ひとやすみ
無事にアンネを発見しタマを救出した私たちは、少し休憩をしてから村に戻ることにした。きっと、タマも腹ペコなはずだ。
「えーっと、キャンピングカー召喚!」
「――こりゃあ、驚いた」
私がキャンピングカーを出すと、アンネが大きく目を開けて、タマは『シャーッ』と威嚇してきた。怖かったか、ごめん。
「これは速く移動できる私のスキルです。歩いて村に帰ると大変なので、乗ってください」
「あ、ああ」
キャンピングカーのドアをあけて、靴を脱いで乗るようアンネに説明する。タマの足は濡れタオルで拭かせてもらう。
ラウルがスリッパを出して、「俺もめっちゃびっくりしたんです」と何やらフォローのようなことをしてくれている。
タマは足を拭かれたのが嫌だったのか、居住スペースをめちゃくちゃ爆走している。
私とラウル、それからアンネ、人間用にはサンドイッチを作り、猫たちには恒例の茹で肉を用意した。
とりあえず、一休みだ。
「……いやあ、悪かったね。アンタたちが来てくれて助かったよ。ありがとう」
食事を終えると、アンネが深々頭を下げて、膝にのせているタマの頭をぐりぐり撫でた。
リーフゴブリンの出現はもちろんアンネも知っていただろうけれど、それ以上にタマが心配だったこともわかる。
……強く責めるようなことは言えないよね。
私だって、もしおはぎがいなくなったら捜しに行ったはずだ。
アンネはキョロキョロ首を動かして、「しかし、すごいもんだねぇ」と言う。
「こんなスキル、聞いたことがないよ。さぞ名の知れた冒険者なんだろう? それなのに、私なんかの捜索をしてくれて……」
「いやいや、まだ駆け出しなので! スキルはラッキーでしたけど、あまり人には言ってないんです」
「スキルを悪用する人もいるからね、それがいい」
私の説明に、アンネは「気をつけるんだよ」と頷いた。
「そろそろ村に戻らないか? イーゼフ村長たちも心配してるだろうし」
「そうだね。タマも家の方が落ち着く……あら、仲良しだ可愛い~~!」
アンネの膝の上に乗っているタマのところに、いつの間にかおはぎが近づいていた。タマのことがずっと気になっていたみたいで、ふんふん匂いを嗅いでいる。
『にゃぁ』
『うにゃ』
おはぎとタマは喧嘩することなく、お互いの匂いを嗅いで鼻先をちょんとくっつけている。猫同士の挨拶だ。
「いいねぇ、おはぎ。タマと友達になったんだね」
『にゃ』
おはぎもタマも嬉しそうだ。
「じゃあ、私は運転するから……アンネさんはそのまま座っててください。おはぎとタマも。動くから気をつけてね。ラウルは少しだけ様子を見ててもらっていいかな?」
「ここに座ってればいいんだね? わかったよ」
「ああ」
二人が頷いたのを確認して、私は運転席へ移動する。
山の下りは危険だから、ゆっくり安全運転でいこう。無茶をしたら、アンネとタマを驚かせちゃうからね。
……コップに入ったお茶が零れないようにしなきゃ!
「よーし、出発!」
ブロロロロと走り出すと、「動いてる!」というアンネの驚いた声が聞こえてくる。わかるよ、この世界には自動車がないからね。
キャンピングカーには窓もついているので、外の景色を楽しんでいるかもしれない。
「特にカーナビの設定は必要ないけど、地図はこまめに確認しなきゃ――あれ?」
インパネに表示されている地図を見ると、行きしなに見た赤い丸の動きが変だ。
一つの赤丸が留まり、二つは逃げるように山を下っている……ように見える。赤丸でしか表示されないので詳細はわからないけれど、もしかしたら何かあったのかもしれない。
「……リーフゴブリンを見つけた、とかかな?」
「なんだって?」
私がぼそっと呟いただけだったけれど、聞こえていたらしいラウルとアンネがこちらを見ていた。
次回は冒険者との遭遇……?かもしれません。
 





