アスパラの豚肉巻とじゃがバター
スライムを倒せたいい気分のまま、のんびりキャンピングカーを走らせて、夜。満天の星の下で、私は鼻歌交じりに料理をする。
「ふっふーん、ふんふーん♪」
焚き火の前で椅子に座って、膝に小さいまな板を載せて下茹でしたアスパラに豚肉をくるくる巻いていく。
ん~~、まだ焼いてないのにすでに美味しそうだね!
豚肉を巻いたアスパラは軽く塩コショウをかけてからスキレットに並べて、焚き火へ。
焚き火は石の置き方を工夫して、スキレットを置けるようにしてくれている。ラウルがやってくれました!
スキレットの横には小さなお鍋があって、おはぎ用の鶏肉を茹でてるよ。
ジュワッと肉の焼ける匂いにうっとりしつつ、私は焚火の中に入れておいたあるものを、木の枝で転がすように取り出す。
包み葉でくるんだそれは、ジャガイモだ。
ジャガイモの切れ目に急いでバターをのせたら、お手軽じゃがバターの完成。本当は油でちょっと揚げたものが好きなんだけど、今は油の処理がちょっと難しそうなのでおあずけ。
「うわ、美味そうだな!」
『にゃ~っ』
美味しそうな匂いにつられたのか、キャンピングカーの中からラウルとおはぎが出てきた。その手にはパンを持っている。
「もうできあがるよ。パンも美味しそう~!」
私はちょうど焼けたアスパラの豚肉巻きとじゃがバターを取り分け、ラウルに渡す。おはぎの鶏肉は手でほぐして、食べやすくする。
『にゃっにゃっ!』
おはぎが早く早くと私を急かすように、ご飯の催促をしてくる。その姿が可愛くて、正直ずっと見ていたいと思ってしまう……。
……って、そういうわけにもいかないからね。
「はい、おはぎ」
『にゃ~!』
おはぎの前にお皿を置くと、しっぽをうねうねさせながら食べ始めた。はぐはぐ必死で食べる姿に頬を緩めながら、人間もご飯です。
ラウルと並んで座り、「いただきます」をして、まずはほどよくバターの溶けたじゃがバターをいただくことにする。
ふーふー冷ましながらかぶりつくと、ほくほくの食感と、しみ込んだバターのいい香りが口いっぱいに広がった。
「ん~~!」
この美味しさは優勝……!
私が豪快にかぶりついたのを見たラウルも、ごくりと喉を鳴らして、すぐじゃがバターにかぶりついた。
「あっふ!」
「そりゃ熱いよ……」
蒸したジャガイモの破壊的な熱さを舐めたらいけないよ……!
「ほら、水飲んで落ち着いて」
「あひがほ……。ふー、助かった! 熱かったけど、美味いな~」
「お気に召してもらえてよかったよ」
私は笑って、次はアスパラの豚肉巻きにかぶりつく。じゅわっと溢れる肉汁に、アスパラの食感がいいアクセントになっている。
「んん~~、うまっ!」
パンにはさんで食べても美味しいので、いくらでもお腹に入ってしまう。これはやばい料理だね……!!
「俺も俺も!」
ラウルも慌ててアスパラの豚肉巻きを食べて、「幸せだ~」と頬を緩めている。
そのあとふーふーしながら、じゃがバターをぺろりと平らげた。
「ジャガイモにバター乗せただけなのに、めっちゃ美味いって反則だよなぁ」
「わかる」
手が込んでる料理はもちろん美味しいんだけど、蒸かしてバターを乗せただけでも美味しくなってしまう。料理の不思議だ。
……というか、先人の知恵でもあるんだろうな。
お手軽で美味しい料理を開発してくれてありがとうございます……!
と、私は知らない先人たちに祈る。
「また今度作ろう」
「賛成! これなら俺でも簡単に作れそうだしな」
「朝ご飯に期待ですね!」
「任せとけ!」
はー、キャンプ最高だ。
私は椅子に深く腰掛けて、ゆっくり料理を味わいながら焚き火を見る。ゆらゆら揺れる様子を見ると、なんだか心が落ち着く。
こんな日がずっと続けばいいなと、そう思いながら一日を終えた。




