第四部 地球の危機を救うためにまだ勉強だ!『4.世界を変革する方法』
平和を構築する方法を一緒に探して見ませんか?
第4部 地球の危機を救うためにまだ勉強だ!『4.世界を変革する方法』
2024年11月3日
4-1 平和構築を中心とした知識の統合
4人は、長い冒険を続け、様々な地球規模の問題に取り組んできた。
その過程で、彼らは多くの問題を体験し、知識を学び、システム思考を用いて複雑な問題を整理し、未来に向けた新しい視点を得てきた。
ミエナの導きによって彼らが到達した結論は、『平和の構築』がすべての問題を解決するための最も強力な『神秘の種』であるということだった。
そのことが明らかになった今、エイレネたちは、これまで学んだ知識や経験を平和の構築を中心にまとめ直すことが必要だと感じていた。
そこで彼らは、再びミエナに協力を仰ぎ、これまでの勉強の内容を整理してもらうことにした。
「ミエナ、これまで学んできたことを、平和を中心にしてまとめ直してもらえる?」エイレネが優しく頼んだ。
ミエナは静かに頷いた。
「もちろんです。では、これまでの皆さんの勉強を、平和を核にして整理してみましょう。」
ミエナはスクリーンに映し出されたシステム思考の図を指しながら話し始めた。
「まず、皆さんが最初に取り組んだ問題は気候変動の深刻な影響でした。気温の上昇、自然災害の頻発、環境の崩壊…。これらはすべて、人々の生活を脅かし、社会不安や経済的混乱を引き起こしています。これが紛争や戦争を引き起こす原因の一つにもなります。気候変動を抑制するためには、国際的な協力と平和な関係が不可欠です。」
スクリーンに映し出されたラベルには、「気候変動」と「社会不安」、「国際的協力」の矢印がリンクされていた。
「次に皆さんが取り組んだのは世界の人口増加と食糧不足の危機です。人口が増えると、食糧や資源を巡る争いが激化し、それが国家間、あるいは国内の紛争の火種になります。これもまた、平和が維持されることで初めて対策を進められる問題です。食糧を公平に分配し、持続可能な農業を推進するためには、平和で安定した国際関係が必要です。」
「戦争とテロ、ジェノサイドによる人道と人権の危機も平和の中心的なテーマです。平和がなければ、人権は守られず、人道支援も遅れます。皆さんが体験したように、これらの問題は相互に絡み合い、解決策もまた相互依存しています。平和の構築によって、テロや紛争の根本原因に対処し、持続可能な人権保護が実現できるのです。」
パンドラが静かに頷いた。「確かに、私たちが見た多くの問題は、結局、不安定な国際関係や対立から生まれていたわ。平和がなければ、これらの問題は解決できないのね。」
ミエナは次に、パンデミックについて説明を続けた。「パンデミックの蔓延も、平和が大きく関与しています。新型コロナウイルスや他の感染症の対策には、国境を越えた協力が必要でしたが、国際関係が悪化すると、ワクチンの公平な分配や医療支援が遅れました。平和な協力体制があれば、より効果的なグローバルな健康対策が実現できます。」
プロメテウスが思い出しながら言った。「あの時、ワクチン争奪戦が起きたのも、国家間の対立や不信が原因だったな。平和がなければ、命を救うことすら難しいんだ。」
次にミエナは、社会的分断と不平等の深刻化について話を進めた。
「平和が構築されることで、社会的不平等も是正されます。戦争や紛争の中では、弱者や少数派がさらに不利益を被り、分断が広がります。平和な社会であれば、こうした不平等に対してより公正な制度や支援が提供され、人々が協力し合う基盤が作られます。皆さんが体験した女性や少数民族への虐待も、平和のない世界では解決が困難です。しかし、平和な環境があれば、権利の保障や法的保護が強化され、社会全体がより包摂的になります。」
ディアナはその話に深く共感した。「平和がなければ、誰も救われない。だからこそ、すべての人が公正に扱われる社会を作るために、私たちはまず平和を確立しなければならないのね。」
ミエナは最後に、権威主義の増加とAIの進化について話をまとめた。
「権威主義による戦争の増加と人権侵害の深刻化は、平和がなければ絶対に避けられない問題です。権威主義国家はしばしば、他国との対立や国内の弾圧を通じて自らの力を維持しようとします。これを抑制するためには、民主主義と平和の拡大が必要です。平和が確立されることで、権威主義的な圧政は減少し、より自由で公正な社会を築くことができます。」
「そして、AIの進化と大量失業についても、平和がなければ、技術の発展が社会の安定を壊すことになります。平和な社会では、技術の進化を経済や社会に柔軟に組み込み、持続可能な雇用創出や社会保障を提供することが可能になります。」
エイレネは目を輝かせながら言った。「そうよ、平和な社会でなければ、技術の進歩が逆に不安と混乱を招いてしまう。だからこそ、平和がすべての基盤になるのね。」
ミエナは最後にまとめの言葉を述べた。
「このように、皆さんがこれまで学んできた地球規模の問題群は、すべて平和に結びついています。気候変動、食糧不足、パンデミック、不平等、権威主義の拡大…。これらの問題は、平和がなければ解決が困難です。しかし、平和が構築されれば、これらの問題に対して効果的に取り組むことができ、持続可能で公正な未来を築くことができるのです。」
プロメテウスが深く頷いた。「まさに、平和が鍵だな。これが最も強力なレバレッジポイントだということが、今ならよく分かる。」
パンドラも感慨深く言った。「すべての問題が繋がっている…。平和を作ることで、私たちは本当に世界を変えられるのね。」
「ええ、私たちが学んだことはすべて平和へと集約されるの。」エイレネは微笑みながら、仲間たちを見つめた。「これが、私たちの未来の道筋よ。」
こうして、エイレネたちはこれまでの勉強を平和を中心にまとめ直し、新たな視点で未来を見据えた。彼らの目指すべき道は、システム全体を安定させ、世界規模で平和を構築することだった。平和がすべての鍵となり、それが持続可能な未来を築くための第一歩となることを、彼らは確信したのだった。
「さあ、次のステップに進みましょう。平和の構築を目指して!」プロメテウスの言葉に、4人は力強く頷き、新たな冒険に向かって歩き出した。
エイレネは、SimTaKNがシステム思考で『神秘の種』は『平和の構築』であるという結論を導き出したことに一日中感激していた。
やはり平和がすべての問題を解くカギになる。
私がキーパーソンなんだわ。
何となく、所長のオヤジギャグ的な結論に違和感を感じながら眠りについた。
夢の中で、パンドラが、自分の箱を開ける鍵がなくなったといって大騒ぎをしていた。
何故かよく分からないけど、私を鍵の代わりに代用しようとして、無理矢理、鍵穴に押し込もうとしている。
エイレネは必死に「私はパンドラの箱の鍵ではない! 平和の鍵だ!」と大声で叫んだ。
エイレネの大声は宿舎中に響いて、別々の部屋で寝ていた3人とも飛び起きてしまった。
そして、3人は何があったのかと、エイレネの部屋に押し掛けてきた。
というところでエイレネの目が覚めた。
危うく、パンドラの箱を開けてしまい、平和をもってしても防ぎきれないかもしれない多くの禍を再び人類にもたらすかもしれないところだった。
と、ホッとしたエイレネでした。
4-2 平和構築のために最終的に必要なもの
4人は、これまでの学びを、平和を中心に統合し、その重要性を深く理解した。平和を構築することが、気候変動や戦争、社会的不平等、権威主義など、すべての地球規模の問題を解決するための最も強力なレバレッジポイントであることが明らかになった。
しかし、その一歩を踏み出すためには、さらに深い問いが残っていた。
「ミエナ…」エイレネが静かに問いかけた。「私たちは平和を構築することが大事だとわかったけど、最終的に、平和を実現するためには何が必要なんだろう?それが今、私たちにはっきりしていないの。」
パンドラも同意するように頷いた。「私たちが学んできたことを全部理解したけど、平和を実現するための核心がまだ見えていない気がするの。」
「私たちは今、世界を変えるための手段を探しているわ。でも、何が具体的に必要なのか、まだはっきりしていない。」ディアナは慎重に言葉を選びながら、ミエナに助けを求めた。
プロメテウスは深く考え込んだ表情で続けた。「平和を構築するための最終的な要素とは何なのか…。その答えがわからなければ、次の一歩を踏み出せないな。」
ミエナは4人の問いを静かに受け止め、目を閉じて深く思案した。しばらくの沈黙の後、ミエナは目を開き、落ち着いた声で答え始めた。
「平和を構築するために最終的に必要なもの…それは一つにまとめることはできませんが、いくつかの核心的な要素が存在します。」ミエナはスクリーンに複数のラベルを表示し、4人に向けて説明を続けた。
「まず、信頼です。平和を築くためには、国際社会、国家内のグループ、そして個々人の間に信頼関係が不可欠です。戦争や紛争の根本には、しばしば不信と恐怖が存在します。信頼がなければ、対話や協力は成り立たず、和平への道も閉ざされます。信頼を構築するための外交や協力が、最初のステップとなるでしょう。」
「信頼か…それが崩れると、何もかもが危うくなる。」プロメテウスは考え深い表情で言った。
「その次に必要なのは正義と公正さです。」ミエナは続けて言った。「平和は、単に戦争がない状態ではありません。不公正な社会では、人々の不満が蓄積し、やがて暴力や対立に発展することがあります。したがって、公正な法制度、公平な資源配分、そして社会的な包摂が必要です。これにより、すべての人が平等に扱われると感じ、暴力に訴える必要がなくなります。」
ディアナは力強く頷いた。「正義がなければ、平和はただの一時的な停戦に過ぎないわ。公正さがない限り、真の安定は得られない。」
「また、平和のためには教育が重要です。平和は意識の中で育まれ、次の世代に伝えられるべきものです。」ミエナは画面に教育というラベルを強調した。「特に、平和教育や異文化理解が必要です。これにより、異なる背景を持つ人々が互いを理解し、共に平和な社会を作る意志を育てます。無知や偏見が対立を生むことが多いため、教育によってその壁を取り除くことが可能です。」
エイレネは目を輝かせながら言った。「そうね、意識を変えることが最も大事だわ。私たちが学んできたことを広め、みんなが理解し合えるようにするのね。」
「さらに、もう一つ欠かせない要素は平和への強い意志です。」ミエナはさらに深い声で続けた。「平和はただ待っていても訪れません。対立や困難があっても、それを乗り越えようとする意志の強さが必要です。これを持つリーダーや個人、そして国際社会全体が、平和を望む力を持ち続けることが不可欠です。」
パンドラはその言葉に深く共感した。
「平和を実現するには、たくさんの障害があるけれど、それに負けずに戦う意志がないと始まらないわね。」
「最後に重要なものは、共感、即ちエンパシーです。」ミエナは画面に「共感」と表示し、4人を見つめた。「人々が他者の痛みや苦しみを理解し、共感することで、平和は実現されます。異なる立場や背景を持つ人々の間で、共感があれば、対話の扉が開かれます。共感を持つことで、争いを乗り越え、共に平和を築くことができるのです。」
「共感か…それは、すべての人が平和を望むための根源的な感情だな。」プロメテウスは静かに頷いた。
ミエナは最後に、4つの要素を画面にまとめた。
「これが、平和を構築するために最終的に必要な要素です。信頼、正義と公正さ、教育、そして平和への強い意志と共感。これらが揃えば、平和は単なる理想ではなく、現実のものとなるでしょう。」
4人はその言葉に深く感銘を受けた。
「つまり、私たちはこれらの要素を社会や国際関係に埋め込むことで、平和を実現できるということね。」エイレネは微笑んで言った。
「そうね。平和は待っているだけでは得られない。これらを私たちの行動指針として取り組んでいかなければ。」ディアナも力強く答えた。
「平和を実現するために、私たちがすべきことが見えてきたな。」プロメテウスは未来を見据えるように言った。
パンドラは感慨深げに呟いた。
「すべてはここから始まるのね…。平和を中心に、世界がどう変わっていくか、私たちの手で見届けるわ。」
こうして、エイレネたちは平和を構築するための最終的な要素を理解し、新たな決意を胸に抱いて、未来に向けて歩み始めたのだった。
その夜、一人になったエイレネは、単なる理想としての平和ではなく『社会や国際関係に、信頼、正義と公正さ、教育、そして平和への強い意志と共感といった要素を埋め込む』ことで、平和を現実のものとすることができるということが深く印象に残っていて、その余韻に浸って眠りについた。
気がつくとエイレネを中心にパンドラも、ディアナもプロメテウスも全員、テニスコップを以て集まっていた。
プロメテウスが元気よく「さあ、これからこれらの要素を社会や国際関係に埋め込みに行こう!」といった。
エイレネたちは、その言葉を合図に元気よく社会や国際関係を探しに行った。
ところが、いくら一生懸命そこいらじゅうを探しても社会も国際関係も見当たらない。
困り果てたディアナが「社会も国際関係も見つからないから、これらの要素をスコップで穴を掘って埋め込むことはできそうもないわ!」といった。
パンドラが「でも、絶対どこかにあるはずよ。木の棒を持ってもっと探しましょう!」と励ました。
そこにマコテス所長が現れて、「君たち、スコップを持ったままでは社会も国際関係も見つからないよ」といった。
エイレネたちは驚いて、「えっ! 所長、どうしてですか?」と聞いた。
所長は得意げな顔をして言った。「君たちはシャベルだけだからだ!」
あまりのひどいオヤジギャグに全員が一斉に各自のベッドから転げ落ちたことは言うまでもないことだろう。
4-3 平和構築のために必要な組織
4人は、昨夜の夢を全員が一緒に見たという不思議な体験を朝食を取りながら話し合って、本当は何がいけなかったのか話し合った。
そして、平和構築に必要な信頼、正義と公正さ、教育、そして共感と強い意志が平和を実現するための核心的な要素であることを理解したけど、それらが抽象的な概念のままだからではないかということに気がついた。
つまり、話す言葉や概念だけでは平和は実現できない。
シャベル言葉だけでは具体的に社会や国際関係に現実的なインパクトを及ぼすことはできないのだと気がついた。
授業が始まって、プロメテウスはふと何かを考え込むように視線を落とし、しばらく沈黙した後、ミエナに問いかけた。
「ミエナ、これらの要素が平和を築くために不可欠だというのは分かる。しかし、それを実現するための組織や仕組みがなければ、どれだけ素晴らしいアイデアや意志があっても、それらをシャベル言葉だけでは実際には平和を成し遂げられないのではないか?」
エイレネたちもプロメテウスの言葉に考えを巡らせた。信頼や正義を確立するには、ただそれをシャベったり唱えるだけでは不十分だ。現実世界では、具体的な行動や政策を実行に移すための組織や制度が不可欠だ。
「確かに…。これまでも、多くの平和を求めるシャベル声が上がったけど、それを実現する組織がなかったためにうまくいかなかったことが多いわ。」パンドラが静かに同意した。
「平和を実現するためには、これらの要素を支える強固な仕組みと『力』が必要よね。それがなければ、シャベルだけの理想で終わってしまう。」ディアナも真剣な表情で続けた。
ミエナは4人の問いを受け止め、少しの間考えをまとめた後、静かに語り始めた。
「プロメテウス、確かにあなたの言う通りです。平和を構築するためには、これらの要素を実行に移すための『力』を発揮できる組織や制度が絶対に必要です。個々のシャベル努力や意志だけでは、世界規模の問題に対処することは難しいでしょう。組織や制度は、持続的な平和を支えるための枠組みを提供し、長期的な視点で平和を維持する役割を果たします。」
マコテス所長があまりにもヒドイ会話がミエナにまでうつてしまったので、ついに全員に向かって注意した。
「シャベルという単語を使うのは、もうスコップにしよう! スコップだよ! ストップ!」
ミエナのホログラムもエイレネたちと一緒にガクッと崩れ落ちた。
しばらく、ミエナもエイレネたちも立ち直れなかった。
ようやくミエナはいつもの冷静さを取り戻してスクリーンに手をかざし、過去の歴史的な取り組みや現在の国際機関についての情報を表示させた。
「過去においても、平和を維持するための国際組織は存在していました。例えば、国際連合(国連)は、第二次世界大戦後に平和を保つために設立され、現在でも平和維持活動や人道支援、国際的な紛争解決に貢献しています。しかし、国連だけでは十分ではありません。国際社会全体が協力し、より効果的に地球規模の問題に対処できる組織が必要なのです。」
「つまり、私たちが考えている地球政府のようなものが必要だということ?」エイレネが尋ねた。
ミエナは頷き、続けた。「そうです。平和を実現するためには、国際的な協力を強化し、全体を調整するための組織が必要です。国連のような既存の枠組みに加えて、さらに強力で包括的な組織が不可欠です。世界政府論で学んだ世界政府は、最近の国際的な議論な中では『地球政府』という少し異なる言葉になってきています。それは地球規模の問題群を解決するためのグローバル・ガバナンスを主たる目的とするという意味で『地球政府』と呼ばれています。世界政府よりも軍事的な意味合いが弱いという形になるかもしれませんし、あるいは、地球規模の平和維持機構として構築されるかもしれません。」
ミエナはさらに深くその考えを説明した。「これまで皆さんが議論してきた地球政府の構想は、平和を維持するための強力な手段となるでしょう。特に、国際法の強化や各国の軍事的負担の削減、そして経済的不平等の是正に向けた共通の目標を持つことで、平和の土台が築かれます。しかし、地球政府だけではなく、さらに現実的な取り組みとして地域ごとの平和維持機構も重要です。」
ディアナがその言葉を受けて思案する。「例えば、地域の対立や紛争に対して、その地域で調整を行う国際的な仲裁機関のようなものが必要かもしれないわね。それぞれの地域に合わせた平和のアプローチが必要なんだわ。」
「その通りです。平和は、単に中央集権的な政府によって押し付けられるものではなく、地域や国ごとの特性に合わせて構築されるべきです。」ミエナは続けた。「例えば、ヨーロッパでは欧州連合(EU)が経済と政治の協力を通じて長年平和を保ってきました。これと似たような枠組みが、アジアやアフリカ、中東でも作られるべきでしょう。」
プロメテウスは腕を組んで言った。「つまり、地球政府はグローバルなビジョンを持ちつつ、各地域に柔軟に対応する組織も必要になるわけだな。それがなければ、中央の政策が現場に合わないということも起こり得る。」
ディアナは「最近のイギリスはEUから離脱してしまいましたが、一国主義、孤立主義、自国第一主義が、広まっていかないようにするためにも、その地域で調整を行うための、より強力な国際的な仲裁機関のようなものが必要になってきているんですね」といった。
ミエナはさらに踏み込んで説明した。
「これらの組織は、先ほどお話しした信頼、正義と公正さ、教育を実現するためのプラットフォームを提供します。例えば、平和教育の推進には、国際的な協力や資源の配分が必要です。そして、信頼を構築するためには、透明な意思決定プロセスや国際監視機構が必要です。」
「正義と公正さを実現するためには、国際的な裁判所や法的枠組みが強化される必要があるわね。」
ディアナが考えを述べた。
「今ある国際司法制度も強化して、すべての国が公正に裁かれる体制を整えなければならない。」
「教育も同じだわ。」
エイレネが続けた。
「世界中の人々が平和の重要性を理解し、それを実現するために何が必要かを学ぶ機会を作るには、教育のための国際的な組織やプログラムが必要だと思うの。」
ミエナは頷きながら応えた。
「その通りです。これらの組織が存在することで、長期的な平和維持が現実のものとなります。そして、地球政府や平和維持機構が、これらの要素を世界全体に広め、平和の基盤を確立していくのです。」
ミエナの説明を聞いた4人は、平和を実現するためには、理想や意志だけではなく、それを支える組織が不可欠であることを理解した。地球政府や平和維持機構といった大規模な組織が、平和構築のための強力な手段となり、信頼や正義、公正さを実現するための土台を築く。
「つまり、私たちは平和のための組織を作ることも視野に入れて行動しなければならないのね。」
エイレネは決意を込めて言った。
「そうだな。組織がなければ、どれだけ優れたビジョンを持っていても、それを実現する手段がない。」
プロメテウスも力強く答えた。
「これから私たちがすべきことは、『平和を支えるための組織の構築』だわ。地球規模の組織を考え、実現する方法を見つけなければ。」
ディアナも意気込みを見せた。
パンドラは微笑んで言った。
「私たちが地球政府の基盤を作り、平和を実現するための力を発揮する時が来たわね。」
こうして4人は、平和を実現するための組織の必要性を理解し、新たな挑戦に向けて歩みを進める決意を固めたのだった。
ミエナは今日の授業のことを思い出して一人で笑っていた。
それを見つけたマコテス所長が、ミエナに何を笑っているのかと尋ねた。
ミエナは、全員に「シャベルという言葉を使うな!」といって、所長が「シャベルはもうこれからはスコップだ!」といったオヤジギャグがとても面白かったと答えた。
マコテス所長は久々に受けたギャグに大満足して、「ミエナはギャグを言えないのかな?」と聞いた。
ミエナは、少し困った様子で小さな声で電子回路によって禁じられていることを所長に伝えた。
所長は、「ほう!なぜかな? ミエナのギャグを聞いてみたい気もするけど」といった。
そこでミエナは、本当の理由は、オヤジギャグは品性を疑われるから電子回路が遮断するということを言えないでいた。
でも、とても良い受け答えが見つかったので、所長に優しくいつもよりも一段とチャーミングにみえる笑顔を見せて言った。
「私はオヤジじゃないから、オヤジギャグは使えないのです」
・・・・・
その夜、マコテス所長が何故かベッドから転げ落ちたというウワサが翌日のガイア地球研究所内に広がったことは言うまでもないことである。
4-4 地球政府と平和維持機構の一体化
4人は、ミエナの指導のもとで平和を支えるための組織について学び、地球政府や平和維持機構の重要性を理解し始めていた。しかし、議論が進むにつれて、プロメテウスはある疑問を感じ取った。
彼はしばらく考え込み、やがて意を決して口を開いた。
「ミエナ、確かに平和を維持するためには地球政府や平和維持機構のような組織が必要だということは理解できる。しかし、僕はその並列の考え方に少し疑問を抱いている。」
エイレネたちもプロメテウスの発言に興味を引かれ、耳を傾けた。
「例えば、ヨーロッパではEUがうまく機能しているけれど、それはNATOという軍事同盟があるからこそ可能なんだ。」プロメテウスは続けた。「EUは経済や政治の統合を進めているが、もしNATOがなかったら、EUの安全保障は保てない。つまり、平和を支えるための軍事力、平和維持機構があってこそ、欧州の平和が維持されているんだ。」
ディアナはその言葉に頷いた。
「確かに…NATOは欧州の安全保障の基盤ね。経済や外交だけでは不十分で、軍事力によって平和が保たれているのは間違いないわ。」
「その一方で、国連はうまく機能していない。」
プロメテウスはさらに説明を続けた。
「それは、国連には実質的な国連軍が存在せず、実際の平和維持力が足りないからだ。地球規模の平和を維持するためには、軍事力を伴う平和維持機構が必須だと思う。国連が抱える問題は、まさにその点にある。」
エイレネは少し驚いた表情でプロメテウスの意見に耳を傾けた。
「つまり、地球政府や平和維持機構は並列で存在するのではなく、一体のものとして考えなければならないということ?」
プロメテウスは真剣に頷いた。
「その通りだ。地球政府が存在するなら、その政府が平和を維持する軍事的な力も同時に持つ存在しなければならない。平和維持機構、つまり地球政府軍がなければ、地球政府の力は実質的に不完全なものになるだろう。」
ミエナはプロメテウスの意見を聞き、しばらく静かに考え込んだ後、彼の言葉に賛同するかのように頷いた。
「プロメテウス、あなたの指摘は非常に的確です。」
ミエナは、穏やかな声で4人に向けて話し始めた。
「平和を維持するために必要なのは、確かに地球政府と平和維持機構が一体となった形です。これまで私は、それらを並列に説明してきましたが、あなたの指摘通り、それらは分けて考えるべきではありません。」
ミエナはスクリーンに新たな図を表示し、地球政府と平和維持機構の統合的な構造を示した。
「EUが成功しているのは、まさにNATOという軍事的な枠組みが存在しているからです。経済や外交の協力だけでは、平和を守ることはできません。同様に、地球政府が樹立されたとしても、実際に平和を維持するための強固な平和維持機構、すなわち地球政府軍が必要です。それがなければ、国連のように十分な効果を発揮できないでしょう。」
パンドラが理解を深めた表情で言った。
「つまり、地球政府は単なる政治的な統合体ではなく、その中に軍事力を備えた平和維持機構を持たなければならないのね。」
ミエナは頷きながら続けた。
「その通りです。平和維持機構は、地球政府の一部として組み込まれ、地球規模の平和と安全保障を直接的に支える存在となるべきです。これによって、地域紛争や国際的な対立を抑制し、地球全体での平和を実現する力を持つことができるのです。」
プロメテウスは興味深そうにその図を見つめながら質問を続けた。
「その場合、地球政府軍は具体的にどのような役割を果たすことになるんだろうか?」
ミエナはプロメテウスの問いに答えるように言った。
「地球政府軍の役割は、主に国際紛争の防止と地域紛争の抑制、さらには平和的解決の支援にあります。各国の独立性を尊重しながらも、国際社会全体の安全を守るために、地球規模での軍事的な調整を行います。」
スクリーンには、地球政府軍が活動する様々なシナリオが映し出された。
「例えば、ある国で内戦やテロが勃発した場合、地球政府軍はその紛争地域に介入し、平和的な解決を促進します。さらには、核兵器の拡散防止や軍拡競争の抑制といった役割も担い、国際社会全体の平和を維持するための活動を行います。」
「地球政府軍は、まさに平和を守るための最終的な手段になるのね。」
ディアナは納得したように言った。
ミエナは頷いて続けた。
「その通りです。地球政府と平和維持機構が一体となることで、初めて地球規模での平和が持続的に維持されることが可能になります。そして、これが地球政府の最大の役割となるのです。」
エイレネが感慨深く言った。
「つまり、私たちが目指すべきは、地球政府という政治的な枠組みと、その中に組み込まれた平和維持機構を一体化させた組織。それによって、真の平和が維持される未来が見えてくるのね。」
プロメテウスも同意するように頷いた。
「そうだ。地球政府が平和を築くためには、強力な安全保障の枠組みが必要だ。それがなければ、地球政府の権限は不十分で、各国の対立を抑える力も持てない。」
「私たちは、平和を維持するための政治的リーダーシップと軍事的力を同時に考える必要があるんだわ。」パンドラもまた、決意を新たにした表情で続けた。
ミエナは4人の顔を順に見つめ、優しく微笑んだ。
「皆さんが今理解したことこそ、未来の平和を築くための本質です。地球政府と平和維持機構を一体化した組織が樹立されることで、地球規模での平和が実現されるのです。そして、その実現には、皆さんの努力と意志が必要不可欠です。」
4人は、地球政府と平和維持機構が一体化した形で未来の平和を支えることを理解した。
地球政府軍を含む強力な平和維持機構が、世界の紛争を抑え、平和を維持するための最終的な手段として機能することが、彼らの目指す新たな未来への道筋となった。
「さあ、私たちが進むべき道が見えたわ。地球政府とその平和維持機構を作り上げて、真の平和を築く時が来たのね。」
エイレネは決意を込めて言った。
「私たちの手で未来の平和を実現する。」
プロメテウスも力強く頷いた。
こうして4人は、地球規模の平和を実現するために、新たな冒険へと再び踏み出す準備を整えたのだった。
「今日の授業では、プロメテウスさんが頑張って、地球政府の平和維持軍を同時に樹立するというところまで来たわ」
エイレネは復習をしながら感想をもらした。
「でも、平和維持軍って『力』なんだよね。『暴力』ではないけど『パワー』であることは同じよね」
それを聞いたディアナが、「私は狩猟と自然と女性の守護者として月の女神をしているけど、狩猟もある意味では『力』で獲物を狩るのだから、『力』の全てがいけないということではないような気がする」と言った。
パンドラも「私も『力』があったら箱から禍が飛び出す前に閉めることができたかもしれないと思うと『力』があったら良かったかなと思います」と続けた。
プロメテウスが、「以前、エイレネちゃんが『民主主義と暴力は両立しない』という名言を言っていたけど、それは真理だと思う。だから民主主義を守るための『力』は『暴力』とは違うと思うよ」と言った。
ミエナは、「日本国憲法には、戦争の放棄や戦力の不保持、交戦権の否認などが定められており、憲法第9条では、戦争と武力による威嚇や武力の行使を、他国との紛争の解決手段として永久に放棄することを定めています。また、同条の2項では、陸海空軍その他の戦力の保持を許さないと定めています。民主主義国を守るために軍隊という『力』を放棄している画期的な憲法です」と言った。さらに続けて「その健保の前文には『平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した』と明記されています。そのため、自衛のための部隊が合憲か違憲かを争う事態になっています」
プロメテウスは「確かに、実際にロシアがウクライナにいきなり武力侵攻したように、どこかの国が武力侵攻してきたら『平和を愛する諸国民の公正と信義』をいくら信頼していても自衛する力が無ければ、ロシアの思惑通りウクライナはロシアに併合されたり傀儡政権にされたりして、民主主義国家としての存続は絶対に無理だったと私は思う」と言った。
エイレネは「国家の中なら、内戦でも起きない限り軍隊ではなく警察と裁判所で犯罪や暴力は防いだり処罰したりすることができて秩序を維持することができる。だけど、国際社会では実効性があって公正な警察や裁判所がないから最低限でも『自衛のための力』が必要になってしまうんですね」と言った。
ミエナは「そうです。従って、地球政府には平和維持軍という軍隊・軍事力が必要不可欠ということになります。しかし、長期的に見れば、各国が軍隊を縮小し廃止することが実現可能となれば、平和維持軍も地球議会が定める法律に従って犯罪的な行為をする国家の指導者や指導部を取り締まることができるような『地球警察』に変貌していくことは十分に考えられます」
エイレネは、それを聞いてちょっぴり安心した。
「だったら、いつかは地球政府の軍隊がなくなって、地球市民社会の民主主義が『力』ではなく、『平和構築に必要な信頼、正義と公正さ、教育、そして共感と強い意志』を『思いやり(愛)と交渉(交換)』で実現できるって期待していいんですね」と嬉しそうに語った。
ミエナはその言葉を聞いて、エイレネがずいぶんと成長したことを実感した。
4-5 真の民主主義と地球政府の大原則
4人は、地球政府と平和維持機構の一体化という重要な結論に到達し、これからの平和構築の道筋が見えてきた。
しかし、その中でエイレネは何かがまだ欠けていると感じていた。
彼女は静かに考え込み、やがて気づいた。
「待って…この地球政府の大原則が抜け落ちているわ。」
エイレネは急に顔を上げて言った。
その言葉に、残りの3人もはっとして、同時に声を揃えた。
「そうだ!真の民主主義が抜けている!」
一瞬、部屋の空気が張り詰めた。
彼らはこれまで、地球政府や平和維持機構の具体的な構造や役割について議論をしてきたが、地球政府がどのように運営されるべきか、その根本的な理念については十分に考慮していなかった。
ミエナもその指摘に頷き、優しい笑みを浮かべながら言った。
「その通りですね。地球政府が真の平和を実現するためには、真の民主主義がその基盤になければなりません。さもなければ、平和維持機構や政府そのものが独裁的になってしまい、世界は再び混乱に陥るでしょう。」
「真の民主主義…。それがないと、どれだけ大きな平和維持機構や軍があっても、結局は力の集中が危険を生む。」
ディアナは深く考え込んだ。
「それなら、真の民主主義が機能するために、どんな制度や条件が必要なのか教えてほしいわ、ミエナ。」
エイレネが頼んだ。
ミエナは静かに頷き、4人に向けて、地球政府が真の民主主義の組織となるために必要な制度や条件を説明し始めた。
「まず最初に必要なのは、透明性です。」
ミエナはスクリーンに「透明性」という言葉を表示した。
「民主主義が機能するためには、政府の意思決定プロセスが国民に公開されていることが不可欠です。情報が一部の人々だけに隠されることがあれば、権力が腐敗し、民主主義は失われます。したがって、地球政府はすべての政策、予算、決定事項を透明に開示し、地球市民が常にその活動を監視できる仕組みが必要です。」
「確かに、どんなに素晴らしい理想を掲げても、権力が閉じたところにあると腐敗するわ。」
パンドラが思い入れ深く言った。
ミエナは次に、もう一つの条件を提示した。
「次に必要なのは、参加の平等です。すべての地球市民が、等しく発言権を持ち、選挙に参加できることが、真の民主主義の基本です。地球政府においては、すべての国や民族が平等に扱われ、どの地域に住む人々も自らの代表者を選ぶ権利が保障されなければなりません。」
プロメテウスはそれに応じて考えを述べた。
「つまり、一票の格差があってはならないということだな。国や人口の大小によって発言力が変わるような仕組みでは、真の民主主義は成立しない。全員が等しく参加できる選挙制度が必要だ。」
「その通りです。そして、選挙の際には、選挙の公平性を保つための国際的な監視体制が必要です。」ミエナは続けた。「権威主義的な国家や指導者が、選挙を不正操作することで民主主義を崩壊させる危険性があります。地球政府の選挙が常に公正で自由であるためには、独立した選挙管理機関と、国際的な選挙監視団のような仕組みが不可欠です。」
次にミエナは、法治主義と基本的人権の重要性について話し始めた。
「もう一つ重要な要素は、法治主義です。民主主義が成り立つためには、すべての人が法の下で平等であること、そして誰もが法に従わなければならないという原則が徹底されなければなりません。地球政府では、国際的な法治主義が確立され、国や指導者が例外なく法に基づいて行動する体制を整えなければなりません。」
ディアナはその話を聞いて真剣な顔で頷いた。
「法の下での平等…。権力者が自分に都合の良い法律を作り出すのではなく、全員が公正に裁かれる社会。それがなければ、民主主義は維持できないわね。」
「そして、基本的人権の尊重も欠かせません。」
ミエナはさらに続けた。
「地球政府が真の民主主義であるためには、すべての地球市民が自由、平等、人権を享受できる社会である必要があります。これには、言論の自由、信仰の自由、集会の自由などが含まれ、どんな国家や指導者もそれを侵すことは許されません。地球政府の下では、個々の人権が絶対的に守られることが最優先されます。」
最後にミエナは、持続可能な民主主義についての条件を示した。
「真の民主主義が長期的に機能するためには、持続可能な仕組みが必要です。」
ミエナは落ち着いた口調で続けた。
「これは、単に現在の世代が民主的な社会を享受するだけでなく、未来の世代に対しても同じ権利を引き継ぐことが求められます。したがって、環境の保護や資源の持続的な利用も、民主主義の基本要素に組み込まれなければなりません。」
プロメテウスはそれに賛同して言った。
「未来の世代に責任を持つという考え方も、民主主義の一環ということですね。地球全体で持続可能な社会を築くことが、真の民主主義の一部になるというわけだ。」
ミエナは全体をまとめるように、最後に言葉を紡いだ。
「このように、地球政府が真の民主主義を実現するためには、透明性、参加の平等、公正な選挙、法治主義、基本的人権の尊重、持続可能性という条件が必要です。これらが揃ってこそ、地球政府はすべての地球市民にとって信頼できる民主的な組織となり、世界の平和を維持するための礎となるでしょう。」
エイレネはその話を聞きながら静かに頷いた。
「そうよ、真の民主主義がなければ、平和はただの幻想に過ぎないわ。私たちが目指す地球政府は、すべての人々が平等に参加し、自由と人権が守られる組織でなければならない。」
「これで、ようやく全体像が見えてきたな。」
プロメテウスは深く頷きながら言った。
「地球政府は、真の民主主義をその中心に据え、平和維持機構と一体となって世界を守る組織になる。」
こうして、エイレネ、パンドラ、ディアナ、プロメテウスの4人は、地球政府の真の姿を理解した。平和を維持するための軍事的な力と共に、真の民主主義が絶対に欠かせない要素であることを認識し、そのために必要な制度や条件を学んだ。
エイレネは真の民主主義が地球政府の根幹になるという結論を得て、今晩はぐっすり眠ることができそうだと思った。
民主主義という大地は、不動の大地のようでいて透明性、参加の平等、公正な選挙、法治主義、基本的人権の尊重、持続可能性という栄養素をたっぷり含んでいる。そこから平和という木が育ち、地球を覆うような枝葉を広げる。美しい花が咲き、繁栄という実がなる。充実した気分でエイレネが見守るその木の傍らに、あれ?誰かがいる!
よく見るとパンドラだった。平和の木から落ちた木の棒をたくさん拾い集めているのだった。そう、平和があれば木の棒は人々の心に沢山の希望の火を灯すだろうと思った。
しかし、エイレネは、パンドラの近くで何やら揉み合う二人の人影を発見した。ディアナとプロメテウスだ!
何を揉み合って言い争っているのかと聞いてみたら、プロメテウスが「私がパンドラの木の棒に火を灯してあげようとし始めたら、いきなりディアナが止めて来たんだ!」と、とても不機嫌そうに言った。
それに対してディアナは「だって、プロメテウスさんはいつだって火加減がうまくできないのだから、今回もパンドラさんがせっかく拾い集めた木の棒が全て灰になってしまうと思ったのよ!」
エイレネは、これはディアナが正しいと、直ぐにプロメテウスさんに諦めるように言った。
「希望の火はプロメテウスさんがつけるものではなく、パンドラさんから木の棒をもらった人が自分でつけるものなんですよ」
その言葉に、プロメテウスもディアナもパンドラも心から納得して深く頷いた。
ぐっすり眠ると素敵な夢が見られるんですね。
エイレネは、睡眠の質が夢の質にも影響するということを発見した!
マコテス所長に、この発見を話したら、それは『神秘の種』じゃなくて『睡眠のネタ』だねと、オヤジギャグで返されてしまった。
4-6 地球政府を創るための戦略
ガイア地球研究所の静かな講義室に、4人が集まり、ミエナのホログラムが彼らの前に立っていた。今日は、政策よりも上位の概念である「戦略」について教えようとしていた。
「政策は具体的な行動計画を作る上で重要ですが、政策の上位にある戦略こそが、全体の方向性を示し、複数の政策が調和して機能するための大きな指針となるのです。今日は、戦略を考える際の方法についてお教えします。」
ミエナはまず、戦略と政策の違いから説明を始めた。
「まず、戦略とは、長期的な目標を達成するための全体的な計画です。これに対して政策は、戦略に基づいて策定される、具体的な行動や施策のことです。そこで重要なのが、戦略をどのように考えるかということです。」
ミエナは、戦略を策定する際のステップを説明し始めた。
「皆さんに地球政府を創るという課題に取り組んでもらいます。まずは、次のステップに従ってどのように取り組むかみていきましょう」といって、ミエナは地球政府創設のステップを説明し始めた。
1. ビジョンの設定
「最初に、地球政府が目指すビジョンを明確にしましょう。ビジョンは、戦略全体の核であり、全ての行動の指針となるものです。これは、全世界の人々が共感できるものでなければなりません。例えば、持続可能な社会の実現、平和の確立、人権の尊重といったテーマが考えられます。」
エイレネは目を輝かせながら言った。「私たちが目指すのは、すべての人々が平等に発言し、協力し合う社会よね。環境問題や人権問題に取り組むことで、誰もが安心して暮らせる未来を作りたいわ。」
パンドラも同意して、「それが地球市民社会の実現に繋がるのね。みんなが同じ目標に向かって進むことが大事だわ」と言った。
2. 現状分析と課題の特定
「次に、現状分析を行い、地球政府を創る上での課題を特定しましょう。現在の国際社会における問題点や、各国の状況を把握することが必要です。」
プロメテウスが腕を組んで考え込んだ。「気候変動、人口増加、戦争やテロ、人権侵害…これらの問題が地球政府の成立を妨げている。これらの課題を解決する方法を考えなければならない。」
ディアナは深くうなずきながら、「そして、各国が協力しやすいような枠組みを作ることも重要ね。共通の利益を見つけることが鍵になるわ」と言った。
3. リソースの把握と活用
「次に、利用可能なリソースを把握し、それを効果的に活用する方法を考えましょう。これは、目標を達成するために使える資源、時間、技術、人的ネットワークのことです。」
パンドラが熱心に質問した。「私たちにはどんなリソースがあるのかしら? それをどうやって最も効果的に使うかを考える必要があるわね。」
ミエナは頷いて答えた。「そうです。地球政府を創るためには、各国からの支援や、国際機関との協力も重要です。また、地球全体を動かすための新しい技術や資源を最大限に活用することが求められます。」
4. リスクと不確実性の評価
「戦略を立てる際には、リスクと不確実性を考慮しましょう。未来には多くの予測不可能な出来事が存在します。それらに対して柔軟に対応できる戦略を作ることが重要です。複数のシナリオを想定しながら計画を立てることが効果的です」
エイレネが真剣な表情で言った。「リスクを最小限に抑えるためには、どのようなシナリオを考えておくべきかしら?」
ミエナは微笑んで答えた。「例えば、自然災害やパンデミック、国際紛争など、さまざまなシナリオを想定し、システム思考でシミュレーションをしながらその対策を考えることが重要です。また、変化に迅速に対応できるような柔軟性を持たせることも必要です。」
5. 実行計画の策定
「最後に、戦略に基づいた具体的な実行計画を策定しましょう。これは、地球政府を創るための具体的なステップや、各政策の優先順位を決めることです。」
ディアナが静かに言った。「具体的な行動計画を立てて、それを実行に移すことで初めて現実のものになるのよね。」
ミエナは同意し、「その通りです。実行計画には、進捗をモニタリングし、必要に応じて調整するシステムも含めることが重要です」と続けた。
ミエナの講義が終わり、エイレネたちはそれぞれが考え込んでいた。地球政府を創るという壮大な目標に向けて、彼らの心は一層強固なものとなった。
エイレネが力強く言った。「これで私たちは、具体的な目標に向けて動き出せるわね。地球政府のビジョンを明確にし、それに向けた戦略と実行計画を立てることが大事だわ。」
プロメテウスが真剣な表情で答えた。
「私たちの戦略がしっかりしていれば、地球全体を動かすことも可能だ。まずはビジョンを明確にし、次に具体的な行動計画を立てよう。」
パンドラも興奮を抑えきれない様子で、「全てが一つに繋がるように、慎重に進めていきましょう!」と声を上げた。
ディアナは穏やかな微笑みを浮かべながら、「私たちが目指す未来のために、一歩一歩確実に進めていくわ。これからが本当の挑戦ね」と言った。
こうして、エイレネたちはミエナから出された地球政府創設の課題に取り組むため、新たな一歩を踏み出した。彼らの旅はまだ始まったばかりだが、未来を変えるための強い決意と共に、地球規模の挑戦に向けて進んでいくのだった。
エイレネはその夜、『戦略』という予想もしなかったことを習ったので少し興奮していた。
「だってそれは、戦争用語じゃない!? 平和と矛盾しないかしら?」
さらに、ミエナの話を聞いた時に「リスクと不確実性の評価が大切で、『未来には多くの予測不可能な出来事が存在します』と言っていた」
「不測の事態が起きるっていうことは、私たちの地球政府樹立と温暖化の阻止が何かトンデモナイことが起きて失敗や頓挫してしまうかもしれないってことでしょ! いやだな!」
ベッドの上で、枕をちょっと叩いたりしました。
「だいたい、不測の事態って何よ! 前もって予測することができないから不測っていうんでしょ。それなのに『それらに対して柔軟に対応できる戦略を作ることが重要です。複数のシナリオを想定しながら計画を立てることが効果的です』なんちゃってミエナは言うけど、訳が分からない!」
さらに枕を強く叩くエイレネでした。
突然、枕が「痛い!」って叫びました。
それは一緒に寝ていたパンドラのお腹だったのです。
エイレネは飛び起きて、パンドラに謝りました。
「これが本当の不測の事態ね!」
エイレネの言葉に、パンドラはちょっと痛いお腹をさすりながら腹を抱えて笑い出しました。
二人にはまだこの時、彼女らの前に突如として現れる『不測の事態』の本当の大変さを知る由もなかったのである。
4-7「地球政府が目指すビジョン」の明確化
ガイア地球研究所の広い講義室に、4人が集まっていた。
ホログラムのミエナが彼らの前で静かに輝いていた。
今日の課題は、「地球政府が目指すビジョンを明確にする」という重要なテーマだ。
ミエナは、静かに話し始めた。
「皆さん、地球政府を樹立するためには、まずどのようなビジョンを持つかが極めて重要です。そのビジョンが、全ての行動の指針となります。今まで学んできたことを元にして、どのような未来を目指すのか、一緒に考えていきましょう。」
エイレネは考え込んだ表情で、仲間たちの方を見た。これまで彼女たちは、多くの地球規模の問題に取り組んできたが、解決策を見つけることは簡単ではなかった。特に、各国の文化や価値観の違いが大きな壁となっていることを痛感していた。
「そういえば、以前Big5の人格特性について学んだとき、シュワルツの文化価値理論についても教わったことを思い出すわ」とエイレネが言った。
「シュワルツは、各国や文化によって価値観が異なることを示していて、それがしばしば国際的な対立の原因になると言っていたわね。」
パンドラが頷きながら応じた。
「そうね。国ごとに『伝統や集団主義を重んじる国』もあれば、『個人の自由や自己表現を重視する国』もある。それぞれの価値観が違うから、国際的な会議でも意見がぶつかり合って、合意を得るのが難しくなるのよ。」
プロメテウスが少し重々しく言った。
「そうだ。各国が異なる価値観を持つ以上、完全に一致することは難しいだろう。だが、その違いが対立を引き起こす原因になっている。だからこそ、これを乗り越えるためには、民主主義が絶対に必要だ。」
ディアナも同意して言った。
「対話と協力がなければ、私たちが目指す地球政府は機能しないわ。民主主義があれば、異なる価値観を持つ国々も平等に発言し、対話を通じて合意を形成できる。それがなければ、独裁的な体制が生まれて、権威主義国家が台頭し、また対立が激化するでしょう。」
エイレネはしっかりとした口調で言った。
「地球政府が目指すビジョンとして、私たちは民主主義がきちんと機能することを絶対的に必要不可欠な条件にしなければならないと思うわ。世界中の人々が、平等に意見を述べ、共に未来を築く権利を持つこと。それこそが、地球政府の最も重要な原則になるはずよ。」
プロメテウスが少し微笑みながら答えた。
「その通りだ、エイレネ。民主主義がなければ、どれだけ良い政策を作っても、独裁的なリーダーにより歪められてしまうだろう。だからこそ、民主主義が正しく機能する仕組みを作ることが、地球政府のビジョンの中心に据えるべきだ。」
パンドラが嬉しそうに言った。
「つまり、地球政府のビジョンは、すべての人が平等に発言し、対話を通じて問題を解決すること。そして、これが実現されるためには、強固な民主主義の仕組みが不可欠ということね。」
ディアナも笑顔で続けた。
「そのビジョンなら、私たちが目指している地球市民社会が現実になるわね。異なる価値観を持つ国々が、対立するのではなく、互いに理解し合い、協力して未来を作る社会。それこそが私たちの求める姿よ。」
ミエナは微笑みを浮かべながら、エイレネたちに言った。
「皆さん、素晴らしい議論でした。異なる価値観を持つ世界で、民主主義が機能することが不可欠という結論に至ったのは正しい考えです。これが地球政府のビジョンとなり、そのビジョンをもとに、具体的な政策や戦略が生まれていくでしょう。」
エイレネは満足げに頷き、ミエナに向かって言った。
「ありがとう、ミエナ。これで、私たちは地球政府が目指すべきビジョンをはっきりと見据えることができたわ。」
プロメテウスが力強く言った。
「民主主義を基盤とした地球政府なら、世界中の国々が協力し合い、平和と持続可能な未来を築くことができる。これこそが、私たちが目指すべき方向だ。」
パンドラも同意しながら、「これで一つの方向が見えたわね。民主主義が全ての基盤となることで、私たちは対立を解消し、共通の目標に向かって進むことができるわ」と言った。
ディアナは少し微笑んで付け加えた。
「私たちがこれまで学んできたことが、ここで一つに繋がったわ。民主主義がしっかりと機能すれば、地球規模の問題も解決に向かう道が見えてくるはずよ。」
ミエナは最後に静かに言った。
「皆さんが決めたこのビジョンは、地球政府を成功に導く強力な原則となるでしょう。このビジョンをもとに、次は具体的な行動計画や戦略を考えていきましょう。」
こうして、エイレネたちは地球政府が目指すビジョンを「民主主義が正しく機能する世界」とすることに決めた。
異なる価値観を持つ国々が、平等に対話し、共に未来を築くためには、民主主義という基盤が必要不可欠であると理解したのだ。
彼らは、このビジョンをもとに、地球政府の創設に向けた新たな一歩を踏み出す準備を整えた。これからの道のりは決して容易ではないが、彼らは共通のビジョンを胸に抱き、希望と決意を持って未来へと歩み始めたのだった。
エイレネは、その夜、「異なる価値観を持つ国々が、平等に対話し、共に未来を築く」という壮大なイメージを胸に抱きながら眠りについた。
「素晴しい未来という建物ができるわ!」
期待を膨らませて人々が異な価値観というレンガを持ち寄って、平等に話し合いながら美しい建物を築き始めた。どんどんと大勢の人々が多様な価値観のレンガを持ち寄って平等に話し合って建物を造っていた。しかし時が経つにつれて、あまりにも多様なレンガが持ち寄られたことと、平等な話し合いの結果、誰も全体を統一的に支持する人が現れないために、だんだんとその建物は傾き始めた。
「このままではピサの斜塔になってしまう!」
エイレネが心配し始めたその時に、宅配のピザが届いた。
大勢の人たちは美味しそうにピザを食べながら建設途中の建物を見て大笑いを始めました。
「これじゃあ、ピザのシャトーだ!」
「ピザのお城や大邸宅になってしまうぞ!」
「いやいやワインの生産者のシャトーだ!」
「誰かワインも頼んでくれ!」
などと、ワイワイガヤガヤと賑やかな建築現場になってしまいました。
それを天空から見ていた神様が、「単に多様な価値観と平等な対話だけではシステムの複雑系が示唆するような自己組織化はなかなか起きないもんじゃのう」と独り言をもらした。
「バベルの塔の時のように、建築中のこの建物を壊して、全員の価値観がバラバラなのを良いことに争いを始めさせてしまおうか!」
そのときエイレネはとっさに目が覚めて、「だめ! 価値観が違うからこそ民主主義が必要なの! これからみんなが食事を終えてどうするか見ていてください!」といった。
食事を終えて、傾いた建物を笑っていた人々の誰からともなく、「リーダーが必要だ、誰かリーダーになってくれる人はいないか?」という声が沸き上がった。
それに応えて何人かの人が手を上げた。「俺は建築デザイナーだ!」「オレは建築事務所の設計技師だ!」「私はあの世界的にも有名な建物を建設した建設会社のオーナーよ!」などと、どの人も優秀そうな人たちだ。
「よし!民主主義的に選挙をしよう!」人々が大声で叫びながら建築現場はお祭りのような騒ぎになった。一人一人が公約を発表し自由で公正な選挙が実施された。
それを見ていたエイレネが、バベルの塔を壊した神様にウィンクして言った。
「ほらね。様子を見ていて良かったでしょ! あなたの時代には民主主義が生まれていなかっただけなのよ。民主主義って複雑系の自己組織化みたいでしょ!」
エイレネは得意げにその神様に語った。
その神様も「なるほど民主主義とはすばらしいものなんですな。私が言葉をバラバラにして、二度と天まで届くような高い塔を建てさせないようにしたはずなのに、こうやって言葉は違っても一つの意志にまとまって社会や国家を動かすことができるんですな!」といって、感慨深げに去っていった。
久々に気持ちよく目覚めたエイレネは、もちろんみんなにこの夢の話をして、みんなから賞賛の眼差しを得たことは言うまでもないですよね。
4-8 ビジョンを実現するための地球政府の具体的な組織と制度
4人は、地球政府が真の民主主義と平和維持機構を統合した強力な組織となるべきだという結論に到達していた。
彼らは、透明性、公平な選挙、法治主義、基本的人権の尊重といった理念を基に地球政府を築くという壮大なビジョンを持っていた。
しかし、その理念を実現するためには、より具体的な形が必要だと感じていた。
ディアナがふと考え込み、ミエナに問いかけた。
「私たちが描いているビジョンは明確になってきたけれど、これを具体的な組織や制度としてどう形作るかがまだはっきりしないわ。ミエナ、具体的にどんな組織や制度を作れば、この地球政府は真の民主主義と平和を実現できるのか、教えてもらえるかしら?」
ミエナはその質問に微笑んで頷き、慎重に言葉を選びながら話し始めた。
「まず、地球政府を運営するための3つの基本的な柱が必要です。」
ミエナはスクリーンに3つのカテゴリーを表示した。
「それは、立法機関、行政機関、そして司法機関です。この三権分立の原則を地球規模に適用し、互いに独立しながらも、バランスを取って権力を行使する仕組みを構築します。」
1. 地球議会(立法機関)
「最初に必要なのは、地球規模での立法機関、つまり地球議会です。」
ミエナはスクリーンに「地球議会」と書かれたラベルを大きく表示させた。
「この地球議会は、地球市民の代表が集まり、国際的な法律や政策を議論し、決定する場です。すべての国、地域、民族、性別が平等に代表され、比例代表制を基に選挙が行われます。これにより、すべての市民が政治に参加する権利を持ち、一票の価値が平等に保たれます。」
「比例代表制か。」
プロメテウスが頷きながら言った。
「それなら大国だけが有利になることはなく、小さな国や少数民族も発言権を持てるわけだな。」
ミエナは続けた。
「さらに、地球議会は二院制にすることが考えられます。第一院は人口に基づいて選ばれ、第二院は各国や地域の平等な代表が集まる構造です。これにより、人口の多い国と少ない国のバランスを取ることができます。どちらの院も、地球規模での法律や規則を議論し、地球市民全体に利益をもたらす政策を決定します。」
エイレネは「その案に、民主主義の指数でウエイト付けをするということも付け加えたい」といった。
ほかの3人もしっかりと同意した。
2. 地球政府(行政機関)
「次に必要なのが、行政機関としての地球政府です。」
ミエナは「地球政府」と書かれたラベルを強調し、続けた。
「地球政府は、地球議会で決められた政策や法律を実行するための組織です。地球規模の課題に対応するために、いくつかの専門機関が必要です。例えば、環境保護庁や食糧安全保障機関、平和維持機関などが地球政府の下で活動し、それぞれの分野で具体的な施策を実行していきます。」
「それぞれの課題に対応する専門機関があれば、問題ごとに迅速に対応できるわね。」ディアナが感心して言った。
「そうです。現在の国連の諸機関の権限よりもはるかに強力になります。各国の主権を尊重しつつ、地球全体に関わる問題に対しては、地球政府が主導権を握る形です。」
3. 地球裁判所(司法機関)
「最後に、司法機関としての地球裁判所が必要です。」
ミエナは「地球裁判所」のラベルを示した。
「地球政府が真の民主主義を維持し、基本的人権を守るためには、公正な司法制度が不可欠です。地球裁判所は、国際法に基づいて、国家間や地域間の紛争、または地球規模での人権侵害を裁く役割を持ちます。この裁判所は、地球全体に影響を与える重大な問題を解決するための最後の拠り所となります。」
「それは、国際的な法律に基づいて運営されるってことね?」
エイレネが尋ねた。
「その通りです。そして、地球裁判所は独立した機関として、地球政府や各国政府からの影響を受けないことが大切です。司法の独立が確保されることで、権力の濫用を防ぎ、地球市民全体の信頼を得ることができます。」
4. 地球政府軍(平和維持機構)
次にミエナは、平和維持機構について説明を続けた。
「プロメテウスが指摘した通り、地球政府が平和を維持するためには、地球政府軍が不可欠です。この組織は、地球政府の軍事的な腕として、国際的な紛争や危機に対応します。各国の軍事力を協調させ、必要な時には国際的な安全保障を維持するための行動を取ることができます。」
「地球政府軍は、各国の軍を超えた存在として機能するの?」
パンドラが尋ねた。
「そうです。各国の軍は独立して存在し続けますが、地球政府軍は地球規模の問題に対応するための調整役です。例えば、紛争地域に介入したり、核拡散を防止したり、テロリズムの脅威に対処する役割を果たします。また、軍縮協定の履行を監視し、平和的な解決を促進します。」
プロメテウスが力強く頷いた。
「これで、地球政府は力を持ちながらも、民主的に運営されることができる。軍事力が一方的に支配するのではなく、法に基づいて平和を維持できるようになるんだな。」
エイレネが、地球政府軍と地球政府の警察機構との関係について質問した。
ミエナは、少し専門的になるけど大事なことなので、全員のタブレットに資料を表示した。そこには、次のように書いてあった。
***********************
★特別メモ:地球政府軍と地球政府の警察機構の関係
地球政府が設立されると、地球政府軍と地球政府の警察機構はそれぞれ異なる目的と役割を持ちながらも、密接に連携して地球全体の安全と秩序を保つために機能します。以下に、その関係性と役割分担を説明します。
1. 地球政府軍の役割
目的:地球規模の外的脅威に対する防衛と、加盟国の主権の保護を目的とします。
役割:地球政府軍は、主に国家間の紛争や、国家や地球規模の環境災害への迅速な対応を担当します。また、国際的なテロ対策や各国の安全保障の維持、あるいは特定地域での大規模な災害支援を行う部隊も含まれます。
特徴:世界の主要国が協力して結成した多国籍部隊で構成され、平和維持活動や危機管理において他国や地球政府の機関と連携して活動します。また、必要に応じて国家の内政問題への介入も行いますが、国連と異なり強力な指揮権を有している点でより権限が強い組織です。
2. 地球政府警察機構の役割
目的:地球全体の社会秩序の維持、法の執行、犯罪防止を目的とし、市民の日常生活の安全を確保します。
役割:警察機構は、地球規模での犯罪(国際的な組織犯罪、人身売買、サイバー犯罪など)を取り締まる一方で、国内の治安維持や地域の安定化を担当します。地球政府の法体系を市民に適用する責任も担い、各地域や都市での治安維持活動を実施します。
特徴:地球政府警察機構は、各国の警察機関や法執行機関との協力体制を構築し、広範囲で活動する国際的な警察組織です。また、AI監視システムや国際データベースを活用し、犯罪の未然防止や即時対応を可能にするなど、最新のテクノロジーが導入されています。
3. 関係性と協力体制
地球政府軍と警察機構は、異なる役割と目的を持ちながらも、以下の点で協力関係を築き、情報共有や共同作戦の実施を通じて相互に補完し合います。
情報の共有と協力:地球政府軍と警察機構は、サイバー犯罪やテロ組織など、国境を越えて影響を及ぼす脅威に対して情報を共有し、必要に応じて合同作戦を展開します。たとえば、大規模なテロ事件が発生した場合、軍と警察機構が連携して迅速に対応できる体制が整えられています。
危機管理と緊急対応:自然災害やパンデミックなどの緊急事態においては、軍が地域に展開し、警察機構が現地の市民保護や避難誘導を担当します。警察機構が地元の治安維持に専念する一方、軍は支援活動や復興支援を行います。
訓練と標準化:両組織は共通の基準とルールに基づく訓練を受け、平時においても緊急時の対応力を強化します。共通の装備や指令系統を持つことで、迅速な意思決定と行動が可能です。
法の順守と倫理的制約:地球政府警察機構が法の執行と倫理面における監視役も担うことで、地球政府軍の行動に対するチェック機能が働くようになっています。これにより、地球政府軍の介入が市民の人権や国家の自治に悪影響を与えないよう、警察機構がバランスを取ります。
4. 対立と調整
地球政府軍と警察機構が異なる目的を持つ以上、時には管轄や手段をめぐって対立が生じることもあります。たとえば、特定の地域で治安悪化が進んでいる際に、軍の介入が過度に強力になることが懸念される場合、警察機構は軍と協力しつつ、必要以上の武力行使を避けるよう監督します。
こうした対立が発生した場合、地球政府の中立的な調停機関が仲介に入り、軍と警察機構の目的がバランスよく果たされるよう調整が行われます。
5. 最終的な目的の共有
地球政府軍と警察機構は、いずれも地球全体の安定と平和を維持するという最終的な目的を共有しているため、根底にある理念が一致しています。彼らの連携により、地球政府は個々の国家の利害を超えた、地球全体の人類の安全と福祉を守るための体制を構築しているのです。
***********************
以上の内容を読み終えた4人は、ミエナの具体的で詳細な情報に驚くと共に感謝した。
エイレネは、今日はとっても詳しい地球政府の軍と警察の関係を知ることができて、先日の「民主主義と暴力は両立しない」といって地球政府軍について悩んでいた時のことを思い出した。
「警察も軍隊も必要な時はとても助かるな」エイレネは独り言でつぶやいた。
「それと、ちょっと違うけど、不測の事態に備えることも必要だとミエナが言っていたよね」
「そうだ!異常気象による台風や竜巻、洪水や土砂崩れ・・・不測の事態って自然災害でもたくさんあるよね。異常気象とは違うけど地震や津波、火山の大規模噴火なども世界各地で起きている。そういう時には大規模な人員で災害現場に行きつけるトラックやヘリコプター、大型の船舶や病院船など、軍隊が持っている人員や装備はとっても役に立つもんね。」
そこまで思いついた時に、さらにひらめきが走った。
「そうよ!地球政府軍は軍事力だけではなく、災害時の救援や復旧などで大活躍できるじゃない! まるでサンダーバードだわ!」
そう思いついた時に、エイレネの足に雷のような激痛が襲った!
ひらめ筋(脹脛の筋肉)がつったのだ! 痛さで飛び起きたエイレネは、筋肉痛が収まるのをじっと我慢しながら、今思いついたアイデアを忘れずにみんなに話そうと強く心に刻んだのでした。
「忘れっこないか、これだけ痛い思いをしたのだから・・・。マコテス所長ならこれをきっと『本当の生みの苦しみだ』なんていうだろうな」
エイレネは笑うたびに激痛が走るヒラメ筋を押さえながら、嬉しいやら可笑しいやら痛いやらで大変な目に遭ったのでした。
朝になってみんなにサンダーバードのような地球政府軍の災害時の役割の話をした。
プロメテウス曰く「エイレネのヒラメ筋。これが本当の不測の事態だ!」
4-9 地球憲法草案:真の民主主義の基本法
ミエナが4人に向けて、地球政府が真の民主主義を実現するための制度や組織の全体像を語り続けていた。
地球議会、地球政府、地球裁判所、そして平和維持機構の具体的な役割が次々と明らかになり、彼らのビジョンが少しずつ形を取っていく中、最後にミエナが話題にしたのは、地球政府を規定する基本的な法体系、つまり地球憲法(草案)だった。
ミエナはスクリーンに「地球憲法草案」という言葉を表示し、説明を始めた。
「地球政府を成り立たせ、すべての人々が平等に自由と権利を享受するためには、明確な基本法が必要です。それが地球憲法草案です。これにより、地球規模での政治、経済、社会活動が公正かつ民主的に運営され、すべての人が守られるようになります。」
エイレネが興味深そうに聞いた。
「地球憲法草案がどういうものか、もう少し詳しく教えてもらえる?」
ミエナは優しく微笑んで答えた。
「もちろんです。地球憲法草案は、地球政府の根本的な規範となり、あらゆる政策や制度を規定する基礎となります。民主主義、法治、人権、自由といった基本的価値観を明文化し、それに基づいて地球政府の活動が行われるのです。」
1.地球憲法草案の柱:民主主義の実現
「まず、地球憲法草案の中心には、真の民主主義があります。」
ミエナは話を続けた。
「すべての地球市民が平等に選挙権と被選挙権を持ち、自由で公正な選挙を通じて、地球議会や地球政府のリーダーを選ぶことができます。そのリーダーは任期4年、二期までで多選禁止が絶対の条件です。また、言論の自由や集会の自由も保障され、すべての市民が政治に参加し、自分の意見を表明する権利が認められます。」
「つまり、誰もが政治に関わる権利を持つということね。」
ディアナが深く頷きながら言った。
「それが地球全体で保証されるのは大きな進歩だわ。」
2.基本的人権の保護
「次に重要なのは、基本的人権の保護です。」
ミエナはさらに説明を続けた。
「地球憲法草案は、すべての地球市民に対して生存権、自由権、平等権などの基本的な人権を保障します。これには、言論の自由、信教の自由、集会の自由、表現の自由などが含まれます。また、ジェンダー、民族、宗教などによる差別は一切許されず、すべての市民が法の下で平等に扱われます。」
エイレネは感心しながら言った。
「つまり、すべての人が平等で、誰もが自由に生きられる社会が作られるのね。」
「そうです。」ミエナは微笑んで続けた。
「さらに、基本的人権の保護は、地球政府だけでなく、各国の政府にも適用されるため、どの国もこれに違反することはできません。すべての人々が、地球憲法によって守られ、国際的な法的保護を受けることができるのです。」
3.法治主義と司法の独立
「次に欠かせないのは、法治主義です。」
ミエナは、さらに地球憲法のもう一つの柱を説明した。
「法の支配がすべての市民、政府、そして地球政府自身に対して適用され、誰もが法に従って行動しなければならないという原則が徹底されます。地球憲法に基づいて、法律が制定され、誰もがその法律の下で平等に扱われるべきです。」
「それによって、権力が乱用されないようにするのね。」
プロメテウスは理解を深めながら言った。
「法律がしっかりと守られることで、公正な社会が維持されるんだ。」
ミエナはさらに、「そして、この法治主義を支えるのが、地球裁判所の独立性です。」と付け加えた。
「地球政府のあらゆる行動や政策が、法律に従って公平に裁かれるため、司法が完全に独立した存在であることが不可欠です。地球憲法に違反する行為があれば、裁判所がそれを正し、市民の権利を守る役割を果たします。」
4.持続可能な社会の構築
「最後に、地球憲法には持続可能な社会を実現するための条項も含まれます。」
ミエナは環境の重要性について話し始めた。
「地球憲法草案は、未来の世代に対する責任を明記し、地球環境の保護や持続可能な資源利用を求めます。すべての国や市民が、地球環境を守るために協力し、持続可能な発展を目指すことが義務づけられます。」
「環境問題も、憲法の中でしっかりと保護されるのね。」
エイレネは微笑んだ。
「未来の世代のためにも、私たちは今、地球を守る責任があるわ。」
「そうです。」ミエナは頷いた。
「持続可能な社会を作ることは、ただ現在の問題を解決するだけではなく、将来の世代に安全で豊かな地球を引き継ぐためにも欠かせない要素です。」
5.地球憲法草案の完成
ミエナは説明を締めくくり、4人を見つめた。
「このように、地球憲法草案は、地球政府が真の民主主義を実現し、すべての人々の基本的人権を守り、法治主義に基づいて公正な社会を築くための土台となります。また、持続可能な社会を目指し、地球環境の保護や未来の世代への責任も明確に規定されます。」
ディアナは感銘を受けたように頷いた。
「これなら、地球全体が平等で公正な社会になるわね。」
プロメテウスも同意した。
「地球憲法草案があれば、権力の暴走も防げるし、すべての人が守られる。これがあれば、私たちは平和と民主主義を本当に実現できるな。」
エイレネは微笑んで言った。
「私たちが目指す地球政府は、これで完全な形になったわ。これがあれば、どんな未来でも乗り越えられる。」
6.未来を守るための基本法
こうして、4人は、地球政府の地球憲法草案がどのように世界中の平等、自由、平和、そして持続可能な未来を守るために機能するかを理解した。
すべての市民が法の下で平等に守られ、次の世代にまで責任を持つ社会の構築が、この地球憲法草案によって実現される。
「これが、私たちが作る新しい未来の基礎ね。」
エイレネは静かに微笑み、仲間たちを見つめた。
「これで、ようやくすべてが揃ったわ。」
「地球憲法草案の下で、すべての人々が平等に生きる未来が見えてきた。」
プロメテウスも力強く頷いた。
「さあ、次はこの地球憲法草案を世界に広め、実際に実現するための旅に出る時が来たわ。」
パンドラは意気揚々と微笑んだ。
こうして4人は、地球憲法草案を基にした新たな未来を築くため、次なる冒険へと再び歩み出したのだった。
ミエナたちは授業が終わってからも、学習スペースで今日の地球憲法草案について話し合った。
地球憲法そのものは、地球政府や地球議会ができて、改めて草案が創られて、議会での審議と議決を経て、地球市民による直接投票によって最終的に決定されることになるだろうということになって、80億人の直接投票ってどんなことになるんだろうかと創造を巡らしていた。
エイレネは首をかしげながら「選挙権を持つ人が20歳以上の人だとすると、世界人口は80億人くらいで20歳未満の人が25億人くらいだから、55億人になるのね。凄い人数の人々による投票だね」といった。
プロメテウスは、「インドで行わる選挙も総人口が14億人くらいで20歳未満の人口は4億人くらいなので10億人の選挙が既に現実に行われているんだよ」と言った。
パンドラは「その5.5倍の人々による選挙ってやっぱりすごいですね」といった。
ディアナは「地球政府や地球議会ができても、直ぐには全ての国が完全な民主主義になるのではなく、権威主義や独裁主義などの国が残っているだろうし、民主化革命で誕生したばかりの民主主義国家もあるだろうから、地球市民全員が参加する選挙っていつになったらできるようになるのかな?」
エイレネ、「それは明日ミエナに聞いてみようよ!」といった。
翌朝、講義室で開口一番、エイレネはミエナに昨日の質問をした。
それに対してミエナは「それを決めるのも地球政府と地球議会の役割ですね」と言って、答を人類に丸投げした。
エイレネたちは、そうですよねと納得してくれた。
ミエナの横で、マコテス所長が小さく囁いた。
「私がいつも君にやっている『丸投げ』をずいぶんとうまく修得したね!」
ミエナはマコテス所長に応えた。
「私だって、エイレネたちに負けないくらい成長しているんですよ!」
マコテス所長は思わずミエナいった。
「えっ! エイレネたちまで『丸投げ』を学んでしまったのかい!?」
マコテス所長は、「エイレネたちが、ガイアからの使命をいつか自分に丸投げしてくる日が来るかもしれない!」とミエナに言った。
ミエナはすかさず「所長が丸投げを止めれば、彼女たちは純真だから、丸投げは良くないことだと直ぐに学びますよ」といった。
マコテス所長は「うううっ! それって、結局、私の丸投げを封じるための仕返しの丸投げだな・・・!」といってフリーズしてしまった。
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★特別付録1.地球規模の問題群を解決するための方法論10選
1. システム思考:問題を単独で見るのではなく、複数の要素がどのように相互作用しているかを全体として捉えることで根本原因を見つけ出します。
2. 協働的ガバナンス:政府、民間セクター、市民社会といった異なるステークホルダーが連携し、資源や知識を共有しながら解決策を模索します。
3. イノベーションとテクノロジーの活用:持続可能なエネルギー、スマートシティ、クリーン技術、AI、ビッグデータ、ブロックチェーンなどが代表例です。
4. レジリエンス構築:社会や経済、環境が予測不可能な事態に対して脆弱にならないよう、パンデミックや自然災害、経済危機などへの対応力を強化します。
5. サステナビリティ・トランジション:従来の資源消費型の社会経済システムから、持続可能なシステムへ移行することを目指す方法です。
6. パートナーシップとグローバル協力:国際機関や多国籍企業、NGOが連携し、協調して問題解決に取り組むことを目的とします。
7. エビデンスに基づく政策立案:科学的データや実証的な証拠に基づいて政策を策定し、効果的かつ持続可能な解決策を導入するアプローチです。
8. 教育と意識向上:人々の意識や行動の変化が不可欠です。持続可能な発展や環境保護、社会的平等の重要性を広めることで、長期的な変革を促します。
9. インクルーシブな政策と社会参加:女性や少数民族、弱者などの社会的に取り残されがちな人々の声を反映させ、政策決定過程における多様性を確保することで、より公平な解決策が導かれます。
10. リーダーシップの育成と能力強化:強力で道徳的なリーダーシップが不可欠です。各国のリーダーや社会の変革者が、持続可能な未来に向けて行動するための能力を育成することが重要です。
エイレネたちは、ミエナに「これらの方法論の内で、私たちはこれまでにいくつ使えたかしら?」と聞いた。
ミエナは、直ぐに「これらの方法論を使ったのは、全て私です。エイレネさんたちは、私に質問をしただけですよ!」と答えた。
エイレネたちは全員が顔を赤くしながら、「そ、そ、そうだったかしら・・・」といって、質問も時には注意しないと良くない結果を招くことを学んだのでした。
★特別付録2.社会や国家から世界を変革するための方法論10選
1. 社会起業:環境や貧困、不平等などの問題に焦点を当て、それを解決する製品やサービスを提供します。利益でなく、社会的インパクトを重視します。 従来の慈善活動に比べて持続可能で、自立的に成長できるビジネスモデルを構築するため、長期的な変革が可能です。市場を通じて、問題解決を効率的に推進できる手段です。
2. デジタル民主主義:オンラインでの意見交換や投票、デジタルプラットフォームを使った市民参加がこれに含まれます。
3. ユニバーサル・ベーシック・インカム:全ての市民に対して、最低限の生活を維持できる一定額の所得を無条件に支給する制度です。貧困対策や労働市場の変化に対応するための手段として注目されています。
4. パブリック・プライベート・パートナーシップ(PPP):政府と民間企業が協力して、インフラ整備や公共サービスの提供を共同で行う手法です。
5. シビック・テクノロジー:社会問題を解決するために、テクノロジーを市民の手に委ねることです。オープンソースの技術やアプリを使って、市民が自主的に社会課題に取り組むためのプラットフォームを提供します。
6. 脱成長:経済成長に依存しない持続可能な社会の実現を目指す概念です。消費主義を抑え、環境への負荷を減らし、社会の幸福や福祉に重点を置く経済モデルへの移行を提唱します。
7. ポリティカル・キャンペーン:社会や国家の変革を目指して、政策変更や社会運動を推進するために組織的に行われる活動です。
8. コモンズ:資源を共有し、管理するためのコミュニティ主導のモデルです。
9. 市民審議:ランダムに選ばれた市民が一定期間、特定の課題について直接的に政策や問題について討論し、合意形成を行うプロセスです。
10. クリエイティブ・エコノミー:文化や芸術、デザイン、テクノロジーなど、創造的な分野を活用して経済を成長させ、社会に貢献する経済モデルです。
エイレネたちは、ミエナに質問した。
「これらの手法の内で、人々が既に試したことのある方法論はいくつあるのかしら?」
ミエナは直ぐに応えた。
「人類にはいろいろな人々がいて、これらの全てが誰かによって試されたものばかりです」
エイレネたちは、大きく頷きながら言った。
「良かった! 私たちが実際に試してみる必要がある方法論は一つもないってことね!」
ミエナはマコテス所長の顔を見ながら、「ほらね。エイレネたちは、立派に成長しているでしょ!?」といった。
マコテス所長は、頭を抱えて講義室を後にした。
所長の後姿を見ながらミエナは読者の皆さんに語り掛けた。
「皆さんは人間だから、これらの方法論を実際に試してみてくださいね。きっといいことがあるはずです。それだけでも、この物語を読んだ価値があると実感できるはずです!」
第4部 完
注意書き
本書はフィクションです。本書に登場する人物、団体、地名、組織、国家、出来事、歴史などは、すべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。万が一、現実の人物や出来事との類似点があったとしても、それは単なる偶然です。
また、本書の内容は完全に創作であり、科学的・歴史的・宗教的事実を反映するものではありません。本書に登場する技術、魔法、超常現象などはすべて架空のものであり、現実とは異なります。
本書では社会問題をテーマとして扱うことがありますが、特定の思想・信条を読者に押し付ける意図はありません。登場する人物の意見や行動は、著者や出版社の見解を代表するものではありません。
イケザワ ミマリス
平和を構築するためのいろいろな方法があることが分かってきました。
次の第五部では、世界の事例から参考になるものを探します。




