いざゆかんダンジョン!
ということで、キャンピングカーを走らせてダンジョンを目指す。初夏の陽気なので、窓を開けて気持ちいい風を取り入れる。
ん~、ドライブ最高!
基本的に草原を走っているので、人と会うことはほとんどない。カーナビで人の位置がわかるので、可能な限り避けているというのもある。
それでも回避できないときはあって、そのときはめちゃくちゃ驚かれてしまう。窓から顔を出して、「スキルです、驚かせてごめんなさい~!」と言うとなるほどと頷いてくれる。
……それにしても、ダンジョンか。
初めてのダンジョンだということを改めて考えたら、緊張してきた。
大丈夫かな? ちゃんと戦えるかな? お弁当とおやつはどうすればいいんだろう。やっぱり三百円までかな?
「ミザリー、なんかすごい顔してるぞ」
『にゃ?』
「ハッ!」
どうやら私は真顔で運転していたらしく、ラウルが「大丈夫か~?」と手をパタパタしている。うん、体が固まってる……!
「ダンジョンのこと考えてたら、緊張した……」
「いつもは気楽そうにしてるのに」
そう言って笑うラウルに、私は頬を膨らませる。
「ラウルは戦闘に慣れてるかもしれないけど、私は初心者も初心者なんだから!」
「リーフゴブリンは倒したのになぁ」
「あれは別だよ!」
キャンピングカーでひき殺したようなものなので、ノーカンである。
「お、ダンジョンが見えたぞ」
「えっっっっっ!?」
不意打ちのように告げられ、私は思わず声をあげた。
もう!? さすがはキャンピングカー、早い、早すぎるよ!
私が慌てふためいていると、またラウルが笑う。しかもおはぎも一緒になって笑うので、私はもう、もう~~! 状態だ。
ラウルが指差したダンジョンは、洞窟の入口だった。言われなければダンジョンということに気づかないだろう。
……ワクワクしてたけど、実際目にするとドキドキする。
キャンピングカーを下りて、私は大きく深呼吸をする。
時間はまだ昼過ぎなので、やっぱり明日にしよう作戦を使うことはできない。女は度胸だと、自分に言い聞かせる。
「んじゃ行くか」
「もう!? 出てくる魔物の説明とか、中の様子とか、教えてほしいです!」
「あー、そうか」
私が手をあげて質問すると、ラウルは詳しく教えてくれた。
「ここは洞窟ダンジョンだ。特別な名前はついてない」
「ふむふむ……」
ラウルの説明によると、この洞窟ダンジョンは二階層――地下一階まであるらしい。
中はそこまで広くないため、複数の魔物が同時に襲ってくることはほぼないそうだ。一層に出てくる魔物は、スライム、角ウサギ、スケルティの三種類。行くのは一層だけとのこと。
「……確かに、それなら私でも倒せるかも!」
スライムは練習で倒したし、角ウサギもいけそうだ。スケルティは、小動物の骸骨の魔物といえばわかるだろうか?
「おお、その意気だ! 頑張ろうぜ!」
「うん!」
『にゃ!』
おはぎも応援してくれてるよ!
私は何度か深呼吸をして、軽く準備運動をして、頭におはぎを乗せて……ダンジョンに足を踏み入れた。
洞窟ダンジョンは、しんと静かで、薄暗かった。わずかに壁が光っているのは、光る鉱石が土に交じっているからだとラウルが教えてくれた。
それ以外は、普通の洞窟だ。
「ダンジョンって、言われなきゃわからないね」
「そうだな。ここは魔物の数も少ないし、滅多に冒険者も来ない。だからさ、そんな気負わず気楽に行ってみようぜ? 何かあれば、俺もおはぎもいるし」
「……そうだね!」
すっと気持ちが軽くなったのを感じて、私の歩く速度が上がる。
うん、これならいけそうかも!
緩やかなカーブの道なりに進んでいくと、前からスライムが現れた。草原で見たのと同じスライムで、これならいけそうだと私の中に自信が湧いてくる。
『にゃ?』
「駄目駄目、ミザリーが倒すんだ。おはぎは応援な」
『にゃうっ!』
「これは私の獲物だから……!!」
危うくおはぎにスライムを倒されてしまうところだった。危ない危ない。
気を取り直して、私は地面を蹴ってスライムの元までダッシュする。そのまま短剣で斬りつけると、スライムはいとも簡単に光の粒子になって消えた。
「……ダンジョン、楽しい!」




