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第32話-木箱の謎

「――ヨゼさん、なんとかっ、確認してきました……!」

「お疲れ様、祈吏くん!」


2人は合流し、常連になりつつあるくだんの食堂に赴いた。

靴屋の裏口から全力疾走してきたこともあり、祈吏の息は絶え絶えだ。


「朝早くに一仕事引き受けてくれてどうもありがとう。朝食は好きなもの食べてね」


ヨゼは端正な顔でにっこりと微笑む。それを見た祈吏は『ヨゼさんはきっと人を使うのが上手な人なんだろうな』と心中思った。


「ではお言葉に甘えて、デザートも頼んでいいですか」

「もちろん」

「やったあ、ありがとうございます! すみません、注文お願いします!」


嬉しそうに注文をする祈吏を眺めながら、ヨゼは祈吏が一息落ち着くのを待つ。

そしてデザートのアップルパイまで食べ終え、ほっとしたのも束の間、祈吏の表情が急に強張った。


「あの、それでなのですが。手紙はありました」

「ほう。流石祈吏くん、お手柄だったね。これでフーゴさんの疑惑がひとつ晴れた」

「手紙は修道院からで、確かに奥さま……ラミシャさんが亡くなられた報せでした」


祈吏はタイプライターの規則正しいフォントで書かれた文面を思い出す。


「家を出たあと、修道院で暮らしていたようです。それである日、熱病で亡くなったという内容で、すでに埋葬済みとのことでした」


「なるほど。病死である上に修道院という特殊な環境で最期を迎えたため、警察側の把握が遅れた、といったところか」


「でも、なんて言うんでしょうか……ちょっと違和感があるんです」


「そういった違和感は大歓迎だよ。どの点が気になった?」


「手紙は確かに修道院から来ていたんですけど、もう1通、今朝着ただろう修道院からの未開封の手紙が作業台にあって」


「……何かが引っかかるんです。急いでたので見比べられなかったのですが。もう一度見たら解りそうなのに……すみません」


悔しそうに俯く祈吏に、ヨゼは優しく背中を支えた。


「大丈夫。時間はあと1日あるよ。そのうち自然と思い出せるかもしれない」


「はい……あとは、気になる点は特に。ああ、そうだ。これは関係あるか分からないのですが」


「裏口に、小さな靴が大量に置いてあったんです。多分子供用だと思うのですが、どれも新品のようでした」


裏口に置いてあった木箱の中に見た光景。それはフーゴの作業台にあった子供靴と同じものが、大量に入っているさまだった。


「でも、店内に同じ商品は並べられていなかったと思うんですよね。自分の見る限りでしたが」


「僕が見た中でも、子供用の靴を見かけた記憶はないな……」


「そうですよね。なぜあんなに子供用の靴があったんでしょうか。おふたりの間にお子さんはいないはず……」


その言葉を言いかけて、祈吏はハッとあることに気が付いた。


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