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第34話-真実への導き

ヨゼの鬼気迫る声に背中を押されるがまま、2人は裏口へと踏み入れる。


「さっき話していた子供の靴はどの箱に入っていた!?」

「ええと、そのあたりにあった木箱に……」

「……あれ、無くなってる」


酒瓶はおろか、祈吏が目にした子供靴は跡形もなく消えていた。

それだけではない、空瓶に占拠されていた荷台さえも無くなっている。


「フーゴさんは一体どこへ――……」


――祈吏の中で、今まで知り得た要素が電流のごとく駆け巡った。


(夜警さんとの関係、1年と半年の期間。亡くなった奥さま、作業場の風景、昨夜の食事会、修道院からの2通の手紙。……そして、裏口から消えた荷台と、大量の子供靴――)


(――現実での福田さんの悪夢の内容)


「……ヨゼさん。前世の未練やトラウマが、今世の夢に出ることがあるんですよね」


「絶対とは限らないが、そういった現象は少なくないね」


福田のカウンセリング時に見せられた、カルテの文面を思い出す。



◆悪夢の内容

大きな濁流に呑まれて息ができず、絶望する夢



「……フーゴさんが危ないです!!」


――祈吏は踵を返し、店側の扉から土砂降りの雨の中へ飛び出す。

ヨゼは走り出した祈吏を咄嗟に追いかけた。


「祈吏くん! どこへ行くんだ!?」

「フーゴさんのところへ行きます!」

「行くってどこへ……あてはあるのかい?」


「そんなの直感に決まってます!!」


(もし、もし本当に夢の内容が前世の記憶だったら……!)


祈吏は何かに引っ張られるように、がむしゃらに、けれど迷いのない足取りで走る。

ヨゼと雨の中を駆け抜け、辿り着いたのは昨日パレードが行われていた大橋だった。


「ここのどこかに、フーゴさんは……!?」


雨と霧で霞む景色に人気ひとけはない。だが、橋の真ん中にぽつんと1人の男の影があった。

それは今まさに、川へ木箱を投げ捨てようとするフーゴだった。


「フーゴさん、待ってください!」


祈吏の呼びかけにフーゴは手を止めた。

幅のある欄干らんかんの上に立ち、木箱を落とそうとしているようだが、自身が身を投げようとしているようにも見てとれる。

フーゴは雨水でぐしゃぐしゃになった暗い顔を、静かに上げた。


「勝手にお店の中へ入ってしまって本当にごめんなさい。……それは、お子さんのために作られた靴ですよね


「今朝、店に忍び込んだのはアンタだったのか」


「ほ、本当にすみません……!」


「それは、僕から謝罪しよう。祈吏くんを差し向けたのは僕だ」


その言葉に2人が共謀していたと悟ったのか、フーゴは小さく溜息を吐く。


「ずっと、おひとりで悩まれてたんですよね。お子さんが生きているのか……どうなのか」


祈吏は全ては言わなかったが、『どうなのか』という意味に『自分の子か、他人の子か」』というニュアンスが含まれているのは、当事者であるフーゴには分かりきったことだった。


「アンタの言う通り……ずっと恐かったんだ」


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