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(旧)流星の料理人  作者: 紅樹 樹《アカギ イツキ》
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【二十六皿目】食

全てが終わり軍に戻った時は、世間はとっくに大晦日も年越しのカウントダウンも、正月さえも過ぎ、冬休みも残り一週間を切ろうとしていた。

 皆が軍に戻ると、千影の処罰について話し合った結果、千影の犯した罪は本来ならば、軍を永久追放どころか、死刑に値するものであったが、麻亜夜の目は、龍海のお陰で回復した為、特に厳罰を与えられることはなかった。



 しかし、それでは気が収まらないと朝成が食い下がった為、天道がしばらく考えてから、軍に引き戻すこととし馬た霊媒師エクソシストとして、そして昼彦の護衛として命を賭けて働くことを命じたことで、一連の件は幕を閉じた。



「ああ、そうそう、それから俺から提案があるんだけど」

 天道が何かを思い出したかのように、口を開くと仏頂面で会議に参加していた陸を一瞥して、

「陸もこれからと、昼彦と組ませることにしたから」

 と満面の笑みを浮かべて言った。

「はぁあああ?!おい、おっさん!勝手に決めんな!俺はお前なんか認めねぇっつったろ!!

しかも、こんなチビの護衛とかふざけんな!!」



 力一杯否定したが、その声は天道には届くことはなかった。

 会議が終わった後、流星と朝成は昼彦に個別に呼び出された。

 流星には命令違反の処罰を、朝成には流星を止められなかったことの処罰として、それぞれに一週間の料理当番と、皿洗いを命じた。


 

◇◆◇



 その夜、軍では久し振りに全員が一堂に介し、宴会さながらの夕食会が開かれた。

 その時に空音に聞いた話なのだが、龍海の能力は本来、ただ見えない料理人ではなく、回復能力の備わった料理人らしい。

 その能力は空音の治癒能力とはまた違うものであり、龍海が作った物を食べた者は皆、食すると言うことの幸福感とは別に、食べたものは皆、さながら特別な力を得たかのような気分になっていた。



 だが、何故か本人はそのことについては、料理人の力ではないと全く否定しており、そもそもそれが食本来の持つ能力なのだと言い張って、認めなかったのだそうだ。

 何故なら龍海は、料理人になる為に必要条件である、見える力は全くもって皆無だったのだ。

 しかし、その能力は他の誰でもある物ではないと、誰よりもいち早く気付いた空音は、龍海を従者として迎えることを決意したのだと言う。



「そらぁまぁ、最初は色々言われたで、俺も。空音ちゃんの従者になりたい人間は他にも何人もおったから」

 酒を片手に顔を真っ赤にさせた龍海が笑う。

 忙しなく空になった皿を片付けては、新しい料理を追加する流星が、口を挟む。

「そういえば、満月みづきによろしくって言ってたのに、全然気づかなかったわ」

 酒を流し込もうとした手を止める。

「そういえば、成仏したんやね、満月みづきちゃん」



 一瞬言葉に詰まらせた流星だったが、ブレスレットに手を当てて、ゆっくりと口を開く。

「正直、満月みづきが成仏した時は、ずっと毎晩泣いてたよ。でも、それじゃ駄目だって、思ったんだ…」

 その言葉とは裏腹に辛そうな表情を感じ取った龍海は、流星の肩を組み、ぐいと無理やり引き寄せると、頭を乱雑にぐしゃぐしゃと掻き乱す。

「おー、偉い偉い。ちょっとは成長したんやねぇ」

「ねぇー、流星!こっち、料理まだぁー?」

 真昼に呼ばれると、分かった分かった、と苦笑いを浮かべ、龍海に解放されて、慌てて料理を運んだ。



◇◆◇



 すっかりほろ酔いモードになった朝成に絡まれて、流星と明日馬と、そしてすっかり流星に懐かれた陸達は、縁側でせめてもと、自分達で買った花火をしていた。

「なんで俺まで、お前らと花火なんざしなきゃいけねぇんだよ」

 ロケット花火を数本持って、いまだにぶつくさ言ってる陸に、流星はまぁまぁと肩を組み絡む。



「その割には楽しんでるじゃん」

 深くため息をつくと、半ば諦めながらも流星を睨み見る。

「年上に敬語使わないと怒られるぞ」

 まさに今言わんとしてた台詞を、明日馬に取られて陸は言葉を飲んだ。



「あ、そういや27歳なんだっけ。ちっこいから分からなかった」

 その一言が悪かったか、陸は額に青あざを浮かべる。

「あのなぁ…、チビチビ言うけどな、162㎝だっつの!そもそもあいつらがでかすぎるんだよ!!」

 ビシッと朝成と天道達を指さして、怒鳴り声を上げると、隣で陸の真似をしてロケット花にを数本着火した朝成に、ぐしゃぐしゃと頭を撫で回される。



「いいじゃねぇか、チビはチビなりに小回り効いていいだろ」

 その言葉がトドメだったか、刀を解放した陸はギラリ、と刃をちらつかせる。

「てめぇら…そこに並べ!叩っ斬ってやる!!」



「よーし、、そろそろ打ち上げ花火するわよー!」

 ライターを手に待ち構えていた真昼の声と同時に打ち上げられた花火により、陸の声は虚しくもかき消されてしまった。

「今年も宜しくお願いしまーす!」

 全く自分の話など聞いていない皆に、陸は、理不尽だ!!と大声で叫んだ。

 ちなみにどうでもいい情報ではあるが、陸が比較対象とした男性陣の身長だが、天道が181㎝、龍海が176㎝、朝成が184㎝である。

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