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マルルの街

 王都を出てからキャンピングカーのレベルは3になり、順調な旅路になっていると言えるだろう。

 助手席で丸まって寝ているおはぎになごみながら走り続け、マルルの街が見えるところまでやってきた。街が外壁にぐるりと囲まれていて、東西南北にそれぞれ出入りできる門があるようだ。

 まだ早朝なので人は少ないけれど、すれ違う人がキャンピングカーを見てめちゃくちゃ驚いているので、街から少し離れたところで下りてあとは徒歩で行くことにした。


 装飾品はすべて取り外し、髪は後ろで一つに結った。

 ドレスだけはどうしようもないので、貴族の令嬢が散歩をしていますというていで行くことにした。

 堂々としていた方が怪しまれなかったりするのだ。……たぶん。



「小さな街とはいえ、人がいっぱいいるけど大丈夫かな……おはぎ」

『にゃう?』


 肩に乗っているおはぎを見ると、私の心配なんてまったく気にしていないようで、周囲を見て楽しそうにしていた。

 ……おはぎが大丈夫ならいいか。


「街に着いたらおはぎのご飯も買わないとね。この世界にカリカリはないから……やっぱり鳥のお肉かな?」

『にゃっ!』


 どうやらご飯という単語が分かったようで、おはぎは嬉しそうに声をあげた。



 ***



「えーっと……高貴なお方とお見受けいたしますが、なぜお一人で……?」


 マルルの街へ入る前に、門番から職質を受けてしまった……。

 門番は革の鎧をつけているくらいで、そこまで重装備ではない。

 堂々と「おはようございます」と言いながら街を通り抜けようとした作戦は失敗に終わった。まぁ、仕方ない。


「私はしがない街娘です。……ここから少し離れた森に薬草採取へ行っていたのですが、盗賊に襲われてしまって……。そのとき、さる高貴な方に助けられ、破れた服を哀れに思ってくださりドレスをいただいたのです」


 考えていた設定を口にする。

 おそらく門番が私を高貴だと判断したのは、ドレスの質のせいだろう。普段使いではなく、貴族が行う夜会で着る豪華なものだからだ。

 しかし私は装飾品の類をすべて外してあるので、貴族の令嬢なのに装飾品をつけていないという不思議な状況になる。



 そしてもう一つは――私が黒髪だということだ。



 私は自分の髪を触って、苦笑してみせる。


「貴族の方に、黒髪なんていないでしょう?」

「それは……確かにそうだな。平民でも黒髪は少ないが、お前さんみたいにまったくいない、ということはない」


 黒髪というのは、魔物の色だと言われ蔑まれている。

 貴族の子で黒髪が生まれた場合は、隠されるようにして育てられることがほとんどで、酷いと殺されることもある。

 私の場合は殺されはしなかったけれど、家族からは常に下に見られて厄介者扱いを受けていた。


 ……それなのに王子様の婚約者だったのだから、悪役令嬢というのは都合のいい存在だ。


 門番は私を見て、「確かにドレスじゃなければ、街娘と言われてもさして違和感はないか……?」と呟いている。「しかし街娘にしては美しいが……」とも聞こえてきて、思わず照れてしまった。


「まあ、問題ないだろう。通っていいぞ」

「ありがとうございます」


 私は笑顔でお礼を告げて、マルルの街へ入った。


 マルルの街は、赤レンガを多く使った温かみのある作りになっている。

 門を抜けたすぐ先は大通りになっていて、お店が並んでいた。人通りが多く、活気もあるようだ。

 その中で、服の看板がかかっているお店を発見した。


「まずは、服の調達をしなきゃね!」

『にゃう』


 私は一目散に服屋へ入った。

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[一言] うちの猫はお風呂と聴くとミニタオルを加えて寄って来ます(激カワ
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