街が見えてきた!
美味しくご飯を食べた後はシャワーを浴びて、すぐ眠りについた。
私とおはぎが簡易ベッドを使い、ラウルは広くなったトランクスペースを使うことになった。さすがに床だし申し訳ないと思ったのだが、ほかに寝る場所がなかったのでそうなってしまった。
……街に着いたら、ふかふかの布団を購入しよう。
マナを使いすぎだったこともあり、私は横になると一瞬で寝てしまった。
「ん~~、よく寝た~~」
ぐぐーっと背伸びをして、首を回して、ベッドから体を起こす。横を見るとおはぎも起きたようで、くあぁと可愛い欠伸をしている。
窓から外を見ると、天気は快晴。
「これは絶好のドライブ日和だね! 今日こそココシュカに到着するぞ!」
私がぐっと拳を握って気合を入れると、「起きたのか……?」とトランクスペースからラウルの声が聞こえてきた。
どうやら私が寝ているから、気遣ってこっちにこなかったみたいだ。紳士。
「ごめん、ちょっと待ってね」
私は急いで脱衣所に行って着替えて支度をすませてラウルに声をかける。すると、寝起きのラウルが目を擦りながら歩いてきた。
まだ眠たそうだね。
「ゆっくり使って。私は朝ご飯の準備してるから」
「ああ。サンキュ」
ラウルを脱衣所に見送って、調理に取りかかる。
おはぎ用のお肉を茹でて、自分たちの分はサラダを作って、チーズを乗せたパンを焼き、その上に目玉焼きを乗せるだけというお手軽料理だ。
とはいっても――
「美味しそう」
「美味そうな匂いだな」
私とラウルの声が重なった。
ラウルは顔を洗ってさっぱりしたようで、爽やかな笑顔だ。おはようと挨拶を交わして、一緒に朝食を摂る。
「今日は街に着くと思うから、もうひと頑張りするね」
「ああ。でも、昨日みたいな無理はしないでくれよ……? 心臓に悪すぎる」
「気をつけます~」
私もあの気持ち悪さはもう体験したくないので、これからはこまめに休憩を取ることにします。外に出て深呼吸をしたり、景色を眺めてみたりするのもよさそうだ。
食べ終わった食器を片付けて、運転席に移動する。ラウルも今日は靴を履いて助手席に座っていて、おはぎも私とラウルの真ん中だ。
「んでは、出発!」
ブロロロロロと爽快に走り出し、私は窓の外を眺めつつ走る。
ほとんど草原で、街道は大きく逸れたところにある。人がいたら驚かせてしまうから、極力街道は走らないようにしているのだ。
風が気持ちいいので窓を開けていると、なんだか歌いたくなってくるね。
そんなことを考えながら、休憩をはさみつつ走り続けて数時間――街が見えてきた。
「あれがココシュカの街?」
草原の真ん中にある街は、高い外壁にぐるりと囲われていて、防御力が高そうだ。
「ああ。あそこなら冒険者ギルドがあるし、店も多いから大抵のものは揃うよ」
「私、小さい木の椅子がほしいんだよね」
「椅子?」
「そう! 焚火の前に置いて座る用」
毎回都合よく座り心地のいい切り株や岩があるとは限らないからね。
焚火の前に椅子を置いてゲームでもできたら最高だろうけど、この世界にゲームはないので読書あたりをするのがいいだろう。
「私の椅子ちゃん、待っててね~!」
私は椅子を求めてキャンピングカーを飛ばした。
やっと次回は冒険者ギルドに……行くはず!




