冒険者ギルドにて
それから私たちはフルリア村に戻り、アンネの家でお世話になって、数日間ゆっくり過ごした。
ちなみにエルフの冒険者――フィフィアという名前だった――は、「すぐ報告する必要があるから」と言って、ヒューゴたちを引きつれてココシュカへ旅立ってしまった。
一応、ヒューゴたちはともかくとしても、一度キャンピングカーで街まで送って、ギルドから人を送ってもらうことも提案したんだけど……断られてしまった。
「私たちも、そろそろ街へ戻ろうか。ギルドに報告しないといけないし」
『にゃぁ?』
膝に乗っているおはぎを撫でながら告げると、ラウルが「ああ」と頷いた。
「リーフゴブリンもいないみたいだし、大丈夫だろ」
「だね。キャンピングカーの地図、すごく便利……」
キャンピングカーのインパネ部分にモンスターが青丸で表示されるのを利用して、山の中を片っ端から見て回ったのだ。
その結果、リーフゴブリンはいなかった。
……とはいえ、冒険者ギルドにきちんと調査もしてもらうつもりだけど。
もし私が見逃していたら、大惨事になってしまう。
私とラウルが話しているのを聞いたアンネが、キッチンからお茶を持ってやってきた。
「なんだい、もういっちまうのかい?」
「さすがにこれ以上は長居しすぎですから。次の街にも行ってみたいですし」
「そうだな」
このままではフルリア村の住人になってしまいそうだ。
私が世界を旅したいのだと告げると、アンネは「いいねぇ」と同意してくれた。
「私はもう、この村が居心地がよすぎて、よそへ行く気は起きないよ」
アンネはそう言って、棚の上に置かれた手紙をチラリと見た。
私がギルドの依頼で受けた手紙は、アンネの息子からの手紙で、一緒にココシュカの街で暮らそうというものだったそうだ。
……息子さんはきっと、村で一人暮らしをしているアンネのことが心配なんだろうね。
どちらの気持ちもわかるので、なんとも言えないよ。
「もう少し行き来がしやすかったらよかったんだろうけど、山に囲まれてるから仕方がないね。フルリアの花も咲くし、山は大事なんだ」
「綺麗な花ですもんね」
「ああ。夜に見ると格別だよ」
アンネの言葉に頷いて、私は「また遊びにきますね」と微笑んだ。
***
キャンピングカーでのんびり走ること数日、私たちはココシュカの街に到着した。
まずやってきたのは、冒険者ギルド。
依頼の達成報告と、ラウルの元パーティメンバーのことについてだ。生半可な罪状じゃ許さないぞと意気込みつつカウンターへ向かった。
「……おかえりなさい」
私が鼻息荒くしていたからか、受付嬢が若干引いている……が、そんなことは気にしている場合ではない。
「ラウルの元パーティメンバーについてお話ししたいです」
「はい。フィフィアさんから一通りの説明はしていただいています」
受付嬢は真剣な表情で頷いて、話をしてくれた。
まず、フィフィアが説明したことは一連の流れと、彼らの思惑などだ。きっちり説明されていたので、私が補足することはいかにヒューゴたちが酷いかということと、ラウルがどんな目にあわされたかということくらいで済んだ。
「俺としては、次の被害者がでないようにという点に十分気をつけてほしいです」
「もちろんです」
ラウルの言葉に、受付嬢は頷く。そして言いづらそうにしつつも、処遇に関する説明などを続けた。
「……実際のところ、自分たちが敵わない魔物が出た際に、パーティメンバーの一人が犠牲になることはたまにあるんです。そういった場合、処罰などは原則ありません。冒険者という職業柄、死と隣り合わせになることもありますから」
受付嬢の説明を聞いて、もしや今回は処罰なしに!? と嫌な汗が出る。が、「ですが」と受付嬢が言葉を続ける。
「今回のことは極めて悪質です。そのため、冒険者の資格をはく奪することにいたしました。それ以外には罰金がありますので、それは徴収できた段階でお二人にお支払いいたします。……すべて支払うまでに少し時間がかかってしまうかもしれませんが」
「わかりました」
処罰なしにならなかったことに、私はほっと胸を撫で下ろす。
罰金の支払いが後になるのは、ヒューゴたちの手持ちがほとんどないかららしい。強制労働として、鉱山かどこかに送られるのだそうだ。
説明が全て終わると、受付嬢がカウンターにお金の入った袋を二つ置いた。
「これは彼らの装備品などを売ったお金です。ひとまず、こちらを最初の罰金分としてお納めください」
「「ありがとうございます」」
そして次に、手紙配達と薬草採取の報酬ももらう。
これは私とラウルできっちり等分にする。ラウルには移動手段が私のスキルだからと言われてしまったけれど、その他の部分では助けてもらってるので等分にした。
と思っていたら、ラウルが今回の報酬を全部渡してきた。
「? ラウル?」
「いや、ポーション代だよ。まだちょっと足りないけど。ヒューゴたちの罰金分は、生活費にするよ」
「……ああ!」
すっかり忘れていた!
そういえばラウルは、ポーション代を私に返すまでの間、護衛をしてくれるという話だった。
ポーションは私が勝手に使ったので料金をもらうのはなんだか申し訳ない気がしたけれど、きっと私がラウルの立場でも同じことをしたと思うので、ありがたく受け取った。
……そうか。ラウルと一緒に旅できるのも、ポーション代返済までの間か。
それがなんだか少し、寂しいような気がした。
いつも読んでいただきありがとうございます。
ここで一回一区切りなので、更新頻度を少し下げます~!
プロット作るので、再開まで少しお時間いただけると嬉しいです。
 





