突然の停車
カーナビに従い、山を越え、草原を突っ切り、私は可能な限りキャンピングカーを飛ばした。
……早くココシュカの街の冒険者ギルドに行かなきゃ!
ちょこちょこ短い休憩を取りつつ、走り続けて七時間近くが経ったとき――プスンと、キャンピングカーが停まった。
「え?」
「どうしたんだ?」
『にゃう?』
ラウルが不思議そうに、寝ていたおはぎはあくびをして、私を見た。
いや、私が今の状況をわかっていないんですが?
突然キャンピングカーが草原のど真ん中で止まってしまった。エンスト? でも、これは私のマナで動いているし――っ!
「うっ、気持ち悪い……」
「大丈夫か!?」
いきなり襲ってきた吐き気に、私は口元を押さえる。このままぐったり倒れてしまいたいけれど、もしキャンピングカーが動いてしまったら大変なので……急いでサイドブレーキをかけたりして停車させる。
ラウルが心配そうに背中をさすってくれて、「居住スペースに行って休もう。歩けるか?」と気遣ってくれる。
私は無言で頷いて、ラウルに支えてもらいつつ、這うように居住スペースへ移動した。
……駄目だ、寝転びたい!
吐き気だけでなく、頭も痛くて体がだるい。
唐突に風邪でも引いてしまったのだろうか……。
「うぅ、ベッド……」
「ベッド、って、どこに……? あ、後ろの荷物が置いてあるスペースか?」
「違う……テーブルと椅子を倒したりするとベッドになるの……」
しかし詳細に説明する余裕はない。
私は座り込んで、目を閉じた。起きているよりかは、幾分か楽だ。
……もう、このまま床に寝転んじゃいたい……。
そう思うと、瞼が重くなってくる。
うつらうつらと思考が遠くへ行って、私はラウルの「ミザリー! しっかりしろ!!」という声を聞きながら意識を手放した。
***
ジュウウウゥゥと何かが焼ける音と、香ばしい匂いで、私の意識とお腹が覚醒を告げる。
……起きなきゃ。
私は重い体を腕で支えつつ、寝転んでいた状態から起き上がる
「あれ、ベッドに寝てる」
起き上がった場所は、キャンピングカーの簡易ベッドだった。
どうやらラウルは私の説明とはいえない説明で、どうにかベッドを組み立ててくれたようだ。ありがたい……!
……体も、さっきと比べたら全然マシだ。
悪化していなかったことにほっと胸を撫で下ろしつつ、私はハッとして音と匂いがする方を見た。
キャンピングカーのドアが開いていて、外から聞こえているみたいだ。
私が「おはぎ、ラウル……?」と名前を呼びながら外を覗くと、ラウルが焚火でお肉を焼いているところだった。
おはぎはラウルの横で、すでにお肉を食べている。
……私が寝ている間に仲良くなってる。
「ミザリー! 起きたのか。体調はどうだ? 肉を焼いたんだけど、食べられそうか?」
「……うん。お腹は空いてるみたい」
私は苦笑しつつ、今にも鳴りだしそうなお腹を押さえる。
「でも、だいぶよくなったよ。なんで急に気持ち悪くなったんだろう」
見事に目の前がグルグルしていたなと思う。
すると、ラウルが「わからないのか?」と驚いた顔で私を見た。
「マナ切れだよ。あれだけスキルを連続使用してたんだ。マナが尽きないわけがない」
「マナ? あ、そうか……つまりガス欠!!」
私のマナが尽きたからキャンピングカーが停まってしまったし、マナが尽きかけた私自身にもその影響が出ていたようだ。
次はラウルご飯です。




