とんでも新機能搭載
薬草採取の報告は急ぎではないので、軽く休憩してから私たちは再び出発した。
おはぎは草原で楽しそうに遊んでいたので、今は疲れ果てて私とラウルの間で丸まって寝ている。可愛い。
ブロロロロと走っていると、インパネから《ピロン♪》と音が鳴った。いつも通り、レベルアップの文字が表示されている。
《レベルアップしました! 現在レベル9》
「えっ、なんだ? 音がしたぞ!? 故障? か?」
突然の音に驚いたらしいラウルがキョロキョロしているので、私は「違うよー」と笑う。
「スキルがレベルアップしたみたい」
「――! そうだったのか。おめでとう」
「ありがとう」
いったんキャンピングカーを停めて、さてどんな機能が追加されたのかな? とインパネを操作して詳細を見る。
私の行動を見たラウルが首を傾げているので、ここでスキルがどんな風にレベルアップしたのかわかると教えたら、便利だとめちゃくちゃ感動していた。
「できるようになったことは――え!?」
レベル9 鑑定機能搭載
その機能にどういうこと!? と思ったけれど、何よりも――
「それならさっきほしかったんですけど!?」
と、思わず叫んでしまったのは仕方がないだろう。
「鑑定機能って、やばすぎないか? この巨体がものすごい速さで走るだけでもやばいのに……」
ラウルは信じられないといった目で私のことを見ているが、便利になったので気にしないことにした。キャンプ生活をするのだから、鑑定ができることは正直ありがたいのだ。
「とりあえず、どこで鑑定すればいいのか……あ、インパネで詳細が見れるみたい」
私はインパネを操作しつつ詳細を確認していく。
すると虫メガネマークの表示ボタンがあったので押してみると、インパネに常時表示状態になった。
普通にタップすると全鑑定で、長押しすると指定して鑑定ができるらしい。
……これを押して鑑定すればいいのか。
とりあえず押してみたところ、ヘッドライトから淡い光が出て――前方部分にあるものすべてに鑑定結果が表示された。
〈薬草〉初級ポーションの材料になる薬草。
〈バルキア草〉染料になる草。よく薬草と間違われるため、薬草もどきと呼ばれることも多い。
〈スライム〉最弱。猫より弱い。
〈石〉ただの石。
〈木〉普通の木。
〈ミツスキー〉蜂蜜が好きなマスコットモンスター
〈岩〉大きい石。
〈シロツメクサ〉小さくて可愛い花。花冠を作るのに適している。
「――っ! なにこれ!」
私の視界いっぱいに、鑑定結果が浮かんでいる。ライトがあたったものが鑑定され、ゲームのようにその結果が表示されているみたいだ。
というか、さり気なく魔物まで混ざってるし!
「どうしたんだ?」
「え? あ、もしかしてラウルには見えてない……?」
「いや、光は見えるけど……」
ライトの光は見えるけれど、鑑定結果はラウルには見えないようだ。スキル所有者の私の目だけに、鑑定結果が写る。
……誰かれ構わず見えちゃわなくてよかった。
そのことにほっとしつつ、私は鑑定ボタンを切った。
「えーっと……光が当たってる部分にある物が全部、鑑定されたの」
「………………は?」
ラウルは意味が解らないとでも言いたげな様子で、首を傾げ天井を見上げ、たっぷり間を置いてから私を見た。
「私だってびっくりしてるよ……。とりあえず、キャンピングカーを見てみてもいい?」
「ああ、それはもちろん。レベルが上がったんだし、確認は大事だ」
私は心を落ち着かせる意味合いも含めて、念のためキャンピングカーを確認してみることにした。
運転席から一度外に出てみると、以前ぶつけてしまった傷が綺麗になくなっていた。というか汚れもなくなっていて、まるで新車だ。
「……あっ! レベルアップしたから全回復した! みたいな感じかな?」
これは嬉しい誤算だ。
やっとレベルアップです!




