冒険者たちは……
「……あ!」
リーフゴブリンの討伐は無事に済んだので、村に帰るのだが――私は冒険者たちのことを思い出した。
「ラウル、アンネさん。リーフゴブリンが私たちのところに来たってことは、冒険者の人たちって……」
もしかしてもしかしなくても、やられてしまっているのでは……? と、私の背中に嫌な汗が伝う。
リーフゴブリンを倒してお祭り気分だったラウルとアンネもハッとした顔をして、考えるように口元に手を当てた。
「…………運がよければ生きてると思う」
「……せめて遺体くらいは運んでやりたいね」
「って、二人とも死んでるていで話さないで……っ!!」
私は急いでキャンピングカーに乗り込んで、インパネで周辺を確認した。赤丸が動いていれば、とりあえず冒険者たちは生きているはずだ。
見ると、三つの赤丸がかたまっていて、もう一つは少し離れたところにいる。三つの赤丸は動いているので、歩けないほどの重症ではなさそうだ。
「問題は、こっちの動いてない赤丸か……」
動いていないとはいえ、まだ息があるかもしれない。私はラウルとアンネに助けに向かう旨を伝えて、キャンピングカーを走らせた。
恐らく、目的地までは山道ということもあって二〇分くらいかかりそうだ。変に焦って事故らないように、安全運転を心掛けねば。
ラウルは助手席、アンネは猫たちと居住スペースに乗っている。
しばらく走り、あと少し……というところで、ラウルが思い出したと口を開いた。
「そういえば、スキルがレベルアップしたんだろ? 何か変わったのか?」
「ハッ! そうだった!!」
リーフゴブリンと冒険者のことで頭がいっぱいで、レベルアップのことを後回しにしてしまっていた。
前回のレベルアップは鑑定とかいうとんでも機能がついた。今回はどんな変化があるんだろう。
インパネをちょっとタップすれば内容がわかるので、私はスピードを緩めて一瞬だけ操作する。
「え、これって――」
私が驚きの声をあげると、覗き込んだラウルが首を傾げた。
「そんなにすごいのか? ……って、前! 冒険者が倒れてる」
「え、どこどこ!?」
ラウルの声に、私は目を凝らして前方をみて――いた! 数十メートル先の木の横で、一人の冒険者が倒れている。
キャンピングカーを停めると、私とラウルはすぐに飛びだして冒険者の元へ行く。
倒れていたのは、ポニーテールの女性冒険者だ。耳が長いので、人間ではなくエルフだということがわかる。
「大丈夫、息はあるみたいだ。怪我もあるけど、死ぬほどの重症じゃない」
「本当? よかったぁ」
ラウルの言葉にほっとすると、キャンピングカーから「大丈夫かい!?」とアンネが下りてきた。
「意識は失ってますけど、命に別状はないみたいです」
「そうかい、よかったよ」
アンネもほっとした表情で微笑み、キャンピングカーのドアを開けてこっちを見た。
「とはいえ、そこで寝かせておくわけにもいかないだろう? 早く村に戻って手当てをしよう」
「はい!」
冒険者の女性を運ぼうとしたら、ふらつきつつも意識を取り戻した。
「――! よかった。大丈夫ですか? 怪我とか……」
「う……、あなたたちが助けてくれたの? リーフゴブリンを足止めしてたんだけど、やられちゃって……。自己治癒魔法をかけて、意識をうしなっちゃったみたい」
呼吸を整えてから、どういう状況だったか説明してくれた。怪我が酷くなかったのは、回復魔法を使えたからだったみたいだ。
「そういえば、ほかの三人は……?」
「あ、生きてはいるみたいですけど、状況はわかりません。あなたの怪我が問題ないなら、三人のところに行って村に戻りますよ」
「私は大丈夫よ」
頷いてくれたので、私はひとまず三人の冒険者がいるだろうところへ向かうことにした。
居住スペースから「なんだこれは!?」という声が聞こえてくるのをスルーして、私は山の中を爆走する。
幸いなことに、三つの赤丸は近かった。
「そろそろ人がいると思うんだけど――あ、あの三人組っぽいね」
前方にいた三人は立って歩いていたので、よかったと安堵する。地図の赤丸だけじゃ、状態まではわからないからね。
「無事みたいでよかった。ね、ラウル――?」
私が横目でラウルを見ると、目を開いて驚いていた。
……そんなに特殊な状況じゃないと思うけど、どうかしたのかな?
不思議に思っていると、ラウルが口を開いた。
「……俺の、パーティメンバーだ」
「…………おっふぅ」
レベルアップネタは次回ですね……。




