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第9話-新助手の誕生

「先ほどアルバイトができないと悲観に暮れていたが、もしかしたら君には丁度いい仕事かもしれない」

「というか、吾輩から見た感じは超うってつけな気がしているのだ」

「え、ええ!?ちょっと、勝手に進められると困ります」


『ティパル、福田さんをご案内して』と祈吏の言葉を待たずにヨゼはティパルに命令した。


「一度同席いただくだけで構わない。それでも君が難しいと思うならば、その際は遠慮なく辞退してくれ」


『ちなみに、時給分はちゃんと出すよ』という言葉もあり、祈吏はしぶしぶ受け入れた。


「福田さま、どうぞこちらへ」


ティパルに案内され、福田と呼ばれた中年男性が応接間に入って来た。

先ほどまでヨゼと対面していた祈吏はヨゼの隣に移動し、福田と向き合う形でソファに着いた。


「こんにちは、福田さん。本日は遠路お越しいただきありがとうございます」

「こちらこそ。世前先生の貴重なお時間をいただいてしまい、恐れ入ります」


福田というその男は、祈吏から見た第一印象といえば腰が低い優しげな男性だ、というものだった。


(服装はベーシック系で至って一般的、鞄は斜め掛けで大きい。仕事で使うものなのかな。結構ボロボロだ)

(……けど、靴は本革っぽい。スタイリッシュなビジネスシューズだ。よく手入れされてるし、こだわりを感じる)


「紹介します。こちらは助手の遠橋祈吏くん。カウンセラー志望の子でとても優秀なんです」

「えっ!?」


何故そんなにさらっと嘘が吐けるのですか、と祈吏は心の中でツッコむ。


「後学のため、福田さんのカウンセリングに同席させたいのですが、よろしいでしょうか」

「ああ、はい。僕は全然構いませんよ」

「遠橋です!本日はどうぞよろしくお願いいたします……!」


カウンセラーの勉強なんて塵もしたことはない。それどころか祈吏の専攻は地域文化だ。

『ヘマをしないようにじっとしていよう』と思っていたところで、ティパルがお茶出しをテキパキと始める。ほうじ茶と最中をローテーブルに置くと、すかさず祈吏にウインクをした。


(なんだか応援されてるみたい……)


「福田さん、そういえば以前お話されていた靴ブランドですが、新作は御覧になられましたか」


ヨゼがローテーブルの引き出しから書類やタブレットを取り出す。

テーブルの上にずらりと並んだ有名ブランドの紳士靴カタログを見た福田は、表情が一変した。


「これは……!まだ見ていないです」


ぐっ、と堪えた様子でその表紙を見つめる。

そわそわと動く肩に熱い視線は、カタログの中を早く見たいと全身で訴えるようだ。


「よろしければ、御覧ください」

「い、いいんですか!?」

「ええ、もちろんです。この後は福田さん以外のご予約はないので、時間はたっぷりありますし」

「ありがとうございます……!!」


福田は口早に礼を言うと、靴の魅力をぶつぶつ呟きながら一瞬で自分の世界に入ってしまった。


(やっぱり、靴がお好きな方だった。だけど、ヨゼさんは目が見えないのにカタログがあるってことは、もしかして福田さんのために用意していたのかな……?)


「祈吏くん、ちょっと」

「はい……?わっ」


突然、祈吏の視界が夜明け色に染まる。

それはヨゼのサングラスが掛けられたのだとすぐに分かった。


「彼をよぉく見てごらん」


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