁囲。そして地区。昔は東京二十三区(のうちの一つ)と呼ばれていたそうだ。
「そうだぞ。お前のお母様が泣くぞ喚くぞ怒髪天だぞ」
橘絵馬と柊秀一に注意された。最悪だと神谷は戻ってくる兵隊は後の楽しみにして仕事の続きをする。高校生くらいだろうか?それなのに学校も行かず仕事仕事仕事。勿論、勉強もちゃんとしているが学校みたいな所には行っていない。選択は自由だ。しかも仕事をしている連中も少ない。なぜならAIが全部やってくれるからだ。しかし、橘達は違う。全部AIにやらせたからAIの神が怒ったと3人は震え、仕事もキチンとこなそうと思った。
仕事が完全に無くなったわけじゃない。昔ながらの仕事もちゃんと残っている。神谷達の仕事は椅子作り。神谷涼子の下で働いている。神谷の椅子は世界一とみんな座り心地が良いと評判だ。まずは木を集める所から始まっている。
「集めねぇとダメダメ。木をさぁ。枝をさぁ。大木も集めないと」
「重たいぞ」
「馬鹿言え、アイテムポーチがある」
橘は自慢げにチェンソーを見せた。
「うわぁぁぁぁあっ!」
「サボったら斬るぞ〜」
冗談だ。神谷は逃げ彼の後ろにあった大木を斬る斬る斬る。
「アイテムポーチ、召喚」
橘は斬った大木の肌を触れながら唱える。するとなんという事でしょうアイテムポーチが出現したと思ったら瞬にして大木が消えた。アイテムポーチに入ったのだ。
「げ、昼から酒飲んでるよアイツ」
「アイツとか言わないの一応年上だろ多分」
「多分じゃなくて確定だけどな」
橘のアイテムポーチは斜め掛けだ。いつも背負っている。ピンク色で可愛い。
神谷は知らないおっさん達を見てうわぁとドン引きしていた。橘はあぁいう人をだらしない人だと思っている。
「おっ、仕事してるぜアイツら〜」
「遅れてんなっ!」
「なんだとモブ達コラ」
「あぁ?敬語使えよ」
「すみません」
橘は彼らをチェンソーで斬りたかったが我慢した。神谷はさっきとは別の飲んだくれに絡まれムカついている。
「モブのクセにエラソーに」
「その辺にしな」
柊の細目の奥は怒ってるが外面は呆れていた。
「ちゃんと働けよ〜」
飲んだくれ三人衆はイヒヒと笑う。下品な笑い方だと神谷は思った。
ちなみに橘が斬った大木はミニチュアみたいに小さくなっている。あんな大木ポーチに入ったはいいものの出す時はどうなるのか不安に思っただろう。今説明した。しかも大きさも調整出来る。このアイテムポーチは2000円くらいで簡単に買える。
「そろそろじゃね?」
「何が」
「何がって、兵隊が戻ってくる時間だよっ!」
神谷はいそいそと2人を置いて兵隊が戻る場所に向かった。2人は待てと神谷の後をついて行った。
憧れの対象【調査隊】母親からは反対されているがいつか兵士になりたいと思っている。最強部隊【調査隊・渋谷部】が帰ってきた。
「【渋谷部】が1番最強なんだと!東京の中でさ!!」
「そうなんだ、証拠は?」
柊がヤレヤレと神谷の話を聞く。橘は興味無さそうだ。
「隊長に聞いた」
「マジで!?」
ジン・フリューゲル隊長。イケメンでジンがいれば安泰だと言われる。実力は隊長1人で1日50体機械獣を倒すらしい。ドイツの応援でそのまま興味を持ち入隊したそうだ。女からはジン様ジン様とファンクラブがある程人気。日本語ペラペラだ。
今強制鎖国状態でそれでも協力してくれるのはドイツとアメリカのみ。
海外旅行も行けない。
「マジさ。サインも貰ったぞ今度見るか」
「見たいなそれは」
【渋谷部】が最強ならここが潰れることはまず無いだろう。
「お、来たぞ」
「ジン様〜!!」
橘の声では無い。女性軍が店のセールみたいな雰囲気で嵐のように押し寄せてきた。
「絵馬は興味無いんだな」
「そんなの無い」
珍しくもなかった。橘は興味無いのだ。あるとすれば2次元だろう。
「ああ、いたいた!息子!」
「ちょっと、進行の邪魔は」
「悪いね、ジン隊長俺の息子に用があるんだ」
ジンはヤレヤレと「おい、前田傑の父親だ」と言い前田は前田父の前に立っていた。苦いものを噛んだような表情で父を見る。
「お前、成果は得られたか?」
「…」
「おい何とか言えよ!」
野次馬が集まってきた。名物らしい。1発殴りてえと神谷は手を出そうとしたが橘に止められる。ジン隊長達の進行の邪魔は許せねぇと彼は思った。
「何も、無い」
「あ?」
「何も無いってつってんだ!」
「おい、前田」
ジンは慰めるのか?いや、肩に手をやるだけいや、それすらも止められた。前田父に。
前田父は前田の歯を折る勢いで蹴った。前田は痛そうにひざまつく。
「この無能がっ!強豪校のモブみてぇじゃねぇかよ!強豪の名を借りた馬鹿なんだなっ」
ジン達は見守っていた。通過儀礼らしい。もはや名物になっている。それを見て笑う者もいる。
「【恥】を忘れるな、無能」
前田父はタバコを直し前田の髪の毛を掴む。まるでボールを扱っているみたいな感覚で前田をボコボコにしていた。