表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

67/142

猫あるある……?

 村から少し離れてから、私はキャンピングカーを召喚して乗り込んだ。


「しかし、猫を捜して村の外になぁ……。あんまり遠くに行ってないといいけど」

「そうだねぇ……。猫って、基本的にそんな遠くに行ったりしないと思うんだけど、どうなんだろう?」

『にゃう?』


 ラウルに返事をしつつおはぎを見ると、わからないとばかりに首を傾げられてしまった。可愛い。

 猫は基本的に遠くに行きはしないけれど、だからといって絶対ではないし、近場にだって危険はたくさんある。

 ……もし魔物に遭遇してたらどうしよう。

 一撃でやられてしまう未来しか想像できず、私はさああぁと青ざめる。


「急いで探そう! カーナビで……っと」


 インパネ部分のカーナビを見て、赤丸――人間がいる場所を探す。みんな村にいるから見つけやすいはずだ。

 見ていると、赤丸が五個あった。


「まだ村に近いし、これは冒険者かな?」


 となると、アンネさんはどこだろう。

 私はもう少し山側を見て行って――見つけた!


「って、山の中に反応がある! アンネさん、山に入っちゃってるかもしれない!!」

「まじか! リーフゴブリンがいた場所からは離れてるけど、移動してる可能性はあるから……急いだほうがいいな」

「うん!」


 全速力で向かうしかない。


「アンネさん、タマちゃん、待っててね……!」


 ぐっとアクセルを踏み、出発した。




 一〇分ほどで目的の山に到着した。

 木々は多いけれど、間隔が狭いわけではないので多少ならキャンピングカーで進むことができそうだ。


「山の斜面だし、土砂崩れが怖いから慎重に進もう」


 赤丸まではもう少し進まないと駄目そうだ。

 ……というか、アンネってお年寄りなんだよね? よくこんな道を登って……。

 もしかしたらパワフルおばあちゃんなのかもしれない。そんなことを考えながら、私はゆっくりキャンピングカーを走らせた。


「……山を登っていけるのって、いいよなぁ」


 ラウルは窓から外を見つつ、周囲を警戒してくれている。たとえば大きな枝とか、そういうのがあって危険なこともある

 さすがにカーナビに映らないからね。


 それから少し進むと、「タマ、下りておいで~」という声が聞こえてきた。


「アンネさんの声かな?」

「タマって呼んでるし、そうだと思う」

『にゃっ』


 声の様子から、タマがどこか高いところに登ってしまったのかもしれない。キャンピングカーで行ってタマを驚かせて落ちたりしては大変なので、私たちは歩いていくことにした。

 幸い距離は目と鼻の先だし、声も聞こえている。


「アンネさ~ん、いますかー?」

「――! 誰だい!?」


 私が呼びかけると、すぐアンネが返事をしてくれた。ラウルと顔を見合わせ、ほっと胸を撫で下ろす。


「よかった、大丈夫そうだ」

「うん。でも、タマちゃんは油断ならないね……!」


 ピンチなのかもしれない。絶対に助けるぞ! と思いながら声のした方に向かうと、木の上で鳴く猫と、その下でおろおろしている女性がいた。年齢は六〇歳くらいだろうか。

 アンネはすぐ、私とラウルに気づいてくれた。


「アンネさんに手紙配達の依頼を受けた冒険者のミザリーです」

「同じくラウルです。村でアンネさんが外に向かうのを見たって聞いて、捜しにきました」

「そうだったのかい……。心配をかけて申し訳なかったね」


 眉を下げながらそう言って、アンネは木の上を見た。


「あの子がタマちゃんですか?」

「ああ。高いところに登るんだけど、下りれないんだよ」

「あらら……」


 猫、そういうとこあるよね……!

 タマが登ったのはこの辺りでもひときわ高くて、もしかしたら一〇メートル近くあるかもしれない。あそこから落ちたら軽い怪我じゃすまない。


「どうしよう……」

「俺に任せとけ」

「ラウル?」


 私がどうにかして打開策をと思っていたら、ラウルが軽やかに木を登っていってしまった。


「はあぁ、度胸があるねぇ。私はどうにも高いところが苦手でね」

「あれだけ高かったら大抵の人は恐いと思いますよ……」


 そもそも私は恐怖心うんぬんの前に木登り自体が無理ゲーだけれど……。

 若干ハラハラしつつ見守っていると、ラウルはあっという間に登り切って、タマを抱き上げてしまった。「もう大丈夫だぞ~!」と、とびきりの笑顔だ。

 私の隣で見守っていたアンネは、ほっと大きく息をはいた。

ミザリー「救出成功を祝って焚火をしてもいいと思う」

ラウル「必要ないだろ」

しょぼん……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢はキャンピングカーで旅に出る』詳細はこちら
小説1巻、本日(2023年9月8日)発売です!

https://img1.mitemin.net/1j/xf/fjsc5cqrcut14jt01ntn4usw4kwq_7yk_yb_1ed_co95.jpg
― 新着の感想 ―
[一言] 猫ナイナイ
[一言] 猫あるある!! 脚立持ってきて猫を抱き上げたら脚立に降りてするするーっと先に降りていった事あるもんな…。人間の方は降りるのは大変だし、脚立しまわなくちゃだし…ってやつ。あるある。 爪が引っか…
[気になる点] やっぱりタマだし白色かな? 日本で有名な猫の名前だし(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ