まずはお布団ゲットだぜ!
冒険者ギルドでの手配もろもろが終わった私は、さっそく街へ繰り出した。
……お買い物、したくてたまらなかったんだよねぇ!
「キャンピングカーもちょっとずつ広くなってきたし、収納もあるし、まずは椅子――じゃなくて、ラウルの布団を買いに行こうか」
「……広くなってきた?」
私はラウルのツッコミは聞かなかったことにして、近くの布屋へ入る。この世界では、布屋で既製品の布団やオーダーメイドの布団を作ることができる。
店内には薄いブランケットから、羽毛をこれでもか! と詰め込んだふわっふわのお布団が売っている。
「わ~、あったかそう~~!」
『にゃ~!』
自分の布団も欲しくなってきた。今は簡単なブランケットをかけているだけなので、やはり睡眠の質を向上させるために寝具は必要だろう。
私とおはぎがウキウキで見ていると、隣りにいたラウルが「高すぎる……」と顔を青くしている。
……確かにかなりの高級品なんだよね。
今の手持ちのお金では、全然足りない。
「いらっしゃいませ」
「こんにちは」
『にゃ!』
「どうも」
さてどうしようかと考えていたら、奥から店員が出てきた。私たちが見ていたので、商品の説明に来てくれたのだろう。
「寝具をお探しですか?」
「はい。私と彼のもの、それぞれ一式」
私がほしいものを告げると、店員は頷いてお勧め商品を教えてくれる。
すると、ラウルが私の腕を引っ張って、小声で話しかけてきた。
「ミザリー、俺は今まで通りで大丈夫だ。お前の分だけ買え」
「駄目でーす」
ラウルの主張に、私は首を振って却下する。
確かにお金はないけれど、使ってしまいたいものはあるのだ。私は鞄から、追放されたときに身に着けていた装飾品を取り出す。
これを売って、寝具を揃えようと思っていたのだ。
装飾品を見たラウルは、驚いたように目を開いた。
「どうしたんだ、これ」
「……実は因縁のある装飾品でね。ずっと手元には置いておきたくないから、売ろうと思って! 詳細はあんまり聞かないでくれると嬉しいな。思い出したいような、いい話ではないから……」
「そうか……」
私が困ったような表情をしてしまったから、ラウルはそれ以上追及してくることはなかった。
「ということで、この装飾品を売って寝具を購入したいと思ってるんです」
「これはすごい……。私から見ても、一級品だってすぐわかりますよ」
「ありがとうございます」
一応、王太子殿下の婚約者がつけていたものだからね。
私はほしい商品を選んで、すぐ近くにある宝石店で装飾品を全部買い取ってもらい、代金を支払って無事に寝具をゲットすることができた。
「よし、次こそ椅子! と言いたいところだけど、布団をキャンピングカーにしまわないと駄目だね」
「そうだな」
さすがに二人分の寝具を持ち歩きながら買い物するのは無理だ。さっさとキャンピングカーにしまってしまおう。
……でも、どこで召喚しよう?
さすがに布団を抱えて門を通って街の外に出たら不審者だし……。
「どこか人がいない道とかないかな?」
「あー、さすがにキャンピングカーを見られるわけにはいかないもんな。間違いなく大騒ぎになるだろうし」
ラウルが私の判断は賢明だと褒めてくれる。
が、残念ながら人がいない道なんてあるはずもなく……二人で頭を悩ませる。
う~~ん……。
「あっ、そうだ! ギルドの鍛錬場が広かった気がするから、そこはどうだ?」
「おお、いいかも!」
ということで、ギルドに逆戻りです。
早く椅子と鉄のスキレットを買いにいきたいのにギルドに行くことになりました。
思うように進みません。




