アンネの行方
「あ、もしかして冒険者の人が見れるかな?」
私が好奇心丸出しで村の入り口へ行くも、すでに討伐に出た後だった。残念。
「ちぇー。あ、イーゼフ村長!」
おそらく家へ戻ろうとしたのだろうイーゼフ村長を見つけ、声をかけた。すると、眉を上げて「おおっ」と嬉しそうにこちらへ来てくれる。
「ミザリーさん、ラウルさん! 冒険者ギルドへの連絡、ありがとうございますじゃ」
「いえいえ。無事に冒険者が来てくれてよかったです。出発してくれたんですね」
私が確認すると、イーゼフ村長は頷いた。
「リーフゴブリン一匹程度なら、問題はないそうじゃ。これでゆっくり休むことができますじゃ」
イーゼフ村長は嬉しそうだ。顔には少し疲労の色が浮かんでいるので、この数日間はあまり眠れなかったのかもしれない。
これから家ですこしゆっくりするというイーゼフ村長に、私は頷く。が、その前にアンネのことを聞いておこう。
「アンネさん宛ての手紙を預かっているんですけど、家にいらっしゃらなくて……。もしかして、この辺にいますかね?」
冒険者の見送りに来ている人が大勢いるので、その中の一人がアンネでは? と思ったのだが、イーゼフ村長は「はて?」と首を傾げた。
「……ここらにはいないようじゃな。いったいどこに行ったか」
「入れ違いで家に帰ったか、違うところに出かけてただけかもしれないですね」
タイミングが悪かったみたいなので、また後で尋ねてみることにしよう。私がそう考えていたら、「外に出かけていったよ」と村の子供が口にした。
「「「え?」」」
思わず、私、イーゼフ村長、ラウルの声がかさなった。
子供の言葉に慌てたのは、イーゼフ村長だ。リーフゴブリンが出るので、村の外には出ないようにと、村中に通達してあるからだ。もちろん、アンネにも。
「どういうことじゃ? あれだけ外は危険だと伝えていたし、アンネもそれは承知のはずじゃ!」
「んー、タマが外に出ちゃったから探しに行くって言ってたよ」
「タマ?」
まるで猫の名前だ。そう思いながら私がおはぎの額に触れると、子供は「そう、猫!」と返事をしてくれた。
どうやらアンネも猫仲間のようだ。
「猫がいなくなっちゃったんなら、捜しに行くのは仕方ないね……!」
「だからといって、外は危険なんじゃが……」
イーゼフ村長が、「どうしたものか……」と困り果てている。
アンネが村の外にいることはわかったけれど、捜しにいった人がリーフゴブリンと遭遇してしまっては大変だ。簡単に捜索隊を出すわけにもいかないだろう。
……こんなときこそ、キャンピングカーの出番じゃない?
「私がアンネさんを捜してきますよ! これでも、冒険者ですからね!」
私が胸を張って告げると、イーゼフ村長が返事をするより先にラウルから「待て待て」とストップがかかった。
「リーフゴブリンに遭遇したらどうするんだ。ミザリーには危険すぎる」
「でも、アンネさんとタマが心配だよ。それに、逃げるだけなら私は強いよ!」
なんといってもキャンピングカーですからね!
今まではそんなに速度を出していないけど、時速百キロくらいならいけるのではないかと思う。たぶん。
私の主張を聞いたラウルは、う~~んと悩んでいる。
危険だけれど、私のスキルであれば可能だろうと考えているのだろう。キャンピングカーのすごさは、ラウルも身をもって知っているからね。
「…………わかった。絶対に無茶はしないってことだけ約束してくれ。何かあったときは、俺の指示に従うとも」
「もちろん!」
『にゃ!』
私が返事をすると、おはぎも一緒に頷いてくれた。
「ということなので、私たちがアンネさんを探してきますね。逃げる手段はあるので、心配はいりませんよ」
イーゼフ村長に笑顔で告げると、「ありがとうございます」と頭を下げた。
「冒険者に頼り切りで申し訳ないですが、どうぞよろしくお願いいたしますじゃ」
「お任せください!」
ということで、アンネとタマの捜索に出発だ。
新たな猫ちゃんの予感……!




