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焚き火台

 冒険者ギルドで依頼を受けたら、次は買い物だ。

 やってきたのはギルドのすぐ近くにある道具屋で、冒険者で賑わっている。


「迷宮都市の道具屋って、なんだかすごいものが売ってそう!」

「期待してるとこ悪いけど、そんなにほかの街と変わらないぞ? あ、でも装備品は充実してるな」


 ラウルの話によると、ダンジョンで手に入れた装備品が充実しているらしい。ほかには、エリクサーとまではいかないけれど、回復アイテムもたくさんあるそうだ。


「ダンジョン攻略するにあたって、めちゃくちゃ大事なやつ!」


 だがしかし、私はレベルアップで大きくなったキャンピングカーに載せる家具や、料理道具も買いたい。

 ……とはいえ、予算はそんなにない……。


 私がう~んと悩んでいると、ラウルが「これが必要だな」と言ってアイテムを手に取っていく。


「俺は初級ポーションを三本と、中級ポーションを一本。あと解毒ポーションだな。ミザリーはポーションはあるけど、解毒は持ってなかったよな? 何本か買っておくといいぞ」

「わかった」


 毒攻撃をしてくる魔物はいないけれど、念のために持っておいた方が安心だ。


 ほかに気になるものは、食器類に、焚き火台だろうか。ダンジョンの中がどうなっているかわからないので、あれば役に立ちそうだ。

 薪などを売っているコーナーがあったので見てみると、焚き火台の取り扱いがあった。


「やば、これはテンション上がるかも!!」

「焚き火台か……。確かに一つくらいあってもよさそうだな」

「ラウルのお許しが出た! 買おう!!」

「お許しって……」


 そんなものは必要ないだろうとラウルが苦笑するけれど、私には大事なことなのですよ。


「さて、どんな焚き火台があるかな……っと」


 売っている焚き火台は、三種類だった。

 一つ目はまんまドラム缶で、中に薪を入れて燃やすだけのもの。

 二つ目は、四角くて底が少し深めの焚き火台。

 三つ目は、四角いところは二つ目と同じだけれど、浅型の焚き火台。

 お値段はドラム缶が安くて、深型が高い。


 とりあえず、見た目的にドラム缶は論外。

 浅型は暖を取るにはいいけれど、料理をするにはちょっと不便かもしれない。薪の補充もこまめにしなきゃいけないし……。


 私が悩んでいると、ほかの冒険者パーティが浅型の焚き火台を購入していった。


「おお、私と違ってあっさり決めていったね……!」

「焚き火台は便利だけど、荷物になるからな。小さい方がいいだろ?」

「あ、なるほど」

「テントや寝袋がいらないっていうのは、かなりの強みだよな。でかい鞄も必要ないし」


 本当にうらやましいと、ラウルがこちらを見てくる。


「ふっふっふー、さすがは私のキャンピングカーでしょう!」


 すっかりキャンピングカー生活に慣れてしまっていたけれど、普通は荷物を持って冒険したりダンジョン攻略をしたりするのだった。

 ……荷物持ちと料理専任のメンバーでもいない限り、持ち運びやすさで選ぶのは正解だね。


 前世の動画で見た焚き火台は、結構お洒落なものが多かったなと思いだす。

 深くなっているのはもちろんあったけれど、比較的平らなものも多かったと思う。上に網がおけるものもあって、便利だと感心したものだ。


「正方形に長方形、どんな形が使いやすいかもあるよね……」


 大きなお鍋一つであれば、正方形でよさそうだけど……スキレットを二つ並べるのであれば長方形がいいなと思う。

 もしくは網の部分とは別に、テーブルが合体している焚き火台もあったはずだ。料理が終わったスキレットを避けて置けるので、使い勝手もよさそうだ。


「でも、そんな多機能なやつはないんだよなぁ……」


 そしてよくよく見ると、浅型でも五〇〇〇ルクといいお値段だ。深型だと八〇〇〇ルク。ちなみにドラム缶だと二〇〇〇ルクだ。


「この中だったら深型がいい気がするけど、これに八〇〇〇ルクか……」


 動画で見た焚き火台を思いだしてしまったら、ちょっと悩んでしまうお値段だ。もっと手ごろかと思ったのに……。

 私が焚き火台の前でずっとうんうん考えていると、ラウルが「悩みすぎだろ」とツッコミを入れてきた。


「だって、どうすればいいのか……!」


 私が迷っている理由を説明すると、ラウルは「なるほどな」と頷いた。


「だったら、とりあえずドラム型か浅型にしておいたらどうだ? ダンジョンの中では極力キャンピングカーを使うだろうけど、安全地帯が狭いことだってあるし」

「あ、なるほど……」


 ダンジョンの中にある比較的安全な場所が、広いとは限らないのだ。

 ……いくらキャンピングカーの中でも、魔物が外でうようよしてたらゆっくり寝てられないもんね。ラウルの説明にめちゃくちゃ納得した。


「となると、料理のことも考えて浅型がいいかな」


 さっきの冒険者パーティ、優勝!!

 ということで、浅型の焚き火台に決めた。


『にゃう~』

「ん? どうしたの、おはぎ」


 私が焚き火台を手にしようとしたら、おはぎが私の頬に顔を擦りつけてきた。そして棚に並んでいるスープマグを見て『にゃ』と言う。


「もしかして、あれがほしいの?」

『にゃっ』


 まさかおはぎが食器を選ぶとは……!!


 おはぎが見ているのは、外側がオフホワイトで、内側がくすみピンクのスープマグ。可愛いデザインで、ご飯を食べるのにも水を飲むのにもちょうどよさそうなサイズだ。


「おはぎが選んだんだもんね、これをご飯用に使おうか。色違いでもう一つ買って、それは水飲み用にしよう!」

『にゃ~っ』


 私がスープマグ改めおはぎの器を手に取ると、とっても喜んでくれた。


 今回は浅型の焚き火台とおはぎの器を購入した。

 実際ダンジョンで野宿をして、足りないと思ったものは追々買い足していけばいい。


「悩むけど、道具を選ぶのって楽しいねぇ」

「そうだな」


 私は上機嫌で道具屋を後にした。

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― 新着の感想 ―
[一言] おかしい・・・ダンジョン探索のはずなのにキャンプみたいになっているぞ! なおこの話のタイトルは・・・。
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