フルリア村再び
それから私たちは、無理のないペースでキャンピングカーを走らせ、再びフルリア村にやってきた。
すると、村の中がなんだか騒がしい。
『にゃう?』
「どうしたんだろうね。……あ、もう冒険者がいるみたい!」
もう行ってしまったけれど、冒険者装備の人が歩いていく後ろ姿が見えた。
ゆっくりとはいえキャンピングカーで来たのに! と私が驚いていると、ラウルは「馬を飛ばしたんだろ」と理由を教えてくれた。
「街や村はそうないけど、旅宿みたいなのはいくつかあるんだ。そこで馬を借りることができるからさ」
「なるほど」
旅宿で馬を替えつつ、急いできてくれたようだ。
……冒険者、めっちゃいい人たちだ!
私たちが村に入ろうとしたところで、薪のお兄さんがいることに気づく。今日も村の入り口に近いところで、元気に薪割りをしていた。
「あ! 二人とも、もう戻ってきたのか!? 冒険者もきて、あまりの速さにびっくりしたぞ」
「移動は得意なんです!」
ピースサインで笑顔を向けると、薪のお兄さんも笑顔を返してくれた。
「今、二組の冒険者がきてくれてるんだ。Bランクのソロと、Cランクのパーティだ」
「わっ、それなら心強いですね!」
Bランクであれば、リーフゴブリンに対抗できるはずだ。さらにCランクのパーティがいるのなら、みんなでフルボッコにできるだろう。
「いやー、助かったよ。ギルドに伝えてくれてありがとう」
「いえいえ、これくらい。……っと、そうでした。私も冒険者登録をしたんですけど、フルリア村の方宛てに手紙を預かってきたんです」
「手紙を? 誰宛だ?」
薪のお兄ちゃんが「案内するぞ」と言ってくれているので、お言葉に甘えることにする。
「アンネっていう方ですね」
「ああ、アンネばーさんか」
どうやら相手はお年寄りのようだ。
「ってことは、差出人はテオだな? あいつも元々フルリアに住んでたんだが、街へ出てな。いっつも、不便だから街へ引っ越してこいって手紙を送ってくるんだ」
「一緒に暮らしたいお年頃なんですかねぇ」
私が苦笑すると、「あいつはマザコンだからな!」と薪のお兄ちゃんが笑った。
「アンネばーちゃんの家はこっちだ」
「はい」
どうやら村の奥の方にあるみたいだ。
しばらく歩くと、緑の屋根の可愛らしい家が見えた。どうやら、あれがアンネの家みたいだね。
「案内ありがとうございます」
「いいってことよ、これくらい。んじゃ、俺は戻るぜ」
「はい」
手を振って薪のお兄さんを見送り、私はアンネの家のドアをノックする。
「初めての依頼だから、ドキドキしちゃう」
「つっても手紙の配達だけだから、大変なことはもう終わってるよ」
「運ぶ道中が一番大変だもんね」
それを考えると、今回の依頼は本当に私に打ってつけで――って、家の中から特に反応が返ってこない。
「「……?」」
私はラウルとおはぎと顔を見合わせ、首を傾げる。
「出かけてるのかなぁ?」
「そうかもしれないな。小さな村だし、すぐに帰ってくるんじゃないか?」
ラウルの言葉にそれもそうだと頷き、私たちは少し時間を潰すことにした。イーゼフ村長へも挨拶に行きたいからね。
そのあとは雑貨屋に行って、買い物もできたらいいなと思う。
ということでイーゼフ村長の家に行ってみたのだが、これまた留守。
「あれぇ……? 留守ばっかりだね」
「……もしかして、村の入り口じゃないか? ほら、冒険者が討伐に出るから見送りをしてる……とか」
「それはありかも!」
急いで村の入り口に行くと、ラウルの予想通り、イーゼフ村長を始め、村の人たちが大集合していた。




