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第21話-賭けは酒場の嗜み

店内の中央にできた人だかりを覗くと、そこではトランプを使った賭け事に興じている人々がいた。


ディーラー役らしき人がトランプをシャッフルし、4つの山札に分ける。

賭け事に参加している4人に配り、各々は伏せたまま山札からカードを引く。

そして計4枚が場に並べられた。


「はい、それでは右から順にどうぞ」

「俺は……26に掛ける」

「こっちは15だ」

「じゃあ21」

「32にするよ」


「ルールは至って簡単。仕切り役が切った山札を、参加人数分配り、そこから伏せた状態で好きなカードを引かせる」

「場に出たカードの合計数を予想し、最も近い数字を当てたヤツが勝ちだ」


右から順番にカードがめくられる。

ハートの8、クラブの2、スペードの6、ダイヤのQ(クイーン)……


Q(クイーン)が12だから、合計数は28。26が最も近いから、お前の勝ちだ」

「やりぃー!!」


右の席に座っていた男が歓喜し立ち上がると、参加者たちから卓上の金を回収する。


「同数差を言い当てた奴が複数いた場合は負けた奴の金を等分する。だがドンピシャを当てれば一番大きい額を掛けた奴の倍額を全員から徴収できる。身ぐるみ脱いででもな」


(なんだかハイ&ローとカジノルーレットを掛け合わせたみたいなルールだな……)


祈吏はジョンの説明を横目に、盛り上がるテーブルを興味深げに眺めた。


「まさに運がモノを言う賭け、ということか」

「俺は次のゲームに参加する。お前らも出て俺に勝てれば、フーゴについて教えてやるよ」

「なるほど……僕は構わないが、こちらは何を掛ければ?」

「有り金全部、だ」


その言葉に眉間を僅かに顰めたのはヨゼだった。

現実のヨゼならノリノリで全額突っ込み賭けに興じていただろう。けれど今は青年のヨゼ。

ヨゼには秘策があったが、祈吏がいる手前どう進めようかと一瞬思案した。


「やりましょう。自分の有り金ぜんぶ掛けます」

「えっ……祈吏くん!?」


祈吏はヨゼに取り返してもらった財布を取り出し、賭けの場へ一歩踏み出す。

そしてスカートを翻し、堂々とした面持ちで振り返った。


「自分、今日は自信あるので。きっと勝てます!」

「そう言っても……夢のなかとは言え、いいのかい?」

「はい!」

「そうか……。じゃあ、僕も君を信じよう」


ヨゼは祈吏に財布をしまうよう促すと、腰へ腕を回し、エスコートするように歩み出す。

カード(賭け)で熱気渦巻くテーブルには、既にジョンと呼ばれた男と、その他の参加者2人が待ち構えていた。


「参加者はあと1名受け付ける!さあ、他に誰が出る!?」

「掛け金は僕が出そう。だがカードを選ぶのはこの方だ」

「ハッ。女に任せるたあ、警官さまもとんだ腰抜けだな」


祈吏がテーブルに着くと、ディーラー役が卓上に掛け金を置くように合図する。

それぞれが痛手にならない程度の額を置いていく中、ヨゼは懐から出した革製の袋を置いた。

そのたゆみから相当な貨幣が入っていることが伺える。見ていた観衆はざわめき、卓には緊張が走った。


「この財布の中身全額賭けよう」

「いいねぇ! おい、俺は参加するぞ! おい、降りてぇ腰抜けはさっさと退きな!」


ジョンがそう囃し立てたが、卓についた人間たちは席を立たなかった。


「じゃあ始めるぞ」


ディーラー役がトランプをシャッフルし始める。

参加者がヨゼの掛け金を狙い目をギラつかせるなか、祈吏は背筋を伸ばし、ディーラー役を静かに凝視していた。


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