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(旧)流星の料理人  作者: 紅樹 樹《アカギ イツキ》
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【五皿目】常陸VS朔晦

学校が終わり帰路に着いていた頃、化け物の咆哮が聞こえて、日向は解放せよと言う号令の合図と共にすかさず刀を解放する。

 巨大なトカゲのような尻尾を持った化け物は、日向を目掛けて尻尾を振り下ろす。



 日向は、軽々とかわすと、尻尾は冷たいコンクリートを叩き、硬い粒が宙に舞う。

「なるべく傷つけんなよ!」



 流星に忠告を受けて、日向は分かってる!と、叫ぶ。

 化け物は、口から爆弾のようなものを日向を目掛けて複数吐き出すと、爆弾は、大きな爆発音を上げて日向を襲う。

「わっ!」

 咄嗟に刀を盾にして身を守ろうとしたが、虚しくも、日向の右腕に直撃した。

「大丈夫か?!」



 流星が、飛び出そうとした時、化け物が大口を開けて爆弾を吐き出そうとしたその時であった。

 黒い影が流星の前に現れて、刀を振るった。



 化け物の熱い血飛沫が流星に降りかかる。

「相変わらず生ぬるいことやってのかよ、お前らは」

 流星が、恐る恐る目を開けると、目の前には常陸陸が立っている。



「おお!陸!久し振りだなぁ!」

 戦いの最中だと言うのにまるで緊張感のない挨拶に、常陸は苛立ち怒鳴り声を上げた。

「んなこと言ってる場合か!っとに、相変わらずぬるいな!」



「助けに来てくれたのか、やっぱなんだかんだ言って優しい…」

 流星が続け様に腑抜けたことを口にした時、化け物が鋭い手で引き裂かんと振り上げた。



 しかし、その手は二人の眼前で止まると、どこかからか繊細な女の声が聞こえた。

「これでしょう?あなたが今食べたい物。オムライス」

 化け物は、鼻腔を掠めるケチャップの香りに反応し、ノロノロと振り返ると、ジッと料理を見つめた。



「さぁ、熱いうちに召し上がれ」

 暁がそう言うと、化け物の口からだらだらと生唾が溢れ出し、スプーンを取り、勢いよく食べ始めた。



 あっという間に皿が空になると、辺りに眩い閃光が現れ、化け物は小さな少年の姿になった。

「どうして、分かったの?僕が今一番食べたい物がオムライスだって」

 暁は、優しく目を細めて笑う。



「だって、見えてるから。この目で」

 少年は、瞬きしながら驚いた様子だったが、すぐに納得したのか、フッと笑みを浮かべた。



「そっか…」

「次、生まれ変わってきた時は、もっと美味しいものを食べてね」

「うん…」

 少年は、一筋の涙を流すと、天に昇って行った。



「よーし、帰るぞ、暁美ー」

 朔晦は、呆けている流星達を無視して、さっさと帰ろうとしたが、すぐ暁の正体に気づいた常陸が、刀を突きつけた。



「おい、お前。なんで霊媒師が幽霊なんかと一緒にいるんだ?」

 常陸の問いかけに、朔晦は振り返ることなく口を開く。

「見逃してくんねぇかなぁ。俺、今戦う気ねぇんだけど」



「ふざけんな。そんなん通用する訳ねぇだろ!」

 常陸は刀を構えると、地面を蹴り朔晦を目掛けて飛び出した。

 朔晦は、それに応えるように刀を構えて受け止める。



「ったく、そっとしといてくれって言ってんのに。怪我してもしらねぇからな」

「上等な口叩くじゃねぇか…。あとな。言っとくけど、俺の方が年上だからな!!」



 常陸が、ニヤリと不適な笑みをこぼし、自分のことを同い年区rしに思っているであろう朔晦に、強く年上だと言ううことを宣言すると、刀を振り上げたが、いつの間にか目の前にいた朔晦が消えていた。



 すぐに背後に気配を感じて振り返ろうとした時、朔晦は顔面目掛けて蹴り上げると、常陸体はあっさりと吹っ飛ばされ地面に叩きつけられた。



「なっ…!」

 流星達は思わず目を見張った。

 日向よりも遥かに強いと思っていた常陸が、あっさりと吹っ飛ばされ手しまったのだ。

「なんだ、でかい口叩くから強いと思ってたのに、全然弱いじゃん」

「誰がっ、弱いだって?!」



 常陸は、重い体を起こして口から流れる血を雑に拭い舌打ちをすると、朔晦の言葉に激昂し、地面を蹴って朔晦の懐に飛び込み、刀を突きつける。

 しかし、朔晦は、すでに太刀筋を見切っているのか、全く当たらない。

「くそ…っ」



 常陸が闇雲に刀を振り回していると、朔晦が足を滑らせた。

「もらったぁ!」

 その瞬間を見逃すことなく、心臓を目掛けて刀を振り下ろした。



「朔太っ!」

 暁が、咄嗟に身を乗り出そうとしたが、それは無意味だと言うことがすぐに分かった。



「なーんてな」

 常陸目の前にいた朔晦は、背後に周り、常陸の腕を捩じ伏せ地面に這いつくばらせると、背中に座り首に刀を突きつける。



「テメェ…」

 喉奥から絞り出すような声で睨み付けられるが、朔晦は臆することなく余裕綽々である。

「お前が悪いんだぞ。戦う気がねぇっつてんのに、本気にさせたんだから」

「ふざけるな…っ」



 まだ負けたことを認めたくないのか、常陸は、力を振り絞って起き上がろうとする。

「お、まだやんの?」

 しかし、常陸の思いも虚しく、力尽きて意識を手放してしまった。



「陸!」

 その様子を察して、流星は二人に駆けよると、朔晦はおもむろに立ち上がった。

「だから言ったんだよ、怪我するぞって。これに懲りたら二度と俺には近づくなよ。もし暁美に手出ししたらその時は…」



 朔晦が、全てを言い切ろうとしたが、ふと中途半端に言葉を途切れさせて、軽く息を吸い込むと、冷たい眼差しで流星と日向を睨みつけた。

 すると、二人は背筋にビリビリと電撃のような物が走った。

「誰であろうと容赦はしねぇ。暁美を成仏させるのは、俺だ」

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