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いざ王都へ

 4日後。

 ジオードル・ローエス・エルダーブルグ公爵の娘であるクラウシェラ・ローエス・エルダーブルグと、ティルスロン王国第1王子、マルクス・フレンゼル・カーヴァ・クリーアラントの婚約が決定された。

 このために、ティルスロン王国の王城であるエステウォーザ城まで移動してきたのだ。


 領土や財政課関係は既に逆転しているとはいえ、あくまで公爵家は王家に使える立場。

 それに王家にはまだ多数の貴族領がある。

 それらを加えれば、微妙ながら王家の勢力が公爵家を上回っているわね。

 でもまあ、そんなの今は関係無いか。

 あくまで主従関係をはっきりとさせるために、クラウシェラを王城に招いたのだ。

 呼び出したともいうけどね。でも礼はきっちりと果たしていたわ。


『すごく賑やかな所なのね』


 城下町全体が、クラウシェラ一行を歓迎しているように見える。

 まあクラウシェラの乗る超豪華な馬車に加え、荷物などを積んだ馬車4台。それに護衛の騎兵300名。

 そりゃ目立つし、公爵家の旗を掲げているのだから、皆事情は知っているわけよ。

 まあ町自体はゲームで知っているけど、このシーンは知らない。

 なにより、ゲーム画像とリアルでは全然違うわ。


「一応、わたくしの歓迎式典ですものね。この位の演出はするでしょうよ」


 ドライだなー。


『まあ国民が祝っているのは良い事だと思うよ』


「どうせ破棄される婚約ですもの。わたくしにとってはどうでもいい事だわ。今考えないといけない事は、その後どうするかだわ」


 そうなんだよねー。未来を知っているから、彼女はこの婚約には何の興味もないのよねー。

 ヒロインにとってのバッドエンド。要は攻略失敗であったとしても、彼女の婚約破棄はその前に起きる。

 だから何がどうなってもこの婚約には何の意味もない。

 もしかしたらという希望はまだあるにはあるのだけど、クラウシェラの権力と知力の限りを尽くしてもエナ・ブローシャは聖女になった。

 でもそれはゲーム開始前の事。そこまでは変えられない様子は元々あったのよ

 何と言うか乙女の勘? 的な感じ。


 もっと具体的に言えばオーキスの一件ね。

 そりゃしっかりと説得はした。

 でもあたしの様な得体のしれないものよりも、目も前にいるのは確かな自分の仇。

 その辺りはちょっと複雑な感じもするけど、あたしが知るクラウシェラがあそこでオーキスを近習にするとは到底思えなかったのよね。

 だって公爵家の令嬢よ。候補は他にいくらでもいるわ。

 そりゃ窮地を救った事は幾度もあったけど、1度牙を剝いた相手を許す正確じゃないと思ったのよね。

 それでもあえてオーキスを近習にした。

 あの時点で、そこはかとなく感じてはいたのよ。

 あたしの言葉があったとはいえ、ゲーム開始までの流れは多分変えられない。


 でもゲームが始まったら? 多分そこからが本番だと思う。

 でもそれまでに、変えられる範囲は少しでも変えなきゃ。

 未来のために!


 王城は公爵領のヴァンディスト・グロウス城と違って、城塞というより城下町として発展している。

 町を囲む壁はそれなりに立派だしお堀もある。だけど城下町と城の間にある城の壁はそれほど高くはない。

 守りよりも景観と発展を重視した感じ。

 安全への絶対の自信があってこそよね。


 ただそれでもさすがは王城という感じで大きい。

 それに真っ白い外見に青い屋根。

 幾つかある塔も同じ感じ。


『美しさでは、さすがにこっちの方が上ねー』


「当然でしょ。ここは外交の使者を迎える場所でもあるのよ。みすぼらしい城に住んでいる王に誰が敬意を払うのよ。他国から侮られるって事は、それだけで戦争に発展する事もあるのよ」


『厳しい世界ねえ』


「精霊の世界が暢気すぎるのよ。人間の世界なんてそんなものなの。いつでも誰かが誰かを狙っている。個人でも、国でもね」


 さすがに100回も破滅した人の言葉は重いわ。


「一方であたしたちがいた城砦は、戦っても勝てないという威圧を与えるため。役割が違うのよ。でもどちらにも共通の意味があるわ」


『どんな?』


「戦いを未然に防ぐという役割よ。結局は、それが一番大切なの。実際に飾りとしてだけの存在であるのが一番良いのよ」


『そうだね』


 クラウシェラが本心でそう言っているのは、もう心の紙を見なくても分かる。

 ゲームが始まるまでの流れは変えられなくても、そこまでの考え方は変えられるかもしれない。

 考え方が変われば行動も変わる。

 そこから先は、多分ゲームと同じ。無限の自由度と可能性を持ったフリータイム。本番はそこからよ。

 そんな事を考えながら、馬車は城へと入って行った。





 ▼  ▲  ▼





 お城の門を超えて緩い坂道を上ると、そこには噴水のある実に豪華な入り口が控えている。

 ゲームで何度も見ているけど、現実で見るとやっぱり違う。

 クラウシェラを通じてだけど、肌を流れる風。草や花の香。噴水の音。死して美しく荘厳(そうごん)なお城と入り口。

 全部が現実。いやまあ今までもそうだったんだけど、ここまで美しいとね。

 やっぱりモニター越しの絵とは違うって感じちゃうものよ。


 そしてその入り口には2人の男性が立っていた。

 その姿を見るや、クラウシェラの思考が山ほど撒き散らされる。

 そりゃまあそうよね。あの二人共に攻略対象。

 そして王子に近いだけあって、まあ何度も破滅に関わっているのよね。





ここまでお読みいただきありがとうございます。

続きが気になっていただけましたら、ブックマークなどよろしくお願い致します。

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