↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蛮族女王の娘《プリンセス》 第1部【公国編】  作者: 枕崎 純之助


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/101

第28話 『反転攻勢』

 傭兵《ようへい》たちと戦いを繰り広げるジャスティーナが目にしたのは、プリシラがエミルを背負ってスルスルと背の高い木に登っていく姿だった。

 一見すると奇行に見えるが、ジャスティーナはその意図《いと》を即座に読み取る。


(賭《か》けに出やがった。だけど浅はかだよ)


 案の定、プリシラはエミルを木の上の枝に置いて、自らは木から飛び降りた。

 そして近くの木の枝から枝へと身軽に飛び移りながら地面に着地する。

 その身のこなしに傭兵《ようへい》たちは目を丸くした。

 そこからプリシラは水を得た魚のように林の中を駆け回り、敵に襲いかかっていく。

 その動きにジャスティーナは目を見張った。


(とんでもない運動能力だ。あれがブリジットの系譜に伝わる力か)


 プリシラは短剣で傭兵《ようへい》の肩辺りを鋭く切り裂くと、怯《ひる》んだ傭兵《ようへい》の顔面を容赦《ようしゃ》なく殴《なぐ》りつける。

 傭兵《ようへい》は大きくふっ飛ばされて背後の木の幹に激突し、一撃で気を失った。

 怒声を上げて次々と襲いかかる傭兵《ようへい》たちだが、プリシラの動きを捉《とら》えられる者は1人もいない。

 プリシラは木々の間を飛ぶように駆け抜け、短剣で敵の腕や肩を次々と斬りつけ、悲鳴を上げる相手を殴《なぐ》りつけ蹴《け》り倒した。


 その打撃の強さはすさまじく、傭兵《ようへい》たちは皆一様に一撃で失神してしまう。

 攻撃の際にプリシラの腕や足の筋肉が大きく盛り上がる様子をジャスティーナは初めて見た。

 ブリジットやクローディアの強さを目の当たりにしたことのないジャスティーナは記憶の中の忌々(いまいま)しい黒き魔女のことを思い返す。

 かつてダニアの女たちの故郷である砂漠島を力と恐怖で支配した黒き魔女アメーリアも、ああして異常な筋力を誇っていた。


(あのお嬢ちゃん……あの若さであれほど強いのか)


 ジャスティーナ同様、傭兵《ようへい》たちもプリシラの強さに目を剥《む》いている。

 その場の空気が変わる。

 傭兵《ようへい》たちの間に困惑が広がっていく。

 そんな空気に苛立《いらだ》った曲芸団《サーカス》の団長が金切り声を上げた。


「おい! 小娘1人押さえ込めないのか! 高い金を払っているんだぞ!」


 その言葉に面子《めんつ》を潰《つぶ》された傭兵《ようへい》団の頭目が、苦虫を噛《か》み潰《つぶ》したような顔で声を荒げた。


「木の上の小僧を先に捕まえろ! 引きずり下ろせ!」


 頭目の言葉を受けてジャスティーナの周りから数人がエミルの確保に向かっていく。

 そのおかげで周囲が手薄になったジャスティーナは一気に打って出た。

 

「うおおおおおお!」


 それまでのらりくらりと緩い動きで敵をかわし防御主体の動きをしていたジャスティーナの突然の攻勢に、傭兵《ようへい》たちは動揺する。

 そんな彼らに対し、ジャスティーナは先ほどまで防御用に持っていた円盾《えんたて》をいきなり投げつけた。


「うがっ!」


 その円盾《えんたて》を側頭部に受けてのけ反《ぞ》る傭兵《ようへい》の首に向け、ジャスティーナは短剣を横一閃(いっせん)させる。

 傭兵《ようへい》の首がザックリと斬り裂かれて血飛沫《ちしぶき》が飛んだ。


「いぎゃああああ!」


 鮮血を舞い散らせて倒れ込む傭兵《ようへい》を尻目に、ジャスティーナは先ほど地面に突き立てた短槍を引き抜いた。

 そして木々の間にいる敵に向かって突撃する。

 敵はジャスティーナの短槍に突き刺されるのを恐れて木の陰に身を隠しながら短弓でジャスティーナを狙《ねら》った。

 だがジャスティーナは至近距離から放たれた矢を、地面を滑《すべ》るようにして避ける。


「なっ……」

「そういう時は頭じゃなくて足を狙《ねら》うんだ」


 そう言うとジャスティーナはそのまま木を回り込むようにして体を反転させ、短槍の柄で傭兵《ようへい》の頭を打った。

 強烈な一撃を浴びて傭兵《ようへい》は思わず倒れ込む。


「うっ……」

「覚えときな。まああの世で役に立つかは知らんが」


 そう言うとジャスティーナは倒れている傭兵《ようへい》の首を容赦《ようしゃ》なく短槍の穂先で貫いた。

 傭兵《ようへい》は目を見開いたまま口から血を噴いて絶命する。


「くそったれがぁぁぁ!」


 仲間の死に逆上した別の傭兵《ようへい》が手斧《ておの》を最上段に振り上げ、思い切りジャスティーナの脳天を目掛けて振り下ろす。

 だがジャスティーナはそれよりも早く短槍の穂先を翻し、その傭兵《ようへい》の手斧《ておの》を持つ腕を手首から斬り捨てた。


「うぎゃぁぁぁぁ!」


 手首から先を失って悲鳴を上げる男の首を、ジャスティーナは短槍の穂先で斬り裂いた。

 男は首から血を噴き出して倒れ込んだまま動かなくなった。


「こんな狭《せま》い場所でも槍は使いようなんだよ」


 ジャスティーナは短槍の穂先近くの柄を握ってそう言った。

 周囲にいる数人の傭兵《ようへい》が思わず怯《ひる》む。

 自分たちとこの女戦士との格の違いを悟ったのだ。


 ジャスティーナはその隙《すき》に視線を転じる。

 その視線の先ではプリシラを取り囲むようにしていた傭兵《ようへい》たちが次々と彼女に襲い掛かっていた。

 だが、プリシラは八面六臂《はちめんろっぴ》の活躍を見せ、林の中にはすでに10人以上の傭兵《ようへい》が倒れて動かなくなっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。